ゴッド・タウン-裁かれる街- God's Pocket

●「ゴッド・タウン-裁かれる街- God's Pocket」
2014 アメリカ Park Pictures,Cooper's Town Productions,Shoestring Pictures.88min.
監督:ジョン・スラッテリー
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン 、リチャード・ジェンキンス、クリスティナ・ヘンドリックス、
   ジョン・タートゥーロ他
e0040938_13414917.jpg

<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
P・S・ホフマンはこの映画が公開されて16日後に亡くなっているという。遺作なのだろうか。
しかし、日本では劇場未公開だ。面白くない、という声が多いが、私はとても面白く見た。
WOWOWが付けたと思しき邦題が全然ダメだな。これなら原題のままのほうがよっぽど
良かった。原題の「ゴッズ・ポケット」というのはフィラデルフィアの近くにある小さな街の
名前で、映画全体を表すメタファーとなっているのだ。神様はポケットを裏返しに付けたに
違いないと、映画を見ていると分かってくる。

だいたい、映画全体が「人間」というもののメタファーの塊のような感じで、製作にも加わった
ホフマンの言いたいところではなかったか。アメリカ映画にしては珍しく、救いがないもので、
カタルシスを期待するとアウトだ。でもそうであっても、映画自体は面白いと思う。

リチャード・ジェンキンス演じるコラムニストのつぶやきで始まるこの映画は、くそな奴らばっかり
が住む労働者の街。そこではクソのような人々がクソのような生活をし、生涯、街を出ることはなく
クソのように死んでいく。前編クソのような映画なのだが、よそ者であるフーテン、ミッキー
(ホフマン)が一番まともに見えてくる。にっちもさっちも行かない人生を生きるしか無い底辺の
人々の希望のない生活が綴られ、その人間模様を観ているのが面白い。
-----------------------------------------
ゴッズ・ポケットの住民は誰でも盗みをしたことがあり、子供の頃には人の家に放火し、
戦わなくてはならない時にまっさきに逃げ出す、そんな奴らの集まりだ、とコラムニストは
つぶやく。
そんな街にジェニーというバツイチの女のダンナとしてやってきたミッキー。連れ子のレオンは
普段からナイフを手にチャラチャラしていて、母親が持たせるサンドイッチをクルマの窓から
平然と捨てるようなクソな若造。砕石工場みたいなところに日雇いで勤めていて、黒人の
老人をナイフでからかって、逆に老人に棒で後頭部を殴り殺されてしまう。その場にいた経営者
ほか皆も、警察に口裏を合わせ、クレーンのチェーンが外れて頭に当たった事故だ、と
説明する。

ミッキーは肉屋で、妻が花屋を営むバードとつるんで競馬の話ばかり。バードはチンピラに
大金のカネを借りている。ミッキーはバードと組んで肉を積んだコンテナ車を盗むことを計画、
バードはサルというチンピラからカネを借りているのでそいつも仲間にいれて、仕事をした。

そんなミッキーに義理の息子の訃報が飛び込む。まあ自分の子供じゃないし問題児だったので
悲しくもないが、実の母のジェニーは悲嘆に暮れる。そして事件の背後に何かあるから調べて
という。警察にもそのように訴える。ミッキーには葬式をだそうにもカネがない。葬儀屋の
ジャックに相談するが、奥さんを悲しませないために棺はマホガニーの6000ドルのやつがいい、
とか足元を見る。

ミッキーは街の人が集まる酒場でみなから貰った香典1400ドルを、競馬につぎ込み、
すってしまう。一緒にやったバードは逆に1万数千ドルを当てた。ミッキーはバードから
カネを借りて再び葬儀屋に行くが、ラチが開かない。そこで精肉店の冷凍車(これは何故か
ミッキーの持ち物だった)に遺体を入れ、盗んだ肉の中からバードがくれた肉塊を積んで、
まず知り合いの肉屋に肉を買ってくれというが、冷凍車のなかに遺体を見つけた知り合いは
遺体と一緒にあった肉なんて買えるか、と断る。そこで冷凍車を中古車屋に売りに行く。

