ブリッジ・オブ・スパイ Bridge of Spies

●「ブリッジ・オブ・スパイ Bridge of Spies」
2015 アメリカ  Amblin Entertainment,DreamWorks SKG,Fox 2000 Pictures.142min.
監督・(共同)製作:スティーヴン・スピルバーグ 共同脚本:E &J コーエン
出演:トム・ハンクス、マーク・ライランス、エイミー・ライアン、アラン・アルダ、スコット・シェパード他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
敬愛するスピルバーグの新作に、脚本としてコーエン兄弟が参加し、オスカー常連の
トム・ハンクスが主演と来たら、私はとにかく何をおいても映画館に行く。
実話がベースという、結果の分かっているサスペンスドラマを、コーエン兄弟がどう
本にするか、という興味もあった。コーエン兄弟の持ち味というのはエッジの効いた
見る人の常識を裏切るような作品だと思っているので、(事件ものの傑作としては
オスカー受賞作「ファーゴ」がある)事実をベースにしてどう緊張を持たせるのか、と
ワクワクだった。スピルバーグは「シンドラーのリスト」で実在の人物を描き、高い評価を
得たが、今回はどうか。「プライベート・ライアン」でのトム・ハンクスの人物描写に
比べてどうか。興味は高まる。

結果、U-2 事件として私も記憶にある歴史的大事件、裏側にはものすごい外交的
取引があったのだろうけど、若干綺麗にまとめすぎたかなという恨みは残る。残るが
主人公のドノヴァン弁護士という人間の「物凄さ」を手堅く描いたな、という感想だった。
最後の字幕で後日譚が語られるが、それを知った時、危うく泣きそうになった。
なんという人だ。人間をここまで信じて「国のため」は結果論であり、人として正義のため
国際的な事態に赴く、こんな人間がいたのか、という驚きと感激。そのあたりの表出は
コーエン兄弟+スピルバーグの手腕といえよう。

特に端折れれば端折れるようなU-2の墜落シーンやラスト近くの捕虜交換を終えて
ベルリンから帰る時の飛行場の様子など、CGも使っただろうが、リアリティに拘った
制作陣の狙いは成功したと考える。(小さなこだわりだが持つ意味は大きい)

アメリカに捉えられたソ連のスパイとロシアに墜落したU-2偵察機のパイロットの
交換と思いきや、ベルリンが東西に分断された時、東側に残ってしまい、東独に
捕まった留学生の存在が加わり、ヴォーゲルという東独の人物の登場もあり
事態は解決に向かうわけだが、その辺りの東西の人間の機微が手堅く描かれて
いた。印象的なシーンはたくさんあるのだが、捕虜交換に臨んで、人間として信頼
しあっているドノヴァン弁護士とソ連のスパイ、アベルの会話で、ドノヴァンが開放
されたらどうなるか?と尋ねると、同志が抱擁してくれれば吉、クルマの後部に
さっさと案内されるようなら不吉、というようなことを言うが、結果の映像を観ると、
言葉より映像の物語るものの重さを感じるし、一方、ヴォーゲルの努力で開放された
学生が、ベルリンでアメリカ側に還された際、ヴォーゲルが学生を受け取りに出てきた
アメリカ側が握手してくると思い手を差し出したところ、米側は学生に歩み寄り肩を抱え
去っていった。ヴォーゲルの差し出した手は空を切ったのだ。その辺り、アメリカ、東独、
ソ連といった当時の歴史に身をおいた人物の姿を映像として活写していたと感じたのだ。

それにしてもこのドノヴァンという弁護士、結果的にはアメリカという国家に利用された
訳だが、人間を信じて正義を信じて行動するチカラには本当に参った。トム・ハンクスは
そのドノヴァンを破綻なく演じきって見事だった。「プライベート・ライアン」などでスピルバーグ
の手の内は心得ているのだろう。「プライベート~」の時は名もない兵士を無事に帰国させる
という任務に殉じた一人の将校を描いて見事だったが、本作でもドノヴァン弁護士という
人物を活写出来たと感じる。しかし、戦争のさなかと冷戦とではインパクトが違いすぎ、
人物描写としては「プライベート・ライアン」に軍配が上がると個人的には思う。

ヤヌス‥カミンスキーの撮影になる映像、「グランド・ブタペスト・ホテル」でオスカー美術賞を
獲ったアダム‥ストックハウゼンのプロダクションデザインにも是非注目頂きたい。
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<ストーリー>
 一触即発の緊張状態にあった米ソ冷戦時代に、実際に行われたスパイ交換をめぐる
驚愕の実話をコーエン兄弟の脚本、スティーヴン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演で
映画化した緊迫と感動のサスペンス・ドラマ。

ごく普通の一民間人でありながら、スパイ交換の交渉役という一歩間違えれば自らの命は
おろか、かろうじて保っていた世界平和さえ崩壊させかねない極秘任務を託された主人公が、
弁護士としての矜持と信念を支えに、絶体絶命の難局に立ち向かっていく姿をスリリングに描く。
共演は本作の演技で数々の映画賞に輝いた英国の実力派舞台俳優、マーク・ライランス。

 米ソ冷戦下の1957年、ニューヨーク。ルドルフ・アベルという男がスパイ容疑で逮捕される。
国選弁護人として彼の弁護を引き受けたのは、保険を専門に扱う弁護士ジェームズ・ドノヴァン。
ソ連のスパイを弁護したことでアメリカ国民の非難を一身に浴びるドノヴァンだったが、弁護士と
しての職責をまっとうし、死刑を回避することに成功する。

5年後、アメリカの偵察機がソ連領空で撃墜され、アメリカ人パイロットのパワーズがスパイとして
拘束されてしまう。アメリカ政府はパワーズを救い出すためにアベルとの交換を計画、その大事な
交渉役として白羽の矢を立てたのは、軍人でも政治家でもない一民間人のドノヴァンだった。
交渉場所は、まさに壁が築かれようとしていた敵地の東ベルリン。身の安全は誰にも保証して
もらえない極秘任務に戸惑いつつも、腹をくくって危険な交渉へと臨むドノヴァンだったが…。
(allcinema)
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by jazzyoba0083 | 2016-01-09 12:20 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)