それでも夜は明ける 12 Years a Slave

●「それでも夜は明ける 12 Years a Slave」
2013アメリカ Regency Enterprises,River Road Entertainment,PlanB, New Regency.134min.
監督:スティーヴ・マックイーン
出演:キゥエテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ
    ポール・ジアマッティ、ルピタ・ニョンゴ、サラ・ポールソン、ブラッド・ピット、ロブ・スタインバーグ他
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<2013アカデミー賞作品賞、脚色賞、助演女優賞受賞作品>

<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
昨年のオスカーを賑わせた作品。いわばその年のナンバー・ワン映画と認められた作品だ。
あいにく劇場で見る機会を失ってしまい、アカデミー賞シーズンになるとWOWOWで放映される
受賞作品として鑑賞できた。

これまでにも黒人奴隷をテーマにした映画は沢山あったし、秀作もあった。それと本作の
違いは何なんだろうと想いながら観ていた。思うに、本作が事実に基づいて制作されたもので、
しかも、私も知らなかったが、「自由黒人」という存在と、誘拐してまで南部に売り飛ばす一味が
いたということ、それと苛烈を極める奴隷の扱い、それらが上手いこと融合したということなのだ
ろうと得心した。アメリカという国は、これまでの戦争や、奴隷制度などの自らの負の部分を
映画や文学にして世に問うことが当たり前であり、そうした自浄作用が、彼の国をして強くして
来たと感じるのだ。時代は下るが今年のオスカーにもノミネートされていた「セルマ」にしても
根深く残る人種差別を取り上げたものだ。

リンカーンにより「奴隷解放令」が出るまでまだ20年ほど掛かる時代であった頃、NY州
サラトガでバイオリン演奏者として活躍していた「自由黒人」のソロモン・ノーサップ氏が
奴隷売買商人に騙されて、南部に売り飛ばされ、以来、12年間もの長い間、奴隷としての
辛苦を舐めた経緯を記した自伝を元にしている。その頃のアメリカにおける奴隷のポジション、
黒人が黒人をどう見ていたのかなどが、ドキュメンタリーのように語られ、その重厚さは
流石だと思っった。
しかしながら、他の方のブログなどに書かれている「絶賛」とは、個人的にはやや距離を
置きたい気分だった。ブラピの突然の登場など不自然過ぎるマイナス面は置いておくにしても
何かもう少し心にズシンと来るものを期待していたのだが、ちょっと違う感じだった。

拉致されたソロモン氏の、なんとか生きたい、家族と会いたいという強い気持ち、学があるが
故に厚遇もされ、逆にいびられもする、時には主人に命じられ、仲間の黒人を鞭打つという状況は
私達には想像も出来ない。また黒人奴隷といっても一律ではなく、それぞれの事情を抱えている
という当たり前のことの提示、当然奴隷を買う方の白人とて、その事情や人間性は一律ではなく、
ややもすると、奴隷=悲劇、白人=悪という単純なステロタイプに収斂しがちなところ、本作では
黒人と白人の当時におけるさまざまな側面を描いてみせていて、その点には非常に感心させ
られた。
そのリアリティが素晴らしい一方、そのあたりも含め、既視感もあり、私の心のなかでは「流れて」
しまった部分もあったのだろう。

おそらくこれを製作しようとしたプロデューサーたちには、問題提起、というよりも、事実の
再認識と、事実が小説より奇である面白さを訴えたかったのではないか。

俳優陣は豪華である。主人公イジョフォーもいいし、オスカーの助演女優賞を獲得した
ルピタ・ニョンゴのそれこそ体当たりの演技も素晴らしいものであった。
印象的なシーンが一つ心に残ったのだが、終盤にある主人公の1分以上もあろうかという
ワンショットの動かない長回し。このスペースで観客は主人公の心の動きの来し方行末に
思いを馳せることが出来るのであろう。一見意味の無さそうなこの長いワンシーン、観た方は
どう捉えられただろうか。

冒頭のシーンの続きは映画開始から1時間15分位たったところに繋がる、という風に時制を
上手く使い分けたといえる一方、紛らわしさも感じたのも事実だった。
去年のオスカー、監督賞は「ゼロ・グラビティ」に行ったわけだが、個人的には作品賞も
同作品に上げたいと思ったのだった。
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<ストーリー>
南北戦争前の19世紀前半に実在した黒人男性ソロモン・ノーサップの自伝を映画化した
衝撃の伝記ドラマ。ニューヨークで普通の市民として自由な生活を送っていた主人公が、
ある日突然何者かに誘拐され、南部の農園に売り飛ばされた末に体験する想像を絶する
奴隷生活の行方を描く。
主演は「キンキーブーツ」「ソルト」のキウェテル・イジョフォー、共演にマイケル・ファスベンダー、
ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ブラッド・ピット。
監督は「SHAME -シェイム-」のスティーヴ・マックィーン。

 ニューヨークに暮らす音楽家のソロモン・ノーサップは生まれながらの自由黒人。
妻子とともに、白人を含む多くの友人に囲まれ、幸せな日々を送っていた。だがある日、
2週間の興行に参加した彼は、興行主に騙され拉致された末、奴隷市場に送られてしまう。
自分は自由黒人だとどれだけ必死に訴えようが、無駄な抵抗だと悟るのに時間はいらなかった。
そして名前も人間としての尊厳も奪われ、奴隷として大農園主フォードに買われていく。
それでも農場では、その有能さを認められ、温厚なフォードに気に入られるソロモンだったが…。」
(allcinema)

この映画の詳細はこちらまで。
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by jazzyoba0083 | 2015-03-23 23:20 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)