トゥモロー・ワールド Children of Men

●「トゥモロー・ワールド Chlidren of Men」
2006 アメリカ Universal Pictures (presents),Strike Entertainment.109min.
監督・(共同)脚本:アルフォンソ・キュアロン 
原作:P・D・ジェイムズ 『人類の子供たち』/『トゥモロー・ワールド』(早川書房刊)
出演:クライヴ・オーウェン、ジュリアン・ムーア、マイケル・ケイン、キウェテル・イジョフォー他
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<評価:★★★★★★☆☆☆>
<感想>
モノトーンな雰囲気を持つ画面、イギリスという設定、哲学的な物語、これらを
うまく取り込んだ硬質な映画に仕上がった。これを観た人は等しく口にすると思うが
映像の仕上がりは本当に上手いというかよく出来ている。物語としては、どうかな、と
思える部分も、リアリズムにこだわったドキュメンタリーの様な映像構成に引っ張られ
評価の高い作品となっている。
冒頭から主人公のクライヴ・オーウェンの出てきたばかりのカフェが爆破テロに遭うと
いうところを初めとして、ジュリアン・ムーアがあっけなく射殺されてしまうところ、
同じシークエンスで、追いかけてきたバイクをクルマのドアで弾き飛ばすところ
マイケル・ケインが、オーウェンらを逃がした後に、追手に指とかを銃で飛ばされて射殺
されるところ、黒人の女性が出産するシーンの出てきた赤ちゃんの大きさと体から
あがる湯気、そして圧巻はラスト近くのレンズに血しぶきがかかる長回し映像と、映像から
受ける衝撃に観客はストーリ性を補完・強化されるであろう。
終始ハンディカメラ(ステディカム)による映像もまた、本作が訴えるところを表現するのに
生かされている。

先述の「硬質な未来劇」に良く似合うクライヴ・オーウェンらのキャスティングも良い。
マイケル・ケインや短い間に出てきて殺されてしまう主人公の妻役ジュリアン・ムーアも
ハマっていた。また原因は分からないけど、子供が生まれなくなった世界で、赤ん坊を
出産するのが黒人というのも意味を感じる。

原作があるので、骨子は変えられないところだが、ラスト近くの市街戦での主人公に
弾の当たらなさ加減とか、赤ん坊を抱えて出てきた母親を、敵の兵士も十字を切って
驚愕しながら、まるで神を見るかのように迎える様など、それまでのリアリズムにマイナス
してしまうような展開など、いささか鼻につくシーンもある。
さりとてそうだからといって、それらが本作にとって大きな瑕疵になるほどのものではない。
銃撃戦のさなかのモーゼが海を割るがごとくの赤ん坊を抱いた母子と主人公の脱出
シーン、一旦ちょっとした爆発音が響くと直ちに戦闘に戻る、というところが人間の愚かさを
表出していて寓意的だな、と感じた。

ラストシーン、ボートに乗る母子と救いだした主人公、そこに近づくTommorowと書かれた
大型船。親子の未来に決して全き救われたものはないだろう。いや、それよりも厳しい未来が
待っているのかもしれない。しかし、赤ちゃんが産まれたというのは、世界滅亡を救う
キッカケになることが期待され、観客はそこに未来に対する薄明かりを感じるというしかけだ。

★7としたが7と8の間と思う。これも多くの人が指摘されるところだが、邦題が安っぽくで
いただけない。映画の持つ哲学性、形而上的なニュアンスがスポイルされてしまっている。
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<ストーリー>
「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」のアルフォンソ・キュアロン監督が、120億円もの
巨額な制作費を用いて描いた近未来のサスペンス。クライブ・オーウェンの主演最新作。

急激な出生率の低下の果て、遂に人類は繁殖能力を完全に喪失。それから18年後の
2027年、世界は秩序を失い、既存の国家が次々と崩壊していった。
イギリスは軍事力を使った徹底的な抑圧で、どうにか国家機能を維持していた。官僚の
セオ(クライヴ・オーウェン)は、ある日武装集団に拉致される。アジトに連行された彼は、
反政府組織”FISH”のリーダーとして活動する元妻ジュリアン(ジュリアン・ムーア)と対峙。
セオもかつては平和活動の闘士だったが、我が子を失ったことで生きる意味を見失い、
希望を捨てた男だった。

ジュリアンはセオに、政府の検問を通過できる通行証を入手するよう依頼してきた。セオは
あまりにも無謀なその依頼を一度は断るが、ジュリアンが政府の目を逃れ接触してきたことに
重要なわけがあることを感じていた。そして、何よりセオは今もジュリアンへの想いを断ち切れ
ないでいた。

協力を決心したセオは、通行証を手に入れると、再びFISHと接触。そこで彼は、彼らの
計画の全貌を知らされる。それは彼らが保護している、人類の未来を変える存在である
キーという名の少女(クレア=ホープ・アシティ)を安全に、そして極秘裏に“ヒューーマン・
プロジェクト”に届けるというもの。ヒューマン・プロジェクトとは、世界中の優秀な頭脳が結集
して新しい社会を作るために活動する国境のない組織。
しかし、その存在を確認したものは、皆無に等しかった。外は政府軍と反体制勢力との
激しい戦闘が続く最前線。しかもキーを政治利用しようとするグループもいた。存在するか
どうかもわからないヒューマン・プロジェクトにキーを無事届けるため、セオは必死にミサイルと
銃弾の嵐をかいくぐる。」(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2015-10-15 23:10 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)