バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) Birdman Or(The Unexpected Virtue of Ignorance)

●「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)Birdman Or(The Unexpected Virtue of Ignorance)

2014 アメリカ  New Regency and more.120min.
監督・共同製作・共同脚本:アレハンドロ・D・イニャリトゥ
出演:マイケル・キートン、エマ・ストーン、ザック・ガリフィナーキス、エドワード・ノートン、ナオミ‥ワッツ
    アンドレア・ライズブロー、エイミー‥ライアン、リンゼイ‥ダンカン他
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<2014年度アカデミー賞作品、監督、脚本、撮影賞受賞作品>

<感想>
アカデミー賞受賞作品鑑賞シリーズ、いよいよ本命の登場。本国から半年遅れの公開を
待ちわびて、さっそくシネコンに。意外や、不入り。観て納得。

これは難しい映画。素直にコメディと取る人はいないだろうし、複雑な人間ドラマだ。しかも
映像がほぼワンカット撮り。(に見せているのだけど、凄いと思う)これ、ステディカムで
引いたり寄ったり、トラックしたりで、気持ちが悪くなる人がいるんじゃないかな。好き嫌いは
ありそう。2時間の映画がワンカットで撮れるわけはないのだけれど、確かにワンシーンは長く
セリフの量が多く、カメラと役者の呼吸の併せ方は難しいだろうと思う。おしまいの方でNGを
出すとはじめから全部やり直しだから。そのあたりの緊張感は、監督とキャメラマンの
狙ったとおりの効果は出ているとは思う。面白いと感じる人はすごく面白いだろうし、
「どういうこと?」とエンドロールを観ながら思う人も多いのではないか。本作を観終えて、
エンドロールを観ながら、片頬を上げて笑える人がいるなら、その人はイニャリトゥ監督の
術を解したのではないか、そんな映画だ。下手に見るとヤケドをしそうな作品だ。
展開するストーリーは分かり易いが、なかなかどうして奥が深く、読み切るのは難しい。

2月のオスカー授賞式で、イニャリトゥ監督のドヤ顔が印象的だったが、自分が狙った
作品、監督、脚本、撮影で賞が獲れたら、そりゃ、満足だろう。ツボにハマってくれたのだから。
奮闘のマイケル・キートンは主演男優賞を逃したけど、「博士と彼女のセオリー」の
エディ・レッドメインとどうか、と言われると、差は無いと感じる。好みの問題かと。それと
映画が含む毒気が災いしたかもしれない。助演女優賞にノミネートのエマ・ストーン、
大きなお目目が印象的で、こういうシリアスな演技もちゃんと出来る、というところを魅せた。

本作は、見る人によって、色んな印象があると思う。それはそれでいいと思うが、個人的には
スノビッシュなシークエンスには都合が良いと思われるレイモンド・カーヴァーの芝居をベースに
して、演劇界、映画界、役者の世界、興行の世界、批評家の世界を皮肉った作品じゃないか、
と思った。 かつてアメコミのヒーロー、「バードマン」で一世を風靡した役者が、鳴かず飛ばずと
なり、ブロードウェイで、レイモンド・カーヴァーの「愛について語る時に我々の語ること」を
脚色、演出、主演しようとするが、常に頭のなかでは、バードマンが、映画に戻れと囁く。
そんな中、主役の男優がリハーサル中に怪我をし、主演をエドワード・ノートン演じるマイクに
任せると、マイクの暴走が始まる・・。2回のプレビュー公演と初日をワンカットで見せるわけだが、
そこに出演者たちのドラマが冷笑的に描かれていく。ハリウッドの実在の俳優たちの
名前も映像も出てくるので、シリアスなドラマということも出来るが、コミカルな部分もあり、
客席からは笑いも起きるが、それはコメディを描こうとしているのではなく、シニカルなドラマに
持って行こうとする監督の逆手であるわけだ。だいたい、出ている役者たちの主なところがほぼ
アメコミ映画に出ている、というのがニヒルである。

個人的に気にったのは、NYタイムズの芸術欄女性記者(彼女が酷評するとその劇はすぐに
打ち切りになると言われNYの演劇は彼女が支配しているとも言われている伝説の記者)が、
初日の批評をトップで取り上げるのだが、その冒頭のコメントが、すこぶる宜しい。(逆説的に)。
ちなみにタイトルのカッコの中のセンテンスは彼女が初日の感想を芸術欄に書いた時に出した
ヘッドラインの文章だ。

様々な意味で今まで観たことのない映画、というのは確かであろうし、この脚本と映像を
組み立てたイニャリトゥ監督の才能を感じ取ることが出来る。ドラムのビートに合わせた
ストーリーの展開も、ワンカットのように見える映像と共に新鮮だった。

2時間はあっという間だが、2時間以上は不要とも感じたわけで、そのあたりも監督は
ちゃんと計算しているに違いない。こういうタイプの映画が出てきて、それをチキンと
評価するアメリカ映画界の懐の深さを感じたりもする。
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<ストーリー>
「バベル」「BIUTIFUL ビューティフル」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が、
かつてバットマン役で一世を風靡したマイケル・キートンを主演に迎え、公私ともにどん底状態の
中年俳優が繰り広げる切なくも滑稽な悪戦苦闘の日々を、全編1カットという驚異の
撮影スタイルで描き出すシニカル・コメディ。
共演はエドワード・ノートン、エマ・ストーン、ナオミ・ワッツ。アカデミー賞では、みごと作品賞を
はじめ最多4部門を受賞。
 
かつて主演した大人気スーパーヒーロー映画「バードマン」のイメージが払拭できずに、その後は
鳴かず飛ばずの俳優人生を送るリーガン。私生活でも離婚に娘サムの薬物中毒と、
すっかりどん底に。
そこで再起を期してレイモンド・カーヴァーの『愛について語るときに我々の語ること』を
原作とする舞台を自ら脚色・演出・主演で製作し、ブロードウェイに打って出ることに。
ところが、大ケガをした共演者の代役に起用した実力派俳優マイクの横暴に振り回され、
アシスタントに付けた娘サムとの溝も深まるばかり。本番を目前にいよいよ追い詰められていく
リーガンだったが…。」(allcinema)

この映画の詳細はこちらを参照ください。
by jazzyoba0083 | 2015-04-12 12:40 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)