ストックホルムでワルツを Monica Z

●「ストックホルムでワルツを Monica Z」
2013 スウェーデン StellaNova Film  111min.
監督:ペール・フリー
出演:エッダ・マグナソン、スベリル・グドナソン、シェリ・べェリクヴィスト、ヴェラ・ヴィトリ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
スウェーデンの美人ジャズシンガー、モニカ・ゼタールンドの自伝的映画。私はジャズファンと
して面白く観たが、多くの人は彼女のことを知らないのではないか。本作では、ビル・エヴァンスや
トミー・フラナガン、エラ・フィッツジェラルドなど高名なジャズミュージッシャンが出てくるが、
ファンでないと感激の度合いが異なるので、一般ウケする映画とは言えないと思う。

私としては、彼女のことはビル・エヴァンスの彼の代表曲を歌にしてビルのトリオをバックに
歌っているアルバムを通してしか知らない。JAZZの世界では知られた人だが、日本では
ほぼ知られていないシンガー。抑揚の少ない如何にも北欧の白人女性らしい優しい歌声だが、
個人的に興味の範囲でもない。
しかしながら、彼女の人生に映画のようなことがあったとは、一人の人生の顛末として面白く
見ることが出来た。スェーデンでの彼女の評価は知らないが、母国では一定の評価を確立した
シンガーかもしれない。

本作では、モニカは上昇志向の強い、身勝手ワガママ、気まぐれ、母としての子への偏愛と
決してよく描かれていない。ヘビースモーカーでヘビードリンカーだ。一人の男に満足せず、
時として男に裏切られたりもし、傷ついたり。
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スウェーデンの田舎町で電話交換手をしながらも、ドサ回りバンドで親友と二人でボーカル
を担当していたが、田舎町では鳴かず飛ばず。しかし、あるクラブでアメリカの高名な
ジャズ評論家、レナード・フェザーと出会い、アメリカでトミフラのバックで唄うチャンスに
巡りあう。幼い女の子(父親とは離婚)がいるのに、NYに行く娘を「何を考えているのか」と
呆れる父を尻目に、渡米するが、そこでの評判はさんざんだった。(モニカはなんで英語が
堪能だったんだろう) エラに「誰かの真似でなく自分の歌を歌いなさい。ホリディは心で
歌ったわ」と一刀両断にされてしまい、傷心で故郷に帰る。

しかし、ドサ回り楽団で歌ったスウェーデン語による歌が絶賛され、フィリップス・レコードと
契約、どんどんと有名になり、豪邸をキャッシュで買うまでになった。そこまでにも
男や両親、娘との確執はあり、酒と煙草は止められない。
ユーロビジョンのソングコンテストにスゥエーデン代表で出場するも、歌謡曲は嫌だ、と
言って暗めのジャズソングを歌い、結果は0点。スウェーデンの恥、とまで新聞に書かれて
しまう。ますます荒れて、酒に頼る。

モニカはJAZZミュージカルの舞台にも進出。今度はコメディエンヌとしての大きな評価を
獲得した。しかし流産からのダメージを押して出演したため体には大きなダメージを受けた。

そんな折、一生の夢、としていた高名なジャズピアニスト、ビル・エヴァンスとの共演を
果たすべく、一人でテープに歌を入れ、アメリカに送り、見事ビルから電話を貰い、渡米
することになった。この模様はスウェーデンにもラジオ中継された。
娘の「お前は木登りをすると、友人が途中で危険を察して降りてくるのに、どうしても
てっぺんに登りたがった。身の程を知り降りる勇気を持て。お前の気まぐれに振り回される
のはうんざりだ」と言っていた父も母とラジオを聞いていた。そして父の目には涙が。
モニカは「お父さんにも成功する機会があったのに、捨てたのよ。私は登った人しか
分からない頂上からの景色を眺めたいの」と持論を主張していた。

