ビッグ・アイズ Big Eyes

●「ビッグ・アイズ Big Eyes」
2014 アメリカ The Weinstein Company,and more.106min.
監督・(共同)製作:ティム・バートン
出演:エイミー・アダムズ、クリストフ・ヴァルツ、ダニー・ヒューストン、ジョン・ポリト、クリステン・リッター他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
ブラックファンタジーじゃないとティムは評価されないのだろうか?本作は極めてアンダー
レイテッドである。事実がベースになっているので物語の面白さは割り引くとしても★は
8,5を進呈したいいい出来と思う。事実、この年のゴールデン・グローブ主演女優賞を
エイミー・アダムズは本作で受賞している。日本で話題にならなかったのは、配給会社の
問題なのだろうか。

脚本も上手く出来ていて、物語自体アクが強いので106分という上映時間も宜しい。
エイミーの演技もさることながら、助演男優賞を最近2つ獲っている(「イングロリアス・
バスターズ」と「ジャンゴ~繋がれざるもの」)クリストフ・ヴァルツのオーバーアクトとも
取れる怪演が素晴らしい。この人、小憎らしい役をやらせたらいい味出すなあ。

ティムの主役二人の心情を上手く映像化した手法も買いたい。物語の折りたたみ方も上手い。

本作は、おそらく多くの人が一度は見たことがあるんじゃないか、と思われる、大きな眼を
した子供の画。これを巡って、いわば佐村河内さんと新垣さんのような関係を夫婦でやって
いた、ということ。
大きな眼をした子供の画を書くのは妻のマーガレット(エイミー)で、それを自分が描いたと
大宣伝する口のうまい詐欺師のような嘘つきC調男ウォルター(ヴァルツ)。
1950年から60年代のことで女は男に養ってもらうもの、良きハウスワイフこを女の鏡と
いう時代に自ら画を売り込む手法も勇気も無かったマーガレットにウォルターがつけこんだ
わけだ。結婚しているからサインはキーンという苗字であるため、ウォルターが描いたと
言っても誰も疑わない。
で、このウォルターが口から先に産まれたような男で、まあ有能なプロデューサーといえば
そうなんだけど、最後にはマーガレットを恐怖で支配し、長い間富も名声もウォルターが
独占、写真集まで出してしまう。
事実、当時画を飾るといえばキャンバスに書かれたものを額装し壁に飾るというもので
あったが、ウォルターは画をポスターや絵葉書にして売りまくった。油絵などをこうして
売る手法はウォルターをもって嚆矢とするそうなので、その方面の才能はあったのだろう。

しかし、自分の分身と思う画が自分のモノにならないフラストレーションに我慢の緒が切れ、
二人は別居し、マーガレットと娘(前夫との子)はハワイに移る。彼女は離婚を決意し、その旨を
電話で連絡するが、抜目のないウォルターは、画の権利を全部よこせ、なおかつ新作を100枚
描け、それならば応じよう、と言う。しぶしぶ応じるマーガレット。しかし「エホバの証人」らの
サポートもあり、怒ったマーガレットはハワイのラジオ局で真実を打ち明けることにした。

世間は大騒ぎとなり、ウォルターは画はあくまで自分が描いたと裁判に持ち込む。
(ハワイでの二人の対決がまた漫才のような感じで面白いのだ)あまりにアピールが
過ぎるウォルターに対し、裁判長は二人に1時間で画を書いてみなさい、と指示する。
当然、ウォルターは描けない。腕がしびれて駄目だ、とか嘘をいうが、完璧に書き上げた
マーガレットの画の前に真実は明らかであった。裁判はマーガレットの完勝であった。

裁判所の正面で笑顔で出てきたマーガレットと取り囲むマスコミや支援者。差し出された
写真集に「マーガレット」と堂々とサインする彼女には明るい笑顔が戻っていた。

時代がそうさせたとはいえ、ウォルターの支配から抜け出られなかったマーガレットに
非を求めるのは酷だろうか。ウォルターがまともなら、妻の才能を高くうる方法を編み出し、
自分はアートディレクターとなり、妻を最大限売り込み、金儲けもする、と思うのだが、
残念ながら彼は小物であり、自分の名誉と金が欲しかっただけだったのだ。

映画の最後で本人の画像を使って説明されるが、ウォルターは2000年に無一文で死去、
マーガレットはハワイからサンフランシスコに戻り、画廊を開店し、今も(89歳だったか)
元気で画を書いているそうだ。
映画評論家の町山氏がマーガレットに会った折、「ウォルターが生きているうちにこの映画が
出来たら」と問うと、彼女は「ウォルターは自分の事が映画になったことを自慢する、そんな
男ですよ」と答えたとか。

機会があれば皆さんに見ていただきたい佳作・良作だ。
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<ストーリー>
 60年代にモダン・アート界で大きなブームを巻き起こし、その後思わぬ一大スキャンダル
へと発展した絵画“ビッグ・アイズ”シリーズを巡る画家夫婦の驚きの実話をティム・バートン
監督で映画化。
主演は「魔法にかけられて」「アメリカン・ハッスル」のエイミー・アダムスと「イングロリアス・
バスターズ」「ジャンゴ 繋がれざる者」のクリストフ・ヴァルツ。
 
1958年。離婚を決意したマーガレットは、幼い娘ジェーンを連れて家を飛び出す。女手一つで
娘を育てるため、サンフランシスコのノースビーチで似顔絵描きを始めたマーガレット。
彼女はそこで口が上手く社交的な男性ウォルター・キーンと出会い、結婚する。

ある日、マーガレットの描く瞳の大きな子どもの絵が、ひょんなことから世間の注目を集める
ようになる。するとウォルターは、その“ビッグ・アイズ”を自分の絵と偽り売りまくる。
それを知り抗議するマーガレットだったが、口八丁手八丁のウォルターにまんまと言いくる
められてしまう。以来、世間にもてはやされるウォルターの陰で、黙々と絵を描き続ける
マーガレットだったが…。(allcinema)
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この映画の詳細は、こちらまで。
by jazzyoba0083 | 2016-02-17 22:55 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)