6000ドルだ、と言われるが、試走させてみろというと中古車屋の若い黒人が外へ走りに
出てしまう。まずい、と感じたミッキーはクルマを追いかけるが、信号を無視したクルマは
交差点で乗用車とぶつかり、冷凍車は大破、肉は散乱、しかもレオンの遺体まで道路に
投げ出される始末。

ミッキーは、葬儀屋をなだめ脅し、なんとか土曜に葬儀を出してもらうことになった。

一方、妻のジェニーのもとに、この街では人気のコラムニスト、リチャードがやってくる。
彼は、毎年同じようなコラムを書いてばかりなので編集長から辞めてもらうようなことを
匂わされていた。酒浸りで、ろくな文章も書けない。しかし、レオンの死亡記事で誤報を
書いてしまった新聞社から、おくやみ記事を書いて勘弁してもらってくれ、と言われ
ジェニーの元を訪ねたのだった。しかし女癖の悪いリチャードは、豊満な肉体で美人の
ジェニーに一目惚れ、速攻手を出して、別荘をつくろうと思っていた土地に連れだし、
体を結んでしまう。まあジェニーもジェニーなんだけど。彼女は息子の死の不審点を
洗って欲しいと頼んでいたのだったが。ジェニーをクルマに載せていたところを街の人に
見られ、たちまち噂が駆け巡る。

一方、ミッキーは相棒のバードに、息子の死に不審な点がないか、チンピラのサルの
手下に調べてくれるように頼んでもらえないかと相談する。引き受けたバードに頼み
バードの手下が工場を訪れる。そこには経営者の男が一人で砂利を片付けていた。
最初から双方が喧嘩腰。この経営者が強いやつで男の目を素手で潰してしまう。そして
もう一人の男もボコボコにしてしまう。これに怒ったサルは、バードの店に文句をいいに
来る。目を潰された男を伴って。しかし、バードの妻は拳銃を取り出し、なんと二人を
射殺、バードは妻が銃を扱えることに驚くが、妻は平然と警察に電話し、強盗に
襲われたと主張したのだった。

さて、何とか葬式も終えたところで、コラムニストのリチャードはレオンを悼むコラムを
書いて新聞に載せた。ゴッズ・ポケットの人々の生態をそのまま書き、反語として
しっかり根付いて生きている、と言いたかったのだが、酒場に顔を出したリチャードに
対し、街の人は、「俺らは顔が汚いのか、フロにも入らないっていうのか」と激昂、
よそ者に何が分かる、ジェニーの尻を追いかけてるくせにと、リチャードを表に
連れだし大勢でボコボコに殴る蹴るの暴行を働く。ピクリとも動かないリチャード。
その様子をジェニーは家から見ていた。酒場にいたミッキーも止めたのだが、多勢に
無勢というか、あまり止める気もなく、朝が来て道路に横たわったままのリチャードが
映される。このカットの変化は面白かった。

バードの妻が、フロリダのトレーラーハウスに住みたいというのでバードは商売をたたみ、
ミッキーとフロリダに越してきた。バードの妻は彼に銃の扱い方を教えるのだった。
銃声が響くなか、映画は終わる。
----------------------------------------
こうした話なのだが、まあラストに救いがあるといえばあるのだが、追手を気にして銃を
練習するバード、ジェニーと別れた?ミッキーの笑顔。しかし、根本は何も解決していない
のだ。ダメな土地のダメな奴らのダメな話。これでもか、と繰り出される不幸や不条理。
「やれやれだよ」とは誰も言わず、それが当たり前のように、日々のクソのような生活を
繰り返す。そうすることが自分たちの運命のように。
e0040938_13432521.jpg

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2015-07-23 22:50 | 洋画=か行 | Comments(0)