チョコレート  Monster's Ball

●「チョコレート Monster's Ball」
2001 アメリカ Lee Daniels Entertainment,Lions Gate Films.113min.
監督:マーク・フォスター
出演:ビリー・ボブ・ソーントン、ハリー・ベリー、ピーター・ボイル、ヒース・レジャー、ショーン・コムズ他
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<2001年度アカデミー賞主演女優賞受賞作品>

<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
このところ、見応えのある作品に出会えて、楽しい一方、色々と考えることが多く、
正直、疲れる。本作は今から14年前の作品になるのだが、ハリー・ベリーが何かで
オスカーを獲ったとは知っていたが、本作が該当作品であった。WOWOWでの鑑賞で
あったが、本来もっと過激なセックスシーンがあったと思え、それを「映倫再審査合格版」と
して放送されたもの。故に、当該シーンはイメージカットが多用され普通に見るような
ベッドシーンとなっていた。だが、本作の性格を考えると、主人公二人の激しい性交渉は
それなりに意味があるわけで、再編集してしまったことで、監督が訴えたかったことが
多少変形した恨みはあることは、鑑賞後に理解できる。(オリジナルを観ると4分位カット
されているようだ)

全般に暗い映画である。鬱屈された登場人物たちのカタルシスがあったのかなかったのか
ラストでもよく分からない部分もある。でも、人は誰かに大事にされたいと願い、それに
応える大事にしたい、という気持ちの交流から、愛情に溢れた幸せな生活が獲得できるのだ、
ということを貧富の差を超えて、訴える力を持つ作品ではある。
ラストで、ハリー・ベリーは、自分を大事にしてくれる男が、夫の死刑執行に立ち会った刑務官
であった(彼の息子も)ことを知り、涙を流すが、その涙は何だったろうか、刑死した夫は画が得意で
ハンクとソニーの似顔絵も描いていて、それをハンクの家で発見するのだが、夫とハンクらの
心の交流を知り、安心して涙したのだろうか。私は一瞬、夫を殺して私を囲い者にした、と、復讐に
出るのではないか、とハラハラした。ハンクと外の階段で並んでアイスクリームを食べ、少し笑顔に
なるのだが、その笑顔は心からの笑顔では無いように感じたのだが、どうだろう。彼女なりの
折り合いを付けた感じがしたのだが。

親子3代で刑務所の看守をしてきた男たち、主人公ハンク(ソーントン)と息子ソニー(ヒース・
レジャー)、それと病気がちで酸素ボンベが手放せない老父バック。同じ職業に着いてきて
それなりに誇りを抱いてきたのだが、お互いを尊敬し、愛しているか、というと、南部男の習性
なのか、お互いに屈託を持ち暮らしている。3代の親子関係に愛情とか親密さは感じられない
寂しい状況になっていた。

そんな折に、ハンクとソニーが勤める刑務所で、ローレンス・マスグローブという男の私刑
執行が行われた。母親に似て、繊細で心優しい息子ソニーは、電気椅子に連行する際に
吐いてしまう。死刑囚の最後を汚した、と父親は激怒、所内で暴力を振るい、止めに入った
黒人看守を差別する汚い言葉を吐いた。これは老父譲りの南部男気質なのだろう。

ソニーは家に帰ってからも父や老父から責められ、ついに切れてしまい、父を殴り銃で
脅し、「オヤジはボクを嫌いだろう」と聞く。ハンクは「嫌いだ。ずっと嫌いだった」と言うと、
ソニーは、「ボクはオヤジを愛していたよ」と言うと持っていた銃で胸を撃ち抜いて自殺して
しまう。

この事件はハンクに衝撃を与えた。ソニーに言われたことで、自分が父として人として間違って
いたと気が付き、刑務所を辞める。老父には「愚かな判断だ」と文句を付けられる。

一方死刑囚の妻、レティシアは10歳くらいの男の子と、厳しい生活にさらされていた。
アパートは30日以内に出て行けと言われているし、勤めていたダイナーもクビになり、
ようやく新しいレストランでウエイトレスとして働き始めた。そこにいつも来ていたのが
ハンクであり、いつもチョコレートアイスクリームとコーヒーを注文していく。

ある雨の夜、レストランに来ていた息子と歩いて帰ろうとしたレティシア。息子がクルマに
ひき逃げされてしまう。そこにたまたま帰り道だったハンクがクルマで通りかかる。
必死に助けを求めるレティシアであったが、黒人らしいこともあり一瞬通り過ぎるが
やがて、バックして二人を救助し、病院に搬送する。レティシアの息子は傷が酷く、
病院で死亡してしまう。 彼女がよく行くレストランのウエイトレスとも気がつかない
ハンクだが、自分も息子を失った直後でもあり、警察の依頼もあり、彼女を家まで
送って行くことになる。

その後、ハンクとレティシアは急速にその中を深め、体を求め合う間になっていく。
ハンクは刑務所を止め、ガソリンスタンドを購入し、自営をすることにした。
その間、レティシアのクルマが壊れたことから、ハンクは息子ソニーの乗っていたトラックを
彼女に与える。最初は警戒していたレティシアだが、ハンクの真面目な接し方に
心を開いて行くのだった。お互いに心に空いた穴を埋める必要があったのだ。

ある日、レティシアがハンクにお礼をしたくて、上等なテンガロンハットを買い、それを
持って自宅に行ったが、たまたま用事で不在で、老父が対応した。老父はレティシアに
向かって、「ハンクのガールフレンドか。黒人の女とヤってこそ男だ」と口走った。
これを聞いたレティシアは、ハンクもそういう気持ちだったのか、と誤解し、直後に
やってきたハンクを無視し、帰ってしまう。しばらくレティシアはハンクを寄せ付けない
態度であった。しかし、レティシアがついにアパートを追い出され、荷物を前に家の前で
途方にくれているところをハンクが通りすがり、家に案内する。

そのころ、オヤジがレティシアを怒らせたことが原因となり、ハンクは老父を老人ホームに
預けることにした。ホームの担当が「お父様を愛していらっしゃるのね」と声を掛けると、
「愛してなんかいません」ときっぱりと言い切るのだった。彼は彼なりに父親の抑圧に
苦しめられて来たのだ。それを息子ソニーの自殺でしみじみと理解することになったわけだ。

ハンクは家中の壁を塗り替えて、レティシアを迎え入れ、「大事にするよ」とささやくのだった。
お互いに大事にしたい、大事にされたい、と思う同士だったのだ。それに至るまでは大きな
犠牲を払ってきたのだ。ベッドを共にした後で、ハンクはアイスクリームを食べたい気分だ、と
クルマで買いに出かける。その間に、息子ソニーの部屋に入り、刑死した夫が描いた二人の
似顔絵を見つける、という前に書いた所に戻るのだ。アイスクリームを買って帰ったハンクと
レティシアは外の階段で並んで食べ始めた。欠けてしまった人生の一部を二人で埋め合う
作業を始めようとするかのように。彼が購入したガソリンスタンドは「レティシアの店」と
名付けられていた。

刑務官一家の3人の親子、そしてレティシアと交通事故死する息子のそれぞれの親子関係と
その喪失。そして再生。そのあたりが重い空気感の中に、じわじわと伝わる作品であった。
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by jazzyoba0083 | 2015-03-17 23:15 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)