彼岸花(デジタル修復版)

●「彼岸花(デジタル修復版)」
1958 日本 松竹映画 118分
監督:小津安二郎  脚本:小津安二郎、野田高梧
出演:佐分利信、田中絹代、有馬稲子、佐田啓二、北龍二、中村伸郎、笠智衆、浪花千栄子、山本富士子他
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<評価:★★★★★★★★☆>
<感想>
NHKBSで放送された、小津作品のデジタル修復版。やはり画が綺麗だ。人物や建物などの
輪郭がくっきりはっきり。それはトップカットの東京駅駅舎のアップですでに分かる。
小津作品としては初のカラー。しかも、全編を通してキーになっている彼岸花の色、赤、朱が
生きるようにと、ドイツのアグファフィルムを使ったという。そのことは冒頭のクレジットでも
明示されている。

この「赤」がキーポイントになっていて、物語を追いかけていくうえで非常に面白いガジェットに
なっている。主人公平山(佐分利信)家の居間の赤いホーロびきと思われる赤いやかんの位置。
最初のうちは画面左の隅、その次は茶舞台の向う、そして娘節子の結婚が決まった席では
茶舞台の前のセンターにと、節子の心理を表現するように移動してくるのだ。

その他にも「朱」は効果的だ、先ほどの居間では、手前の和テーブル、水屋の上のラジオ、
湯のみの受け皿、母清子(田中絹代)の帯。(帯の朱はいろんな登場人物が反復して付ける)
更に、平山の会社の消火器ケース、廊下のカーペット、平山のネクタイの色、料亭では七味入れ、
味の素のキャップ、おわん、椅子にさりげなく置かれた赤いセーターやひざ掛け、などなど
小津が、赤いものの設定に人の心の有様をさり気なく置いている演出が分かる。物語が
動いている時に「朱」が使わているようだ。

また、相変わらずではあるが、小津映画の日本美を強調した画作りは、今更ながら一幅の
画を観るかのようだ。特に日本間の画面では、ふすまや屏風が上手く使われ、奥行きを出し、
ナメの構図を使い、ピントをどこに置くかによって、人物にスポットの当て方に変化を出す、
一部、セイムサイズのカットを繋げる箇所も見られたがそのあたり、小津がこれまでの映画の
語法を破って自らの美学を押し出した箇所として注目した。
セリフは誰が喋っても小津節になるんだなあ・・・。好きだけど。

クルマ好きとしては昭和33年頃に走っていたプリンス、ヒルマン、ダットサンなどの綺麗な
車が出てくる。

さて、映画の本論に戻ろう。昭和33年、東京タワーが出来た年、戦後日本が高度成長に
向けてひた走るスタートラインに立った頃だ。このころ私は小学校に入学。デジャヴを
観ているような光景だ。まだテレビは無く、平山家ではラジオを聞いている。
ただ人間ドックという言葉がこの当時からもうあったとは驚いた。
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小津映画の大きな主題である、嫁に行く(行かせたい)娘と父親との相剋を描いた作品。
他人には自分の好きなように結婚すればいいんだよ、とかいいながら、いざ自分の娘
(有馬稲子)が好きな人と結婚する、という事態になると、俄然頑固になり、式にも
披露宴にも出ない!と「昭和のオヤジ」丸出しの「封建」さ。とりなす母(田中絹代)の
優しさ、支える妹(桑野みゆき)。娘節子はあくまでも自分の意見を通して男(佐田啓二)の
元に嫁ぐが、これには京都在住で家族ぐるみの付き合いの娘佐々木幸子(山本富士子)の
一世一代の大芝居の成果があったのだ。騙されたように娘の結婚を承諾する父、出ないと
言っていた式にも出ることになった。
嫁入りのシーンなどはない。蒲郡での佐分利の中学の同窓会のシーンから京都へ、
そしてオヤジはついに広島の娘の所に行く決意をした・・・。遠ざかる列車の姿で映画は
終わる。余韻を残しながら・・・。

いやあ、いい映画だった。画は綺麗、物語は分かりやすく、昭和生まれには郷愁を呼ぶ
物語、そして豪華なキャスティング。蒲郡の旧蒲郡プリンスホテルの姿も写っていた。
冒頭での友人の娘の結婚式に参加しての帰り、料亭で、佐分利、北、中村と三人で
一杯やるシーンは、「秋刀魚の味」にそっくりなシーンがある。例のひょうたん(東野英治郎)
を呼ぼう相談するところ。この料亭、同じものじゃないかな。唯一、小津らしくなかったカットが
ある。佐分利のオフィスに急に訪ねてきた佐田啓二、最初、前髪が垂れていたのが、
次のアップでは綺麗に撫で付けられていた。あれはちょっと・・・。

小津作品の中でもまた好きな作品が増えた。Blu-rayで永久保存、決定!!

この作品の詳細はこちらまで。
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by jazzyoba0083 | 2016-04-11 23:10 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)