スロウ・ウェスト Slow West

●「スロウ・ウェスト Slow West」
2015 イギリス・ニュージーランド See-Saw Films,DMC Film,Film4,and more.84min.
監督・脚本:ジョン・マクリーン
出演:コディ・スミット=マクフィー、マイケル・ファスベンダー、ベン・メンデルソーン、カレン・ピストリアス他
スロウ・ウェスト Slow West_e0040938_13575175.jpg

<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
短編映画のような短さだが、独特のタッチを持っている西部劇で、なかなか味のある
面白さだった。16歳の少年(だよなあ)ジェイが、恋するローズ(おそらく年上)を追って、英国は
スコットランドからはるばるアメリカにやってきて、出会った用心棒(賞金稼ぎ)であるサイラスと
共にローズを探しながら西を目指すのだが、当然、そこにはいろんなことが起きる。

登場人物が全員飄々としていて、エキセントリックになるところがない。その淡々とした進み
具合と、これまた淡々と終わっていく悲劇が、乾燥した透明度の高い物語を綴る。
----------------------------------------
なんでまたスコットランドの男女がアメリカ西部にいるのか、これまたお話は単純。
ジェイは貴族の息子でありながら、小作の娘ローズ(おそらく年上)を愛してしまった。
ある日、ローズの家にいるところを父に見つかり、小作人に怒った父に対し、ローズの
父がどつくと、転倒した父が岩に頭を打ち死んでしまう。

ローズと父は、新大陸に逃亡する。(う~ん、そんなお金がどこにあったのか、という疑問は
残るが)ローズを深く愛しているジェイは、金に飽かせて大西洋を渡り、ローズを追って
西部に入ってくる。このジェイって少年、ヒョロヒョロの青瓢箪みたいな痩せ貴族なくせに
結構向う気が強かったりする。そんなジェイが山の中で先住民狩りをしていた南部軍の
軍人崩れに殺されるところを、さすらいの賞金稼ぎサイラス(マイケル・ファスベンダー)と
出会う。この男も気がいいのかなんなのかよく判らないやつで、全部で100ドルでジェイの
用心棒を買って出る。

しかし、ローズとその父は2000ドルの賞金首となっていて、彼女らを狙うサイラスのかつて
の仲間の賞金稼ぎなど、結構な数がローズたちを狙っていた。
しばらくローズが賞金首であることを伏せていたサイラスだったが、やがてジェイにも教え、
殺される前にローズを救おうとする。しかし、荒野でいろいろと騙されたり、洪水にあって
銃が流されたりで、困難も襲ってきた。

やがて荒野の一軒家にローズとその父がいることが判明する。まず彼女らを見つけたのは
牧師に化けた賞金稼ぎ。彼は射程の長いライフルで、まず父親を射殺する。しかし、彼の
後ろには数人のかつてのサイラスの仲間の賞金稼ぎがやってきて、偽牧師はあっけなく
殺され、大勢の賞金稼ぎが一軒家に銃を打ち込む。

離れた林にサイラスに縛られてしまったジェイ。サイラスはまず自分がローズを救おうと
銃もないのに家に近づくと、賞金稼ぎらに肩と足を撃たれてしまう。
ジェイは木とロープをこすって縄を切り、銃弾をくぐり抜けてローズのもとに走る。そして
やっとのことで家に入ると、賞金稼ぎが侵入してきたと思ったローズに撃たれてしまう。
ローズは誰を撃ったか気にもせず、押し寄せる男らにライフルや銃で反撃する。先住民の
男でローズを愛していたと思しき男も味方するが、やられてしまう。

やがて、賞金稼ぎのボスが家に入り、ローズを見つける。その時は、ローズがジェイに
気が付き、「おばかなんだから」と言って見つめ合っているところだった。涙をながす
虫の息のジェイ。そこにボス。ジェイは持っていた銃で、ボスを撃ち殺す。そして自分も
絶命してしまう。しかしローズが号泣するわけではない。

ラストシークエンスでは、傷がいえたサイラスと、ローズが、道中で両親を射殺してしまい
行くところが無くなった幼い姉弟と共に生活するシーンが映される。こいつら家族として
生きていく、ということか?
----------------------------------------
まあ、ジェイ君、はるばる海を超え、最愛のローズに巡り会えたと思ったら彼女に殺され、
「ばかなんだから」と言われた日にゃ、やってられないという感じ。でも、ジェイくんの死に顔は
幸せそうであった。

こういう映画なんだが、ある種の不条理なんだろう。ジェイ君が可哀想で仕方がない。
サイラスももっとちゃんとジェイを守らんか、と腹立たしい。そして究極は、ローズは年下?の
坊やなんかそもそも相手にしてなかったのかもしれない。ああ、純情の穢を知らないジェイ君の
悲劇よ!! どこかニューシネマな感じもありつつ現代的はロックな感じもあり、味のある
短い西部劇であった。日本劇場未公開。
スロウ・ウェスト Slow West_e0040938_13581348.jpg

<補足>
2015年のサンダンス映画祭で、ワールドシネマ・ドラマ部門グランプリに輝いた注目作。
開拓時代の米国西部を舞台に、恋人を捜しに来た英国人青年と、孤独を抱えた用心棒が
旅の中で心を通わせていく。「ザ・ロード」のK・スミット=マクフィーが純心な青年を、
「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」シリーズのM・ファスベンダーが謎めいた
賞金稼ぎの用心棒をそれぞれ好演。個性派バンド“ザ・ベータ・バンド”などで活躍した
ミュージシャン出身のJ・マクリーンが長編映画監督デビューを飾った。(WOWOW)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2016-04-18 22:35 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)