あの日、欲望の大地で The Burning Plain

●「あの日、欲望の大地で The Burning Plain」
2008 アメリカ 2929 Productions.107min.
監督・脚本:ギジェルモ・アリアガ
出演:シャーリーズ・セロン、キム・ベイシンガー、ジェニファー・ローレンス、ホセ・マリア・ヤスピク他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
フレンチ・ノワールのようなタイトル、いいのか悪いのか微妙なタッチだ。閑話休題。
さすがに「バベル」の脚本家さんらしく、雰囲気が似ている。抑えつつも感情の行方を
丁寧に描いていて、根本の話題はそこらに転がっているような話なのだが、それを
ドラマに仕立てあげる力量はさすがだな、と思った。セロンもベイシンガーも、さらに
ジェニファーもとても良くて、さらに舞台装置としてのメキシコ近くの砂漠っぽい乾燥した
土地の空気感がとても映画にあっていた。

個人的に戸惑った点もある。それは時制の行き来で、誰が誰だがわかりづらくなってしまい
途中で誰が誰の娘で、それは何時の時代で・・・と頭で整理しなくてはならなかったこと。
セロンが飛行機事故で意識不明の元ダンナのところに行ったあたりでようやく判然とした
次第だ。カットバックされる映像と現代の映像の時間的な映像の中身の差がないので、
よくわからなかったのだ。カットバックも大きなシーンがだんだん短く交換されるようになり
ラストは短いカットが積み重ねられて終わってく。それはそれなりに工夫された演出なんだろう
けど、最初の方はイラッとする面もあったな。

結局、ベイシンガー夫妻の子供がジェニファー・ローレンスで、ジェニファーの成長した姿が
セロンというわけ。で、ジェニファーは、母ベイシンガーの浮気が許せず、逢引の場所で
ある平原の中にポツンとあるトレーラーホースのプロパンガスからガスが漏れるようにし、
火を放って、裸で逃げ出してくる母と浮気相手を笑おうとしていた。ところが、火がボンベに
引火し大爆発を起こし、二人は死んでしまった。ジェニファー=セロンはこれが大きな心の
痛手となり、情緒不安定のまま大人になったのだ。そのせいでセックス依存症にもなった。

一方、ダブル不倫をしていたベイシンガーの娘ジェニファーと、相手の男の息子は
急速に近づき、(母の血が流れていたのだな)、子供が出来てしまう。これに両家は恥の上塗り
と激怒し、二人は家を出る。長じて、息子は農薬散布の飛行機パイロットになり、
ジェニファー=セロンは息子との子供を産んだものの2日後には家を出た。娘が自分の
ようになることが怖かったため逃げ出した、というのだ。息子は娘を引き取って育てていた。
ある日、飛行機がトラブルで墜落し、息子は大怪我を追う。助手席に乗っていたカルロスに、
娘の母親を探して連れて来てくれと頼むのだった。その後からは前後不覚になってしまう。

冒頭、レストランマネージャーとして働くセロンの周りに知らない男が近づく光景が描かれるが
彼こそ、セロンの娘の母を探してきてくれと頼まれた息子の右腕カルロスであった。
唐突なる娘の出現で狼狽するセロンは娘との対面を拒絶する。しかしやはり会って説明しなくて
はと、レストランの仲間と娘を探す。そしてモーテルと娘と対面。ついにかつて別れた男と
対面を果たすのだった。生まれて間もない娘の前から姿を消したことを詫び、またずっと
一人で娘を育ててくれたことに感謝するのであった。元夫の病状も良くなり始めていた。

完全なるハッピーエンドではないが、独特の後味を残して映画は終わる。
やはり見どころはジェニファー=セロンという一人の女性の半生を丁寧に描き、日常の
中の愛の苦しみに向き合う姿を追体験するところが本作の醍醐味だろう。
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<ストーリー>
「バベル」の脚本家ギジェルモ・アリアガの初監督作となるドラマ。悲痛な過去に縛られた
ひとりの女性の再生を、時や場所を交錯させながら、鋭くも優しいまなざしで見つめる。

シルヴィア(シャーリーズ・セロン)は、ポートランドの海辺に建つ高級レストランの
マネージャーとして働いている。だが、ひとたび職場を離れると、行きずりの男と安易に
関係を持ち、自傷行為に走り、彼女は別人のように変貌を遂げた。

そんな彼女の前に、カルロス(ホセ・マリア・ヤスピク)と名乗るメキシコ人男性が現れる。
彼の傍らに立つ少女マリア(テッサ・イア)の姿に動揺し、思わず逃げ出すシルヴィア。
その胸に、砂漠の中で真っ赤に燃え上がるトレーラーハウスの幻影が浮かび上がる……。

シルヴィアがマリアーナと呼ばれていた10代の頃。彼女の一家はニューメキシコ州の
国境の町で暮らしていた。病気を克服したばかりの母親ジーナ(キム・ベイシンガー)に
代わって、父親ロバート(ブレット・カレン)と3人の幼い兄弟の面倒を見るのはマリアーナ
(ジェニファー・ローレンス)の役目だった。
そんな中、ジーナは隣町に住むメキシコ人のニック(ヨアキム・デ・アルメイダ)と情事を
重ねていた。お互いに家庭を持つ二人は、中間地点のトレーラーハウスを忍び逢いの
場所に選び、貪るように愛を交わすが、その情事は唐突に終わりを告げる。

二人が密会中にトレーラーハウスが炎上、二人は帰らぬ人となった。母の事故死は、
多感なマリアーナの心に大きな傷跡を残したが、それはニックの息子・サンティアゴ
(J・D・パルド)にとっても同様だった。
やがて、両親を真似るように密会を重ねるようになった二人は、本気で恋に落ちていく。
しかし、それは決して周囲に受け入れられない禁断の恋だった。その交際は互いの家族に
知られ、激しく糾弾されたマリアーナは「一緒に逃げて」とサンティアゴを誘う……。

それから12年。シルヴィアは、マリアーナの名前と共に置き去りにした過去と向き合うべき
時が来たことを悟る。母の過ちと、それ以上に重い自分自身の秘密。二重の十字架を背負っ
た彼女の魂に、希望の光は訪れるのだろうか……?(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2015-10-06 22:10 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)