ロンドン・リバー London River

●「ロンドン・リバー London River」
2009 イギリス・フランス・アルジェリア 88min.
監督:ラシッド・ブシャール(共同脚本も)
出演:ブレンダ・ブレシン、ソティギ・クヤテ、フランシス・マギー、サミ・ブアジラ、ロシュディ・ゼム他。
e0040938_12343017.jpg

<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
日本劇場未公開。WOWOWのベルリン国際映画祭特集で観た。そういうチャンスでも
なければ出会えない作品だ。
「イスラム国」問題で世界が頭を悩ませてる現況、時宜を得た鑑賞だと思った。
映画自体は2009年で、今から6年前に製作され、舞台になったのは2005年7月に
ロンドンで発生した地下鉄とバスを狙った同時多発テロである。

それに巻き込まれてしまった二人の男女とその親の心の動きを短い時間に纏めた
ものだが、淡々と粛々と進む中にも、今だからこそ感じられる、鑑賞者の思いもある。
「イスラム国」に軍隊として行く息子や娘たちを持つ親、また中東の危険地帯に
ボランティアとして入る子供を持つ親、それぞれが同じような気持ちを持つんだろうな、
などと考えて見ていた。
事件に揺れる母と父、特にイスラム教のアフリカ人オスマンを演じたソティギ・クヤテは
本作でベルリン国際映画祭主演男優賞を獲得するのだが、その存在感、目つき、は
演技というほどではないのだが、事件に翻弄される異邦人の父親の姿が良かった。
それとは対照的に感情を表に表しつつ、なんでイスラム?と疑問を持ちつつ娘が
アフリカの青年と仲よかったことを受け入れていく姿も良かった。

イギリス海峡の殆どフランス・シエルブール(ノルマンディー地方)に近い、ガーンジー島で
農業を営むエリザベス。夫はフォークランド紛争で戦死しており、一人娘はロンドンで
生活している。2005年7月7日、ロンドンで発生したバスと地下鉄を狙った同時多発テロの
ニュースを観たエリザベスは気になって娘に電話する。留守電で繋がらない。
何回かかけるがダメだ。畑を弟に任せて、ロンドンに出てくるが、下宿はもぬけの殻。
男物の髭剃りがあったりで、自分の知らない娘の暮らしが見えてくる。アフリカで使う弦楽器の
ようなものもある。彼女は、事件の犠牲者が収容されている病院を探したり、街中に
尋ね人の張り紙をしたりして、必死に娘の行方を追った。

一方、フランスで森を管理する仕事をしているアフリカ人オスマンも、息子を探していた。
彼は6歳の時に息子と分かれていて、依頼15年間フランスで暮らしていた。アフリカには
妻のみが暮らすが、息子を連れて帰ってくれ、と言われ、自分ももう息子とアフリカに
帰ろうと、ロンドンに探しにやってきたのだ。ムスリムの彼はモスクで相談したり、やはり
事件の犠牲になってはいないかと病院を探したりしてた。彼はモスクで貰った集合写真の
隣に、尋ね人の娘が写っているのを見つけ、彼女を便りにエリザベスと接触する。

最初、得体の知れない黒人の登場に気味悪がっていたが、娘と彼の息子は一緒に暮らして
いて、一緒に探すことになる。ムスリムのアラビア語のクラスに二人で通っていたことが
分かり、何でクリスチャンの彼女がイスラム教に興味を覚えたのか、不思議というかむしろ
恐怖を覚える。オスマンも、息子が爆発事件の犯人かもしれない、と疑っていた。

二人は事件の直前に姿を消した。事件の犠牲者か、それとも共謀者なのか・・・。
オスマンのほうがホテルの金を払えないからフランスに帰る、というとエリザベスは
娘と一緒に暮らしていたのだから、娘のアパートに来れば、と彼を誘う。二人の間に
流れていた不信、疑惑が次第に溶け、同じ悩みを持つただの親として心を通わすことが
出来るようになっていたのだった。

そのうち、彼女の大家が、二人が事件の朝、二人で旅に出た、と友人が証言していると
教えてくれた。急いで代理店に行くと、二人は列車でパリに行った、と言う。ホッとする
母と父。彼らは二人でパリに旅行に行っているのだ。事件のことを知らないのだ、
良かった! 二人は心底安心するのであった。

さて、もう二人共それぞれの暮らしに戻ろうか、と言ったやさき、警察から連絡があり
DNA鑑定の結果、二人は事件の朝、バスに乗っていて犠牲になったことが判明した、
と知らせに来た。愕然として泣き崩れる母。呆然とする父。加害者ではなかったが、
犠牲者になってしまうとは・・・。

別れの朝、オスマンは言う「悲しみのまま別れては行けない」と。そしてアフリカの歌を
歌う。二人はそれぞれの子供の死を胸に故郷に帰っていったのだ・・・。
e0040938_12381370.jpg

ところで母エリザベスの出身地であるガーンジー島は殆どフランスに近く、中世では
ノルマンディー公の領地であり、ノルマンディー公がイギリスを征服し、ウィリアム征服王と
なったときから英国王室属領となり、今でもGBには属さず独自の議会を持って政治を
行っているという。元首はエリザベス女王だが、行政は英国に委託している。だから
代官がいるんだね。またここはタックス・ヘイブンとしても知られる。消費税がかからない
島なんだね。そんな島があることをこの映画で初めて知った。風光明媚な所らしい。

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2015-02-17 21:30 | 洋画=ら~わ行 | Comments(0)