パリよ、永遠に Diplomatie

●「パリよ、永遠に Diplomatie」
2014 フランス・ドイツ Gaumont,Film Oblige,Blueprint Film.83min.
監督・(共同)脚本:フォルカー・シュレンドルフ  原作戯曲:シリル・ジェリー(映画共同脚本)
出演:アンドレ・デュソリエ、ニエル・アレストリュプ、ブルクハルト・クラウスナー他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
実話に基づく作品、ということだが、こういう秘話があったことを初めて知った。知れば
まあ、ありそうなことだろうけど、まずはallcinemaの解説を先に読んで頂くのが良かろう。

「第二次世界大戦末期に、敗色濃厚なヒトラーが実際に計画した“パリ壊滅作戦”が
いかにして回避されたのか、その歴史秘話を描いたシリル・ジェリーのヒット舞台を、
「ブリキの太鼓」「シャトーブリアンからの手紙」の名匠フォルカー・シュレンドルフ監督が
映画化した仏独合作映画。

ヒトラーにパリの破壊を命じられたドイツ軍人と、それを思い止まらせるべく決死の直談判を
決行した中立国スウェーデンの外交官が、ホテルの一室で繰り広げる緊迫の駆け引きの
行方をスリリングに綴る。
主演はアラン・レネ作品の常連アンドレ・デュソリエと「預言者」「サラの鍵」のニエル・アレストリュプ。
 
 1944年8月25日未明、ナチス・ドイツ占領下のパリ。連合軍の進軍がパリ市街へと迫る中、
ドイツ駐留軍が陣を構える高級ホテル“ル・ムーリス”では、パリ防衛司令官ディートリヒ・フォン・
コルティッツ将軍を中心にある作戦会議が開かれていた。それは、ヒトラーが命じた
“パリ壊滅作戦”を粛々と進めるためのものだった。
しかし、ドイツの敗北はもはや避けられず、この作戦に戦略的な意味がないことは明白だった。
やがて会議を終え、一人部屋に残ったコルティッツの前にどこからともなく現われたのは、
中立国スウェーデンの総領事ラウル・ノルドリンク。パリ生まれのノルドリンクは、愛する
パリを守るため、作戦の中止をコルティッツに迫るのだったが…。」
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という背景と作品内容だ。当然、パリは破壊されなかったのは現在私たちがエッフェル塔や
オペラ座や凱旋門やルーブルやノートルダム寺院やオルセー美術館やセーヌに掛かる美しい
橋、またパリの美しい町並みを愛でることが出来ることから、明白なわけで、本作は
ある夜が明けるまでの数時間を凝縮した、老人二人の緊張する駆け引きが見どころな訳だ。

結果は分かっているので、興味はナチのパリ占領軍司令官コルテッツ将軍が、自分をどう
納得させていくか、であった。もちろん、フランスを、パリを心から愛する中立国スウェーデンの
総領事ノルドリンクの、巧みな会話も見どころなのではあるが。原作を知らなかったが
しばらく観進むうちに、あ、これは芝居が原作なんだろうな、と分かってくる。実際、舞台となる
のはパリの将軍の部屋が殆どなのだ。1つの部屋中だからこそ、息が詰まる様な駆け引きに
緊張感が出ているのだと思う。ドイツ軍将軍コルテッツは、ノルドリンクとはフランス語で会話し
部下には当然ドイツ語で命令を下している。舞台ではどうしたんだろうか。

殆どリアルタイムの80分強。映画は未明の3時頃から始まり、夜明けしばらくして終わる。
二人のやり取りから、ヒトラーの狂気が浮かび上がるのだが、ベルリンが破壊されたから
その復讐にパリを壊滅させるという。特にランドマークを徹底的に痛めつけるという作戦。
その作戦には軍事上の意味は全く無く、むしろ人類の遺産に対する重大な罪となるのだ。
コルテッツはユダヤ人粛清にも手を染めた将軍だったが、パリ壊滅作戦は言われれば
やらなくてはならないとはしながら、やはり心に引っかかりを覚えていた。そこに登場したのが
ノルドリンクだったのだ。二人は旧知の中。ノルドリンクがどうやってナチのパリ壊滅作戦を
寸前で知ったかは不明だが、あの手この手を使ってコルテッツの良心に訴えかける。
コルテッツは作戦中止をしたら、反逆の軍人は家族も処刑される法律をヒトラーが作った
ため家族を思うと、やらざるを得ないという。そこでノルドリンクは地下の組織を使って
コルテッツの家族をスイスに安全に逃がすから、作戦を中止してくれ、と懇願する。

ノルドリンクが家族を逃がす、といっても保証がない。不安なコルテッツはノルドリンクを
信じるしか無い。最終的にコルテッツは彼を信じ、結婚指輪を彼に託す。そして作戦中止を
命ずる。一部の部下に跳ね返りはいたが、大事に至らず、パリは守られたのだ。
原題にあるように、「外交」とは戦火を交えることだけではない。どこかの総理大臣に
観てもらいたい映画である。

コルテッツはその朝入城してきた連合軍に投降した。彼はその後釈放され、1955年に
ノルドリンクと再会する。ノルドリンクはフランスから授けられた勲章を、コルテッツに
譲った。コルテッツはパリを救ったドイツ将軍として歴史に名を残せたのだった。

作品の中で、パリ破壊をやめるように説得を続けるノルドリンクに対し、コルテッツ将軍が
「きみが私の立場だったらどうする」というシーンが有る。つまり、作戦中止すればドイツにいる
家族はヒトラーに処刑されるという状況を、お前ならどうするのだ、と問うたのだ。
映画を観ている人は、ここで、自分だったら行くも地獄引くも地獄の状況をどう打開するのだ
ろうか、と考えるに違いない、いや考えて欲しい。

この映画を観た人はコツテッツの勇気や諦めなかったノルドリンクの勇気に胸打たれる一方、
ヒトラーの狂気に背筋が凍ることだろう。人類はこういう人物を生む土壌を持っていることを
常に思い描いてないと危ないということ。現在でも、イスラム国やタリバンによる遺産の破壊、
またドナルド・トランプに代表される極端な主張など、世界は一致してその芽を摘まなくては
ならないのだ。

この映画の詳細はまで。
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by jazzyoba0083 | 2016-03-31 22:50 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)