わが心のボルチモア Avalon

●「わが心のボルチモア Avalon」
1990 アメリカ TriStar Pictures,Baltimore Pictures.127min.
監督・脚本・(共同)製作:バリー・レヴィンソン
出演:アラン=ミューラー・スタール、ジョーン・プロライト、エイダン・クイン、イライジャ・ウッド他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
「グッドモーニング・ベトナム」「レイン・マン」のレヴィンソン作品である。自らの生い立ちを
色濃く反映した大河ドラマ。メリーランド州ボルチモアといえば、アメリカ国旗、国歌の誕生の地でも
あり、アメリカ国民にとっては格別の意味を持つ土地といえる。
原題の「アヴァロン」とは、キリスト教やアーサー王物語に出自を求められる「楽園の地」の
名称であり、本作の物語が繰り広げられるメリーランド州ボルチモアのアヴァロンも、その意を含むと
解すべきであろう。ちなみにメリーランド州は合衆国ワシントンDCの北東隣に位置する。
アヴァロン通はボルチモアの北東部に実在する通り(Avalon ave.)だが、そこが本作の舞台か
どうかは不明である。

さて、本作はそのアヴァロンに、1914年7月4日の独立記念日に東欧から移民としてやって来た
サム・クリチンスキーとその息子ジュールズ、さらに孫のマイケルという3代に渡る大家族の
栄枯盛衰を描く。監督の祖父の人生がベースになっているらしいが、監督の思いが強すぎて
散文的になったのと、大きな大戦が2つ、また大恐慌もあった時代だが、それらがまったく
反映されておらず、テレビの登場が大きくフィーチャーされて、まるでアメリカの家庭とテレビの
歴史、みたいな風情になってしまってもいる。アメリカが第一次世界大戦から第二次世界大戦
への激動の歴史の中の移民大家族の物語である。

テレビやクルマ、ファッションから年代を推察する他日本人には手段がないのだが、
テレビの登場は1941年のはずなので、クリチンスキー一家は大恐慌を乗り越えて、
テレビをいち早く見ることが出来る一族に栄達したわけだ。その頃、すでにアジアや欧州では
きな臭いことになっているのだが。

さて、サムは先にアメリカに渡っていた3人の男の兄弟と、壁紙を貼ったりする家業で、
郊外に家を建てるほどの資産を作った。その息子と従兄弟は、テレビの登場とデパートの
繁栄を目にして、今で言う家電量販店を作り、大成功、しかし初日に火災を起こし、
またどん底へと転落していく。しかし一族はしぶとく這い上がり・・・。とドラマティックに
展開する。
4人の兄弟とその家族、家族会と感謝祭、クリスマス、郊外へ引っ越すということ
などなどアメリカ人には堪えられないエピソードが次々へと繰り広げられる。
脚本も手がけた監督の確信犯的な構成なのだろうが、2つの大戦の合間、ローリングトウェンティ、
ジャズ・エイジ、大恐慌、真珠湾など合衆国的には大波の押し寄せる時代だったのだが
それらについて言及すること無く、徹底的に移民の一族の出来事に終止させている。
アメリカ人にとってはそれで良いのだろう、そのほうが思い入れが強くなるのかもしれない。
「1914年にボルチモアにやって来た」とサムが何度も言うのだが、そのセリフだけで
アメリカ人なら、「大変な時にアメリカに来たんだなあ」と分かるというものなのだろう。

時制が行ったり来たりするので最初のうち戸惑うかもしれない。
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<ストーリー・最後まで触れています>
欧育ちのサム・クリチンスキー(アーミン・ミューラー)が初めてアメリカの土地を
踏んだのは1914年、折しも独立記念日だった。
それから数十年、先に来ていたゲイブリエルら兄弟と共に壁紙職人としてボルチモアの
アバロン通りに定住の地を見い出した彼は同じ移民の妻のエヴァ(ジョーン・プローライト)
との間に息子ジュールス(アイダン・クイン)をもうけ、今やその息子と妻アン(エリザベス・
パーキンス)との間にサムの孫マイケル(イライジャ・ウッド)が生まれ、サムは彼に昔の
苦労話をするのが習慣になっていた。

ジュールスはいとこのイジー(ケヴィン・ポラック)と共にTVのディスカウント・ショップを開き、
やがてそれが成功して、大型家電デパートK&Kへと発展する。
一方家庭ではアンと姑のエヴァの間に不和が絶えなかったが、アンは2人目の子供を生む。
感謝祭の晩、毎年開かれる一族の家族会でのささいなトラブルからサムは兄たちと袂を
分かち、やがて収容所から奇跡の生還を果たしたエヴァの弟のシムカの家族と一緒に
住むようになる。

そんなある日、K&Kが漏電から全焼し、ジュールスは全てを失なう。更には闘病生活を
続けていたエヴァがついに他界し、サムの、そしてジュールスの育ててきたアメリカン・
ドリームは音を立てて崩れてゆくようだったー。

それからまた10数年が経ち、すっかり老人になってしまったサムのもとを成人した
マイケルとその息子が訪ねてくる。そのひ孫に向かってサムは「1914年、私はアメリカに
渡った。それまでこんな美しい場所は見たことがなかった」といつもの口癖をつぶやくの
だった。(Movie Walker)

余談だが、映画を観ていて、アメリカの、古い車をしっかり残してあることの見事さに改めて
感動した。また、ボルチモアの市電のペイントが、かつて名古屋を走っていた市電と同じだ、
という発見もあった。
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<映画に出てきたボルチモアの市電>


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<名古屋の市電>

この映画の詳細はこちらまで。
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by jazzyoba0083 | 2015-11-07 23:40 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)