秋刀魚の味(4回目)

●「秋刀魚の味」
1962 日本 松竹映画 113分
監督:小津安二郎  脚本:野田高梧、小津安二郎
出演:岩下志麻、笠智衆、佐田啓二、岡田茉莉子、三上真一郎、中村伸郎、加東大介、
   吉田輝雄、三宅邦子、東野英治郎、杉村春子、北竜二、岸田今日子、環三千代他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
NHKが松竹などと協力し、本作をデジタル・リマスタリングした。どんな映像に
なったのだろうか、そんな興味もあり、4度目の鑑賞。先回は2011年の秋に観て、
「また観るだろう」と書いてあるが、その通りとなった。小津作品でも好きな一品である。

テクニカルな感想・評価などは先回のこちらのブログを参照いただきたい。

デジタルリマスタリングされた映像は、まず冒頭の赤白の煙突の鮮やかさから既に明らかで
ある。ノイズが少なくシャープになった映像は、昭和37年の時代の雰囲気をリアルに映し出して
いる。女性の服のシワや顔の陰影など、映画の表情を豊かにしていると感じた。
それにしても岩下志麻は綺麗だ。
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昭和37年。東京五輪まであと2年。戦争の痕跡もまだ消えきらず、という時代の雰囲気が
私にはとても心地よい。自分、小学校4先生だった。女性は普段からまだ着物を着ていて、
紳士はソフト帽を被っていた。

そんな時代をバックに繰り広げられる「ほろ苦い」初老の男のお話。小津映画独特の
短いセリフの繰り返しは、非常にユニークだが、何故か心に温かく響く。
「そのクラブ、いいですよね」「マクレガーだからな」「マクレガーですものね」「ああ、マクレガー
だからな」。見方によってはクサイと思われてしまうが、小津の作品の中では格別の味わいを
持つ。特に笠智衆によって語られると堪らない・・・。
速度が早く、情報が溢れ、人々の心がカサつき、金、金と(この映画も金が1つのエピソード
にはなっているが)追い掛け回されている現代では描き得ない味わいが、心に沁みるのだろう。

ストレートな物語を語るのではなく、外側にある話からメインテーマを浮かび上がらせる手法。
それだからこそ、ラストの娘が嫁に行った後の台所で椅子に座る主人公の男の寂しさが
浮かび上がってきて切なく伝わるのだ。

このデジタルリマスター版、ブルーレイに永久保存だ。
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by jazzyoba0083 | 2015-12-24 23:15 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)