スポットライト 世紀のスクープ Spotlight

●「スポットライト 世紀のスクープ Spotlight」
2015 アメリカ Anonymous Content, First Look, Participant Media,and more.128min.
監督・(共同)脚本:トム・マッカーシー
出演:マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムズ、リーヴ・シュレイバー他

<2015年アカデミー賞作品、脚本賞受賞作品>

<評価:★★★★★★★★★☆>
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<感想>
ジャーナリズムの端っこに身を置いた経験のあるものとしてはとても重く、思うところの
多い映画だった。政治のスキャンダルを暴くことは、難しいかもしれないけどそれなりに
意義を捉えられ易いものだが、アメリカという国における宗教・教会の告発は、市民の
生活の中での根付き方が違うし、下手をすると相当な反発と反感を買うだろう、ということは
容易に想像できる。日本とは国民の宗教との結びつきが根っこから違うから、アメリカでも
受け止められ方は、日本とは大きく異なるのだろう。しかも、場所が東部のボストンという街で
ある。
ちょっと昔の実話ではあるが、アメリカという国のマスメディア、特に新聞の実力と影響力に
改めて刮目せざるを得ない。

この実話はアメリカでも全世界でもかなり有名な話であり、何を今更ほじくり返さなくても
いいじゃないか、と横槍も入っただろう。だが、映像で勇気あるジャーナリズムを表現することは
トム・マッカーシーにしてみれば、今だからこそ、「社会の一番タブーに切り込んだ記者たち」の
勇気と覚悟を映画ておきたいと想ったのだろう。

作画に派手さもないし、カソリック神父による児童への性的虐待の話であるが、レイプシーンも
なければ、具体的な虐待のシーンもないし、だいたい教会の中が映らない。しかし、物語は
テンポよくほどほどの緊張感を持って進む。その分会話で持たせるところが多いし
登場人物の名前もたくさん出てくるため、字幕を真剣に追いかけないとよく分からなくなる
恨みはある。ただ、記者たちが覚悟を決めてカソリック教会の隠蔽体質を暴きにかかる所から
一気に物語が動き始め、目が離せなくなる。

カソリックでは神父の結婚が許されていない。聖書の教義にそう書かれているわけでは
ないのだが神父を世襲制にすることなく、一代限りとし、その配属や配転は、司教や
バチカンのコントロールに置くためシステム的に昔からそうなっているわけだ。
だから、男の世界には人間の煩悩を吹っ切れない輩が、「神そのもの」という神父の立場を
利用し、(この映画では、貧しい家庭の子が標的になり、金や脅しで口を塞いでいた)しかし、
12~14歳ほどの少年少女たちへの性的暴行が彼らに残すトラウマは人生を狂わせ、
あるものは自殺し、あるものは麻薬に溺れ、その犯した罪はとてつもなく大きいのだ。
教会内での神父やシスターのいざこざを描いた映画はこれまでに何本も作られてきたが
こうした信徒へのしかも児童への虐待を告発したものは多くない。なぜならば、カソリック
そのものを敵に回してしまうからだ。
事実映画の中でも、政治、警察、司法、さらに、告発をすることになる「ボストン・グローブ」紙
自体にもバチカンの影響を恐れる力が働いていたたのだから。これはちょっと日本では
想像できないだろう。でも記者たちはそれを振りきって丁寧な「調査報道」をし、社会正義に
訴えたわけだ。記者たちの家族がとても協力的だったのが印象に残った。

結局ボストンでは90に近い神父が告発され、教区大司教はバチカンに帰っていく。(字幕では
栄転!のような印象)さらにエンディングでは、これをキッカケに明らかになった全世界の
カソリック神父による幼児への性的虐待が字幕で表記されるがその多さにあっけにとられる。
そして、彼らの活動がピューリツァー賞を獲った、と表記されないのも好感が持てた。
記者たちにしてみれば勇気が必要な部分もあっただろうが、ジャーナリストとして極めて
当たり前の事をしたにすぎないのだ。「新聞を売りたい、部数を伸ばしたい」「賞を獲りたい」
などという姿勢は微塵も出てこず、ひたすら正義に突き動かされる記者たちの姿勢は、徹底的に
情報を足で稼ぐ姿とも相俟って感動的である。そして仕入れた情報も必ず裏を取り、間違った
情報ではないのか、記載に当たっては本人の了解はとれているのか、など記者としての
基本もキチンと描かれていく。そのあたりは大向うを唸らせる画作りはなく地道なエピソード
であるが、とても大事なことで、本作に厚みを与えているといえよう。

エンディングも、告発の紙面が出た後、編集部に架かる被害者からの電話の対応に追われる
記者たちの姿で終わっていき、そこにヒーローを賞賛するシーンはない。これも素敵な
エンディングだった。記者を信じる経営の(出てこないけど)姿勢もまた素晴らしいものだ、
ということが透けてみて来るであろう。

最後になったが、記者たちを演じた、マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・
マクアダムズを初め、「情熱」「抑制」「信用」「推理」「疑義」「怒り」などを抑制された中にも
よく演じきれていた。デスクであるキートンが、記者たちが神父の仕業を見つけて来て
記事にしようとすると、「これは個人ではなく組織を告発しなければ意味が無い」と
繰り返し説得するところが印象であった。
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<ストーリー>
カトリック教会が長年隠蔽してきた児童虐待スキャンダルを暴き出し、ピュリツァー賞に
輝いた調査報道チームを巡る感動の実話を基に、巨大な権力に立ち向かっていった
新聞記者たちのジャーナリズム魂と不屈の執念を描いた実録サスペンス。
出演はマーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、リーヴ・シュライバー、
ジョン・スラッテリー。
監督は「扉をたたく人」「靴職人と魔法のミシン」のトム・マッカーシー。
第88回アカデミー賞では、みごと作品賞と脚本賞の2冠に輝いた。

 2001年、夏。ボストンの地元新聞“ボストン・グローブ”の新任編集局長としてマイアミ
からやって来たマーティ・バロン。さっそく目玉になる記事の材料を物色し、神父による
子どもへの性的虐待事件に着目すると、これを追跡調査する方針を打ち出す。

しかしボストン・グローブの読者は半数以上がカトリック教徒。彼らの反発を招きかね
ないと古参幹部は難色を示すが、地元のしがらみと無縁で、なおかつユダヤ人のバロンは
強気に押し切っていく。
こうして、リーダーのウォルター“ロビー”ロビンソンを中心に特集記事欄《スポットライト》を
担当する4人の記者たちが調査を開始する。そして地道な取材を積み重ね、次第に事件の
背後に隠された巨大な疑惑の核心へと迫っていくが…。(allcinema)

この映画の詳細は< a href="http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=355060#1">こちらまで。
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by jazzyoba0083 | 2016-04-24 12:10 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)