そこのみにて光輝く

●「そののみにて光輝く」
2014 日本 「そこのみにて光輝く」製作委員会 制作:ウィルコ
監督:呉美保 原作:佐藤泰志「そこのみにて光輝く」(河出書房新社刊)
出演:綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉、高橋和也、火野正平、伊佐山ひろ子、田村泰ニ郎他
e0040938_15502767.jpg

<★★★★★★★★☆☆>
<感想>
41歳で自ら命を断った孤高の作家・佐藤泰志の唯一の長編小説を映画化。
昨年の「モントリオール国際映画祭」最優秀監督賞、ブルーリボン監督賞、などを
受賞し、キネマ旬報の2014年年間最優秀映画に選定されている。
WOWOWは3月が邦画強化月間とかで、いい邦画が続々放映される。今回も
キネ旬の1位ってどんなものか?という興味で観てみた。ちなみに本作は日本アカデミー賞では
作品部門にも、監督部門にもノミネートさえされていないんだね。ということは
エンタテインメント性に欠けると見られたのかな。まあ、そう思われても不思議はない
感じではあるし、いかにもキネ旬好みだなあ、という感じもする。
北の街、函館の夏を背景に、アンニュイな中にもどっぷりとマイナーな日本人の
メンタリティーがある意味、非常に上手く描けている。

藤田敏八の傑作「八月の濡れた砂」にちょいとばかり通底するところを個人的には
感じた。閉塞感の中に閉じ込められた若者という意味に置いてかな。

で、見終わって、好みの映画ではないけど、確かに「力」を持った問題作であることは
認めざるを得ないなと感じた。原作があるので、その映像化ではあろうけれど、原作はもっと
ドライであり映画はウェットであると評した人がいた。確かにウェットではある。

大手の作品でもないし、配給もテアトル東京ということで、シネコンなんかでは上映
されなかった所も多いのではないか。R-15でもあるし。

それにしてもタバコを吸うシーンと、飯を食うシーンが多いなあ。原作はしらないけど
テレビドラマでもかつて飯ばかり食っていると冷やかされたものだが、セリフ回しの
背景が喫煙と食事以外に脳がないというのもなさけない。本作がそうであるかどうかは
分からないけど、観ていてとても気になった。

社会の底辺で這い上がる道筋さえ閉ざされ、閉塞感に息もできないで悶々とする
地方都市の若者のありさまが活写される。綾野剛、池脇千鶴がいい。加えて
池脇の弟役の菅田将暉が、とってもいいよ。呉監督の演出もいいのだろうけど、
リアリティがにじみ出てて。 特に池脇を囲い者とする造園会社社長、高橋和也を
たこ焼きのピックで刺すところあたりの「逝っちゃった目つき」はいいねえ。
池脇は文字通りの体当たり。貧困なわりにぽっちゃりなんだが、その肉置きといい
ふてくされ加減といい、いい性格女優になりました。三井のリハウスガールだったのに。
e0040938_15512787.jpg

基本、明るい話が一つもない。その中でも、ちょっとした海水浴、花火、お祭り、食事など
普通に考えたら、人生の明るいサイドの話として取り立て特別に取り扱うこともないシーンが
小さい幸せ、「そこだけの幸せ」として提示されるので、暗さが余計暗くなる効果を生む。

映像もよかった。編集もいいなと感じた。ラスト、海辺の砂浜で朝日に照らされる綾野剛と池脇、
暗転し、金釘文字で「そこのみにて光輝く」と表示され物語は終わるのだが、
「底のみにて」と捉えてもいいんじゃないか、と思える瞬間だった。
e0040938_1551461.jpg

<ストーリー>
「2010年に映画化された「海炭市叙景」のヒットによってにわかに脚光を浴びている不遇の
作家、佐藤泰志の同名小説を「夏の終り」「シャニダールの花」の綾野剛主演で映画化。
閉塞感漂う北の町で無為で無気力な日々を送っていた主人公の運命が、社会の底辺で
行き場を失った一組の姉弟との邂逅によって少しずつ動き出していく姿を切なくも優しい
筆致で描き出す。
共演は「ジョゼと虎と魚たち」の池脇千鶴と「共喰い」の菅田将暉。監督は「酒井家のしあわせ」
「オカンの嫁入り」の呉美保。

 短い北の夏。ある出来事をきっかけに仕事を辞めてしまい、無為な毎日を過ごす男、佐藤達夫。
ある日、パチンコ屋でひとりの青年、大城拓児と知り合う。彼は前科者でチンピラ風情ながら
無垢で憎めない奴だった。そんな拓児は海辺に建つ粗末なバラックに家族と暮らしていた。
そこで拓児の姉、千夏と運命的な出会いを果たす達夫。しかし千夏は家族を守るために自らの
人生を諦め、絶望の中に生きていた。」(allcinema)

千夏を囲い者にする造園業社長(高橋和也)は、仮釈放中の拓児の後見人でもあった。
そこが弱みでも会ったわけだ。冒頭から何かあって、ひきこもりになっている達夫だが、
それが採石場の発破現場で、自分のせいではないのだが、部下が爆発事故から落盤を
起こし命を落とした事故があった。それを攻めていたのだった。
千夏と出会ってから次第にかわっていく。千夏も変わっていく。千夏の存在に明るさを感じた
達夫は家庭を持ちたいと思うようになり、腐れ縁の社長と別れろと迫るが、千夏は
あんたに何が分かるの?と言い放つ。彼女はイカの工場に通いつつ、身を鬻いで金を得て
いた。家族を養うためだ。しかし、その地獄からも抜けたいと思っていた。彼女も達夫に
明るさを感じていた。拓児も達夫を兄のように慕い、造園業の手伝いから発破現場に職場を
変えたいと考えていた。千夏に別れるように迫る達夫をなぐる社長。祭りの場で、そんな
社長に「血は争えないな」ふうなことを言われ、拓児はたこ焼きのピックで社長を刺し逃げる。
一方千夏も脳溢血後寝たきりになったものの性欲以上亢進となった父を抱えていたが、
達夫が拓児を探してバラックに行くと、まさに千夏が父親のクビに手を欠けていたところだった。
あやうく千夏をどかせる達夫、そして拓児を自首させ、夜明けの浜辺で千夏と落ち合うのだった。

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2015-03-04 23:10 | 邦画・新作 | Comments(0)