サード・パーソン Third Person

●「サード・パーソン Third Person」
2013 アメリカ Corsan,Hwy61 and more.137min.
監督・脚本:ポール・ハギス
出演:リーアム・ニーソン、ミラ・クニス、エイドリアン・ブロディ、オリヴィア・ワイルド、ジェームズ・フランコ
   モラン・アティアス、キム・ベイシンガーほか
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
「クラッシュ」でファンになったポール・ハギスの最新作。いかにも彼がやりたそうな心理的
群像劇だ。これ、一回の鑑賞で、全てを分かった、という人は余程の願力というか映画見と
いえよう。「クラッシュ」もなかなか複雑な群像映画だったが、本作はそれを上回る。
何故かといえば「想像の世界」が絡んでくるから。 この人、過去にいろんな面白い脚本も
書いているのだが、監督をやるとこういうことになる。よほどこういう映画が好きなんだろうと
思う。

で、「ローマ、ニューヨーク、パリ。3つの街、3組の男女。傷ついた魂たちが追い求めて
いたものとは」というタグラインにミスリードされ、すっかり3組の男女の物語と思っていたら、
どうやら、冒頭に出てくる作家リーアム・ニーソンが書く物語の登場人物だったりするのだ。
どこからどこまでが現実で、どこからが創作の世界なのか、判然とせず、カットの積み重ねも
次々と転換するので、筋を読みきりづらい。ただ一つ一つの物語はよく出来ていて、それが
終幕に向けて一つに重なりあってくるのだが、よくよく考えると不自然な設定もあったりで
しっかり見ていれば分かるっちゃ分かるのだけれど、それにしても難しい。ただ、観終わって
ちゃんと趣旨を見きれなかったとしても、決して嫌な雰囲気にならないのが不思議なところだ。

登場人物を整理しておこう・・
●リーアム・ニーソン=処女作品が大ヒット、ピュリツァー賞を獲るも、以後鳴かず飛ばずで
ホテルの一室で苦吟する。NYで愛人からの電話を取った時に幼い娘を事故で失い、妻とは
離婚している。しかし、これがトラウマとなっている。妻はキム・ベイシンガー。彼との復縁を
願っている。
●オリビア・ワイルド=雑誌記者だが、小説デビューを目指している。リーアムの愛人。
しかしもう一人同じような中年の男ダニエルの愛人でもある。リーアムとはそりがあうような
あわないような、不思議な関係だ。 以上二人の関係はパリのホテルが舞台である。

●エイドリアン・ブロディ=他人の衣装デザインを横流しする詐欺師。幼い娘を半年くらい前に
事故で失っていて、留守番電話に残った娘の声を聴くのが癒やしだった。ふと入った「アメリカーナ」
というバーでロマの女(モラン・アティアス)と出会い、娘が拉致されていて(理由が分からない)
お金が居る立場。エイドリアンは彼女に一目惚れし、全財産をつぎ込んで彼女の娘を助けようと
する。

●ジェームズ・フランコ=NYで活躍する前衛画家。前妻がミラ・クニス。今は愛人のローン・
シャバノルと同棲中。
●ミラ・クニス=フランコの前妻で元テレビ女優。今はホテルのハウスキーピングとして働く。
彼女は息子がクリーニングの袋をかぶっているところを叱ったことが暴力と認定され、
フランコと離婚。親権は父親に。彼女の弁護士を務めているのがマリア・ベロ。彼女は
ローマにいるエイドリアンの妻である。

WOWOWの「W座」での放映を観たわけだが、中で解説の小山薫堂曰く、リーアムと
愛人オリビア(舞台はパリ)だけが実在の物語で、あとのエイドリアンとモラン、
ジェームズ・フランコとミラ・クニス(マリア・ベロも)の二組は、幼い娘を事故で失って
しまったリーアムの想像の産物で、彼のトラウマや作家ゆえの想像が産んだものと
いうことだった。私は3組ともリアルかな、とも思っていたが場所が不自然だったり
結びつくはずがないシチュエーションが結びついたりするし、最後に舞台がパリの
ホテルに収斂してくるので、あれ?NYはどこにいったの?ということになるのだけれど。

愛人に熱心なリーアムだが、オリビア・ワイルドはどこか不思議な行動をする。そこには
「ダニエル」という男の存在が。二人の中年男性の間で揺れ動くオリビアの心。
常に一生懸命なのに何故かうまくことが運ばないミラ・クニス。それは作家リーアムの心の
メタファーなのだろう。そして、作家リーアムが幼い娘を事故で失ったトラウマは
エイドリアンが考えられない無茶をしてロマの女の娘の奪回に力を貸す。娘が戻ったのか
どうかは二人を載せたクルマが画面から消えていくとき、後部座席を注目したが
幼い子がいたようないなかったような。
全て上手くいかないミラ・クニスも画面から消えていく。

そして作家リーアムは一編の小説を書き上げる。それは、「ダニエル」という実父と
近親相姦の関係にあったオリビア・ワイルドの私生活を書いたものだった。出版され
それを手にしたオリビアは驚愕し、リーアムの前から消える。彼女も想像の産物で
あったのか。さすれば、リアルな存在は作家とNYに居る妻だけ、ということになる。
残りは全員作家の頭のなかにある創造物で「サード・パーソン」たちだったわけだ。
英語で言えばサードパーソンとは三人称ということになるが、複数形でないところに
なにか謂が隠されているのか。

ややこしい映画であるが、ハギス独特の味わいがある映画であった。しかし、彼は
基本的には脚本家であろう。つまり本作の脚本はよく編み込まれてはいると思う。
俳優陣はミラ・クニス、オリヴィア・ワイルドが印象的な演技をしていたと感じた。、
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<ストーリー>
パリ。1作目でピューリッツァー賞を受賞、大きな成功を収めた作家のマイケル
(リーアム・ニーソン)は、最新小説を書き終えるため、ホテルのスイートルームで缶詰めに
なっている。妻エレイン(キム・ベイシンガー)と別居中の彼は、向上心に燃える若い
小説家志望のアンナ(オリヴィア・ワイルド)と不倫関係にあるが、マイケルに癒しを
もたらすことはなかった。
一方、ファッション誌のゴシップ記事を執筆するアンナは、師匠でもありカリスマ的な
愛人でもあるマイケルを愛しながらも、若さと美貌で彼をあざけるスリル感を楽しんでいる。
しかし、そんな彼女には秘密の恋人が存在した……。

ローマ。スコット(エイドリアン・ブロディ)は、世界中を旅しながらファッションブランドから
デザインを盗む仕事をしているアメリカ人ビジネスマン。アメリカ的なものに触れたいと
“バール・アメリカーノ”に入った彼は、エキゾチックな女性モニカ(モラン・アティアス)に
一瞬にして心を奪われ、彼女が娘と久しぶりに再会しようとしていることを知る。
だが、その娘に会うために必要なお金を盗まれてしまったと聞いたスコットは、彼女を
助けたい衝動に駆られる……。

ニューヨーク。昼メロに出演していた元女優のジュリア(ミラ・クニス)は、6歳の息子を
めぐって有名な現代アーティストである元夫のリック(ジェームズ・フランコ)と親権争いの
真っ最中。経済的支援をカットされ、膨大な裁判費用を抱えたジュリアは、かつては
常連客だった高級ホテルで客室係として働き始める。息子ともう会えないのではという
不安と孤独に追い詰められていく中、ジュリアの弁護士であるテレサ(マリア・ベロ)から、
裁判所の心証を変えるために精神科医の鑑定を受けることを勧められる……。」
(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
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by jazzyoba0083 | 2015-08-01 23:20 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)