グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 Grace of Monaco

●「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 Grace of Monaco」
2014 フランス・アメリカ・ベルギー・イタリア Stone Angels,YRF Entertainment.106min.
監督:オリヴィエ・ダーン
出演:ニコール・キッドマン、ティム・ロス、フランク・ランジェラ、パーカー・ポージー、パス・ベガ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
ニコール・キッドマンがグレース・ケリーに似ているかどうか、という点、私も最初は
似てねえんじゃないのお、と思っていたのだが、芝居が進行するに従い、ニコールは
ニコールで、しっかりグレースを演じてたので、それに引きこまれ、ストーリーの
スリリングな仕立てもあって、あまり気にならなかった。女優が女優を演じるというのは
簡単なようで難しいのだろう。レーニエを演じたティム・ロスはよく似ていた。

モナコ公国の歴史について知らないことが多すぎで、鑑賞後少しネットで調べてみたり
していた。本作では実写フィルムも使い、史実も入れながら、基本フィクションの作りと
なっている。人気絶頂のハルウッドスターが王宮に入る葛藤。女優への未練、
レーニエ公との心のスレ違い、そしてド・ゴール政権下のフランスによる政治的圧力に
苦吟するレーニエと、宮廷のスパイであったことがバレた実姉の追放、ラストシークエンス
での、国際赤十字を舞台とした、世界の首脳夫妻を招いての大舞踏会、そこでの
演説などなど、人間グレース・ケリーの苦悩と覚悟と実績が史実にインスパイアされつつ
綴られていく。

モナコ公国の最近の歴史にこんな事情があったことは不覚にも知らず、それ故、逆に
映画としてはサスペンスの要素もあり面白く鑑賞できた。
グレースの心の支えとなるタッカー神父を演じたフランク・ランジェラがキーになる存在。
また、グレースにハリウッドへの復帰を、新作「マーニー」の台本を携えモナコにやって
来るヒッチコックもグレースの味方として存在している。銀幕への復帰を一時は夢見て
いたグレースだが、家族とこの国の為に生きる決心をし女優業からは完全引退するのだが
その辺りの心の動きもまた新鮮であった。「マーニー」の女優は結局ティッピー・ヘドレンに
変わって完成したことは知られた話である。

ラスト、赤十字の舞踏会で主催者として挨拶するグレースの堂々としたこと。彼女は
これでモナコをフランスから救ったのだ。階段の一番上でのニコールの姿は遠目には本物の
グレース・ケリーに良く似ていた。

グレースは自動車運転中に脳卒中を起こして崖から転落し、帰らぬ人となったのだが
本作ではそれについては一切触れない。しかし、結婚生活が上手く行かず人間関係も
ギクシャクしていたころ、青いポルシェのカブリオレでモナコの山道をぶっ飛ばすシーンは
後のこの事故を暗示している。

本作は昨年のカンヌ映画祭でオープニング上映されたが、レーニエとグレースの長男で今の
大公であるアルベール2世は、父親が不当に描かれているといて、出席を見送ったという
いわくが付いた。本作は冒頭の字幕にも示される通り、「事実に基づいたフィクション」と
見るべきである。それにしてもドラマチックに仕上がったと思う。

<ストーリー>
気品に満ちた風貌はもちろん、『喝采』でアカデミー賞主演女優賞に輝くなど、ハリウッドの
トップスターだった名女優グレース・ケリー。モナコ公妃となり、表舞台から姿を消した彼女が、
国の運命を左右する重大な任務に携わっていたという知られざるエピソードを映画化した、
二コール・キッドマン主演によるヒューマンドラマ。

1956年、オスカー女優のグレース・ケリー(ニコール・キッドマン)は、モナコ大公
レーニエ3世(ティム・ロス)と結婚。1961年12月、二人の子供に恵まれるも王室の中で
孤立していたグレースの前に、脚本を手にしたヒッチコック(ロジャー・アシュトン=グリフィス)が
現れる。「マーニー」という新作映画の出演依頼に訪れたのだ。

そんな中、モナコ公国に危機が降りかかる。アルジェリアの独立戦争で戦費が必要になった
フランスが、無税の国モナコに移転したフランス企業から税金を徴収して支払うよう要求、
「従わなければモナコをフランス領とする」と声明を出したのだ。
もし戦争になれば、軍隊もない小国モナコは、一瞬で占領されてしまう。政治で頭がいっぱいの
レーニエに無視され、ますます居場所を見失ったグレースはハリウッド復帰を望むが、国家の
危機的状況に発表は控えられる。

だが宮殿から情報が漏れ大々的に報道、グレースの相談役で後見人のタッカー神父
(フランク・ランジェラ)は、フランスのスパイがいると警戒する。1962年7月。国民の公妃への
不満が高まる中、励ましてくれるのは義姉のアントワネット(ジェラルディン・ソマーヴィル)と、
オナシス(ロバート・リンゼイ)の愛人マリア・カラス(パス・ベガ)だけだった。

やがてレーニエはフランス企業への課税を了承。しかしド・ゴールは、モナコ企業にも課税して
フランスに収めろと脅し同然の要求を突き付ける。レーニエは行き場の無い怒りをグレースに
ぶつけ、映画界からの引退を迫る。結婚式の記録映像を見ながら離婚を考え、涙にくれる
グレースの傍らで優しく見守る神父は「人生最高の役を演じるためにモナコに来たはずだ」と諭す。

数日後、神父はグレースを外交儀礼の専門家であるデリエール伯爵(デレク・ジャコビ)の元へ
連れて行く。モナコの歴史、王室の仕組み、完璧なフランス語、公妃の作法、正しいスピーチ――
グレースの夏は厳しい特訓で過ぎていった。

9月22日、レーニエはヨーロッパ諸国の代表に軍事支援を募るサミットを開くが、ド・ゴール
暗殺未遂の報せが入り失敗。さらに王室内の裏切り者が判明し、レーニエとグレースは
深い衝撃を受け、二人は絶望の中で長らく眠っていた互いの愛を確認し合う。

翌朝、グレースはヒッチコックに電話をかけて出演を断り、国際赤十字の舞踏会開催を発表、
世界中の要人に招待状を発送する。1962年10月9日、侵攻を目前にモナコで開かれた
パーティは大変な盛況を博し、そこにはド・ゴールの姿もあった。マリア・カラスの魂を震わす
歌の後、主催者のグレースが舞台に上がり、この日のために練り上げた一世一代のスピーチが
始まった……。」(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2015-10-27 23:15 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)