2015年 09月 15日
グランド・ジョー Joe
2012 アメリカ Worldview Entertainment,Dreambridge Films,and more.118min.
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン 原作:ラリー・ブラウン
出演:ニコラス・ケイジ、タイ・シェリダン、ゲイリー・プールター、ロニー・ジーン・ブレヴィンズ他
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
アメリカの作家ラリー・ブラウンの小説を映画化したものだが、南部出身で南部にこだわり
続けた作家の雰囲気は上手く出ていて、湿度、粘度が高く、暗い。
原作は未読だが、原作の雰囲気を上手く映像化できていたのではないか、と感じさせる。
主演のニコラス・ケイジ、久々にまともな映画に出たな、という感じだ。
もう一人の主人公ゲリー少年を演じ、本作でベルリン国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞
(新人俳優賞)を獲得したオデコの三本皺が印象的なタイ・シェリダンの出来も良い。
日本劇場未公開。WOWOWにて鑑賞。
ネットを見ていて驚いたのだが、ゲリーの父親役のゲイリー・プールターは、本物のアル中
ホームレスで、撮影終了後オースチンの路上で死んでいた、という。それにしても演技が
上手い。グリーン監督は主役の二人以外はほとんど素人俳優を使ったというが、そんな
感じは微塵も受けなかった。
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貧しくて、アル中の上に働かない暴力的な父親、母と妹を抱えて、必死に生きようとする
ゲリー少年。片や、その気の短さからこれまで数々のトラブルに巻き込まれ、見に覚えの
ない事件で長いこと刑務所ぐらしもしてきたジョー。、今は森林管理のボスとなり彼なりに
一生懸命生きている。
ある日、ゲリーがジョーの仕事場に仕事を求めてやって来た。日雇いで雇われ森林の
木に薬剤を注入し枯らす仕事をし、日銭を貰うが、父親は暴力を振るい巻き上げる。
ジョーは親父も連れて来い、と薦め、一度は父親も仕事をしてみるが、全然ダメ。
トラブルを引き起こし、一日で辞めていく。
ひたすら自制しつつ毎日を送るジョーだが、彼を挑発するような出来事が次から次へと
襲ってくる。バーで喧嘩した奴に銃で撃たれたり、前科者を挑発して手柄をたてようとする
新人警官につきまとわれたり、売春宿を経営する彼女が飼う犬は、なぜかジョーにだけ
吠えまくる。ジョーの中で我慢の糸が次々と切れていく。
ジョーは自分を慕ってくれるゲリー少年を可愛がり、ライターをやったり、またゲリーが
自分のおんぼろトラックを貯めた金で買いたいといえば、売ってやったりしていた。
しかし、懸命に生きる少年の心を踏みにじる父親は、彼がやっと手に入れたジョーの
トラックを盗んで、母と妹を拉致し、逃亡、更に、妹にトラックの荷台で客を取らせると
いう野蛮な行為に及んだ。
ジョーはつきまとう警官を殴り、売春宿の犬を、自分の飼うフレンチ・ブルドッグに襲わせて
噛み殺させ、ゲリーの父親を探しにゲリーと森のなかに向かう。そしてゲリーに警察に
行かせ、自分は単身でトラックのところへ。そして客と銃撃戦になり、客を射殺、自分も
腹を撃たれる。そんな状態で父親を追いかけるが、追い詰めたところで銃を撃つも当たらず。
父親は、橋から身を投げて自殺する。
警官とゲリーが現場に駆けつけたが、ジョーはゲリーが見守る中、息を引き取るのだった。
森林の木々が枯れた後には松を植えるのだが、その現場にゲリーが居た。ジョーに世話に
なったという監督に指示をされ松を植えるゲリー・・・。
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そんなお話だ。森林を薬剤を使って枯らす、という仕事があるのを初めて知ったが、
山を枯らして松を植える、というジョーの人生とゲリーの再生というメタファーになっている。
通奏低音のように鳴り続ける弦楽器のシングルノートがイライラ感を増幅させる。
そこら辺に良くありそうな物語を丁寧に描きジョーとゲリーの感情の行方が痛々しいほどに
迫ってくる。ラストに希望を感じる仕立てだが、全体としてはどっぷり暗い映画で、この後には
ラブコメでも観て気分を上げたいと感じてしまう。
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