結果は大成功。父は国際電話で、感激した、お前のおかげでてっぺんからの眺めを
観させてもらったよ、というのであった。
スェーデンに戻ってきたモニカは、いろんな男遍歴を繰り返してきたものの、いつも
そばにいてくれたベーシストと、振り回してしまった娘を加えて3人で落ち着いた生活を
送ろうと決意したのだった。
本作ではスウェーデンの古い車がたくさん見られて良かった。
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そんなお話だが、モニカは先述のように、他人の迷惑を顧みないワガママで気まぐれ
とにかく自分が話題の中心にいて、かつ頂上にいなければ納得できない性格。結果論と
して上手く行ったのだが、自ららの道を自分で切り開くという勇気や認めざるを得ないが
多分に運にも恵まれていたといえる。
反面、寂しがり屋だったりする、典型的な孤独な上昇思考型ミュージッシャンだ。こういう
アーティストは彼女に限ったことではなく、特にJAZZは「破滅型」が多かった。

モニカは田舎育ちで、社会的にいろいろと有った結果、少しはまともになったという感じ。
だが、タバコ臭いキスは、娘は嫌だったろうし、酒や睡眠薬の飲み過ぎで昏睡してしまう
母親も嫌だったろう。舞台も遅刻したりほっぽり出したりして、ついにはフィリップスと
縁を切られてしまう。それでもビル・エヴァンスとの共演には成功する、というチャレンジ精神は
認めるけど、家族や支えてくれてくれた人に迷惑をかけまくりの人生には共感を覚えない。

実際のモニカは、その後もアメリカの名だたるジャズミュージッシャンと共演を果たして行くが
重度の脊柱側わん症に苦しみ、晩年は車いすの生活となり、最期は自宅マンションの火災で
焼死する、という何とも彼女らしいといえばそうだが、そういう死に方をするのだ。

主演のエッダ・マグナソンは金髪でとても綺麗な女優さんでしかも歌も上手い。モニカの
雰囲気をよく捉えた歌い方をする。特に始めて母国語でジャズを歌ったという
「Sakta vi gå genom stan(Walking My Baby Back Homeのスウェーデン語カバー)」が
コケットで彼女の歌声によく合った名曲だと思う。ワルツ・フォー・デビイは原曲のイメージが
強すぎてヴォーカライズされることに個人的には興味があまりない。

モニカ・ゼタールンドという女性ヴォーカリストに興味がある方は観ると面白いと思う。
知らない人はジャズの世界も含め、興味が湧きづらいかもしれない一編である。
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<ストーリー>
1961年、スウェーデン語でジャズを歌いスターダムにのし上がったジャズシンガー、
モニカ・ゼタールンドの半生を描くヒューマンドラマ。シングルマザーの電話交換手だった
モニカが、父との確執や理想の母親になれない自身への葛藤を乗り越え、自分にしか歌え
ない歌を追求する姿が綴られる。
監督は『白昼夢に抱かれる女』のペール・フライ。主演は、シンガーソングライターの
エッダ・マグナソン。

スウェーデンの首都ストックホルムから300km離れた小さな田舎町に両親と5歳の娘と
暮らしているシングルマザーのモニカ(エッダ・マグナソン)は、電話交換手の仕事をしながら、
時折深夜バスでストックホルムまで出向き、ジャズクラブで歌手としてステージに立つという
日々を送っていた。いつか歌手として成功し、この町を出て娘と二人で何不自由なく暮らせる
日が来ることを夢見ているモニカに、厳格な父は“母親失格”のレッテルを貼り、歌の仕事にも
反対していた。

そんなある日、モニカの歌を聞いた評論家に誘われ、ニューヨークで歌うチャンスを与えられた
モニカは意気揚々とジャズの聖地に乗り込むが、ライヴは無残な結果となり、さらには憧れの
歌手から「自分らしい歌を歌いなさい」と厳しい批判を浴びてしまう。

ニューヨークでの評判はモニカの住む町まで届き、父はモニカに歌をやめ母親業に専念する
よう言い放つ。落ち込むモニカだったが、バンドのベースを務めるストゥーレ(スペリル・
グドナソン)と話すうち、母国語であるスウェーデン語でジャズを歌うことを思いつく。
誰もが予想していなかったこの歌声は、次第にストックホルムの人々の心に響くようになり、
モニカは夢のステージへの階段を上がり始める……。」(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
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by jazzyoba0083 | 2015-11-16 23:20 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)