ハニー・トラップ 大統領になり損ねた男 Wellcome to New York

●「ハニー・トラップ 大統領になり損ねた男 Wellcom to New York」
2014 アメリカ Belladonna Productions.110min.
監督・脚本:アベル・フェラーラ
出演:ジェラール・ドパルデュー、ジャクリーン・ビセット、マリー・ムーテ、ポール・カルデロン他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
最初に断っておくと、これはハニー・トラップでもなんでもありません。(ただし、強姦で
告発するホテルのメイドが主人公を貶めるため仕組まれてたのなら別。しかし、そんな
ことではないと思う) 本作も日本では劇場未公開。WOWOWのジャパン・プレミアで鑑賞。
wikiによれば、本国フランスでも、アメリカでも劇場では公開されていないという。
まあ、現存の人の生臭い作品だからねえ。

2011年にフランス次期大統領選の有力候補と目されていたIMF理事、ドミニク・ストロス=
カーンがアメリカで実際に起こしたレイプ未遂事件をモデルにしている。映画は冒頭で
完全なフィクションである、と断るのだが、実際は現実をほぼなぞっていると思われる。
ただ、警察捜査の内部とか、カーン自身のプライベートな部分については脚色されては
いるだろう。

基本、ドキュメンタリーなので、こういう人が居たのね。まあお金持ちは困った人が多いものだ、
くらいの感想しか無い。ただ、ドパルデューの存在感は素晴らしいし、老けたりとはいえ、
ジャクリーン・ビセットも英語とフランス語入り乱れる会話の中で混乱する妻であり参謀である
女性を迫力で演じていた。ドパルデューの演技から、モデルとなった男性のえげつなさが
感じ取られたらそれは彼の演技の勝利ということだろう。

旦那は自分は大統領になる気はあまりなく、妻(大金持ちの家の出身)の旦那を大統領に
する、という野心の犠牲になった、と思っている節がある。妻もそれはわかっているはずだ。
彼女は旦那を大統領にする、という目的が生きがいになっていたのだ。
そんな旦那は「セックス依存症」であることを公言して憚らない。まあバカな男であることは
確かだ。アメリカに赴いた折、ホテルで売春婦を読んで乱痴気をしているうちはまだ良かったが、
部屋に入ってきた黒人のメイドを捕まえてレイプ未遂を犯す。これがNY市警に届けられ
デヴロー(ドパルデュー)は、飛行機に乗るところを逮捕される。

ここから港湾局につかまり市警に引き渡され、裁判になり、保釈が認められず、裁判となり
ついに巨額の保釈金と、足首に電波発信機をつけさせられて保釈され、結局無罪となる。
NYに裁判のために月6万ドル(720万円!!)の家を借り、なんとか夫を保釈させ、無罪を
勝ち取った妻との会話。無罪になってからの男の態度の変わり様、あきれる妻。このあたりが
丁寧に詳しく書かれていて、リアリティを感じるのみならず、デヴローという男に対する
観客の捉え方を醸成していく。つまり、彼に対するツッコミの隙間を作っているということだ。
娘のボーイフレンドとの会話でも、平気で「娘とのセックスはどうだ?いいか?」とか聞いちゃう。
娘は一応怒るが席を蹴って去るまでは行かないわけで、この親にしてここ子って感じもある。
デヴローはいわゆる「変態」なんだな。
しかし、実際のカーンは、フランスで蔵相までやった人物で政治的にも成果を上げてきた人物。
反面、こうした性癖ももっていたのだろうか。裁判は結局検察が起訴を取り下げ、本人は
無罪放免になるが、民事裁判は成立している。(和解)

一方で、ある意味俗物な妻の旦那への接し方で見えてくる人生感も面白かった。この妻にして
この旦那、この旦那にしてこの妻、って感じかな。
何かを学ぶ、感動するという映画ではないが、事実が持つ面白さはある作品だ。

しかし、こうした感想を持つ映画が出来る一方で、カーン事件をネットで調べてみると、
カーン氏を訴えたメイドは、売春婦としての仕事も持っていて、合意の上のことであったとする説も
有力である。妻は有名な元テレビキャスターだそうだ。(大金持ちの出身であることは確か)
であるとすると、本作はカーン氏が色気違いであることの側面が大きく取り上げられすぎ、という
ことになる。そうするとハニートラップという面もありえないこともなくなる。その辺り、映画の内容と
タイトルがちぐはぐということになる。
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この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2015-02-10 22:55 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)