ルーム Room

●「ルーム Room」
2015 アメリカ  Element Pictures, No Trace Camping.112min.
監督:レニー・アブラハムソン  原作・脚本:エマ・ドナヒュー 『部屋』(講談社刊)
出演:ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ、ジョーン・アレン、ショーン・ブリジャーズ
   ウィリアム・H・メイシー他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
物語の主題は、7年間の幽閉後の二人+周囲の人々との心理劇にある。故に、幽閉の
舞台裏は割とあっさり冒頭部分で明かされていく。なぜ幽閉されているのか、という事に
ついては。7年間の幽閉生活、5年間まったく「ルーム」以外に外界を知らない男の子が
存在できるのかどうか、は心理学専攻じゃないのでよくわからないが、もしそうだとして
その男の子が感じるであろう、驚きや恐怖などが、実に細やかに描かれていく。

結構重いテーマを観る人に投げかけている。特に拉致され犯され、子供を生みさらに
5年間幽閉されたジョイ(ラーソン)の、脱出してからの社会復帰へ向けた精神的苦痛は
見ていて辛いものがあった。

ブリー・ラーソンは本作でオスカー主演女優賞を獲得したのだが、個人的にはジャック役の
ジェイコブ君に主演男優賞をあげたかった位、彼の子どもとは思えないナチュラルな演技は
驚異だ。かわいいと言うより美男子だし、髪を切らずに5年いたので女の子みたいだった。
親子の物語であるが、主演はやはりジャック君だ。

ヒット小説がベースで骨子の面白さは担保されているのだが、とても映像向きの小説で
あるのだな、と想像できる。これを映画化(低予算)したプロデュースの勝利だろう。
この手の映画は単館上映になりがちなのだが、ラッキーにもいつも行くシネコンで上映
してくれたので行って来たが、日曜の朝イチではあったが、小さい小屋の観客はまばら。
早々に終わってしまうだろうなあ。

5年間「ルーム」以外に世界を知らず、この部屋が宇宙であり、テレビで見る人間は宇宙人で
あると信じてきたジャック。ママが結構丁寧に教育したおかげで、その割にはきちんと育って
いた。そのジャックが「ルーム」からの脱出に成功、警察に保護され、ママも保護。

ジャックが目にするもの、例えば最初に出くわす犬を連れた男。本物の犬!そして変な制服
を着た警官!どこまでも広い空!みたこともない木々!たくさんの人!初めて合うジィジと
バァバ! 宇宙とは地球とは、世界とはなんと広く未知なものに溢れているのだろう!という
感激を、次第に減りゆく恐怖とともに吸収していく。よく自閉症にならなかったな、友達と
遊べるようになるなあ、と感心した。ジャックの素直な吸収力、感謝を忘れない心は5年間の
ルームでのママの教育の成果、と言わざるを得ない。
最初のうちはママ、ママと母親離れが出来ない子であったが、それも次第に修正され、実は
無垢なゆえに母よりも社会に馴染む速度は早い。そして母から離れていく速度もまた早い。
そうしたジャックの心理を表現する映像、たとえばベッドから素足で降りるリノリウムの床の
感触のカットとか、がとても上手く演出できていたと思う。

一方ママは7年後の社会復帰で、混乱と不安に苛まれる。行方不明の女性が子供と
長い幽閉期間の果てに脱出、(犯人は逮捕されるのがテレビニュースで流れる)、マスコミや
世間の注目は半端ない。ついに彼女は睡眠薬自殺にまで追い込まれる。

ラスト、ママとジャックは「ルーム」を再び訪れ、ジャックは、家具など一つ一つにサヨナラを
いう。そして「ママもサヨナラを言えば?」と言う。ここに二人の温度差が如実に現れて
いる。「ルーム」を去る二人。未来は決して楽ではないだろうが、明るい青空は広がっていると
胸熱くなり映画は終わっていくのだ。

蛇足だが、ジャックを保護した女性警官が、天窓の付いた納屋をたちまち発見し、ママも
あっさり救出されるところ、とか、「ルーム」が住宅街にあったにもかかわらず、ママは7年間
何らかの脱出のサインを出すことは出来なかったか、とか、簀巻になったジャックが男(父)の
トラックから脱出するところ、犬を連れた男と出くわすシーンでは男(父)の行動がドタバタ
過ぎる、とか、ツッコミはあるけれど、全体に、よく出来た作品だ。
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<ストーリー>
ある日、拉致監禁され、一児の母親となった女性が絶望的な状況からの脱出に挑む姿を
描く人間ドラマ。子役時代から数々の作品に出演し、『ショート・ターム』で注目を浴びた
ブリー・ラーソンが、息子と共に生き延びようとする母親を演じる。
監督は被り物をしたバンドマンを描いた『FRANK フランク』のレニー・エイブラハムソン。

ママ(ブリー・ラーソン)と5歳の誕生日を迎えたジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)は、
天窓しかない狭い部屋で暮らしている。夜、二人がオールド・ニックと呼ぶ男がやってきて、
服や食料を置いていく。
ジャックはママの言いつけで洋服ダンスの中にいる。ママは「息子にもっと栄養を」と
抗議するが、半年前から失業して金がないとオールド・ニックは逆ギレする。

さらに真夜中にジャックがタンスから出てきたことで、ママとオールド・ニックは争う。
翌朝、部屋の電気が切られ寒さに震えるなか、生まれてから一歩も外へ出たことがない
ジャックに、ママは真実を語る。
ママの名前はジョイで、この納屋に7年も閉じ込められていた。さらに外には広い世界が
あると聞いたジャックは混乱する。電気が回復した部屋で考えを巡らせたジャックは、
オールド・ニックをやっつけようとママに持ち掛ける。しかし、ドアのカギの暗証番号は
オールド・ニックしか知らない。ママは『モンテ・クリスト伯』からヒントを得て、死んだフリを
して運び出させることを思いつく。

ママはジャックをカーペットにくるんで段取りを練習させるが、恐怖から癇癪を起こす
ジャック。ママは、“ハンモックのある家と、ばあばとじいじがいる世界”をきっと気に入ると
励ます。しかし、「ママは?」と尋ねられると、2度と息子に会えないかもしれないと知り、
言葉に詰まる。そして、オールド・ニックがやってくる。脱出劇は失敗しかけるが、
ジャックの記憶力と出会った人たちの機転で、思わぬ展開を迎える。

翌朝、ママとジャックは病院で目覚める。ママの父親(ウィリアム・H・メイシー)と母親
(ジョアン・アレン)が駆けつけるが、二人が離婚したことを知ってママはショックを受ける。
数日の入院後、二人はばあばと新しいパートナーのレオ(トム・マッカムス)が暮らす家へ行く。
しかし意外な出来事が次々とママに襲い掛かる。一方、新しい世界を楽しみ始めたジャックは、
傷ついたママのためにあることを決意し……。(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2016-04-10 10:08 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)