秋日和

●「秋日和」(デジタル修復版)
1960 日本 松竹映画  128分
監督・脚本:小津安二郎 共同脚本:野田高梧 原作:里見弴
出演:原節子、司葉子、佐分利信、岡田茉莉子、佐田啓二、中村伸郎、北竜二、笠智衆、沢村貞子他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
NHKBSで放映中の小津作品デジタル修復版シリーズの1つ。姉妹編のような「彼岸花」
から2年後の作品で、中身はよく似たようなもの、出演者もほぼ同じ、特に、佐分利、中村、
北のトリオはまるで変わらないし、飲みに行く店の女将も同じ配役だ。デジャヴを覚える。
タイトルクレジットの一部を赤文字にしたり、ベースの茶色の布模様まで一緒。つまり
小津は、連作のように捉えていたのだろう。また画面の中にさりげなく置かれた「赤」「朱」の
嗜好も同様だ。 セリフ回しも誰が喋っても小津節となり、画面はローアングルで構えた
カット編集のみ。

シーンの切り替えに使われる山やビル群の中途半端なサイズは、その後に続く、ふすまが
重なる和室のシーンやオフィス、など構図に凝った極めて安定的なシーンが連続することに
より起こるマンネリ感を、一旦敢えて「不安点な構図」で崩す、というような意図があるのでは
ないかと思えてくる。冒頭の東京タワーのサイズからしてそうだ。そういえば「彼岸花」の
冒頭の東京駅のサイズも気持ち悪い構図だった。

この映画にはエピソードがいくつかあり、本作と同様な筋立てだった「晩春」で、嫁に行く
行かないでファーザーコンプレックスのような立場の娘を演じた原節子が、今度は
未亡人の身で娘を嫁にやる母親の立場になる。そして、佐分利の秘書役でちょこっと
出てくる岩下志麻が本作で見出され「秋刀魚の味」では主役に抜擢されるのだ。
同名異曲のような「彼岸花」とはコミカルな要素が岡田茉莉子の存在で強調され、彼女の
「おきゃん」な存在が本作のマンネリっぽさを薄める重要な要素となっている。
当時26歳だった司葉子が美しい。ちなみに原節子は40歳、佐分利51歳、佐田34歳、
岡田26歳、笠56歳、北54歳、中村52歳である。

さて、小津監督がここまで嫁ぐ娘と親(父であり母であり片親の場合多し)の関係をたくさん
描こうとしたのは何故だろうか。同じような展開になるのは見えているのに、である。指摘
されている方も多いだろうが、一番近い血縁者が、自分のところから離れていく、また子は
親を残して他人と生活を始める、というシチュエーションに着目すべきであろう。
昭和30年代の日本ではまだまだ多くの国民の一代関心事であり、本作のセリフの中でも
出てくるが「今時の娘は」「いいんだよ、ああいうのがいても」という節目の時期に当り、
そうした変化していく風潮の中で変わらない美しい日本人のメンタリティの有様を描く事に
強い興味を覚えたのに違いない。別に小津監督の評伝を読んでいるわけでもないので
外れているかもしれないが。

毎度のことだが、佐分利、中村、北のトリオは重役や大学教授であり、暮らしに何の心配も
なく、家にはまだ放送が始まって数年しかたっていないテレビがあり、ゴルフをたしなみ、
銀座のバーに行く。昼はうな重だ。まだまだ庶民には憧れの生活であり、一方で原節子の
暮らしはアパートの2DK。テレビもないし着ている着物は地味だ。そんな対比もまた
観客を映画の世界に遊ばせる設定としてはこの時代、良かったのだろう。若大将シリーズも
そうである。
しかし、似た話、でも観ていると何だかほんわかとしてくる小津作品。私は大好きである。
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<ストーリー>
亡友三輪の七回忌、末亡への秋子は相変らず美しかった。娘のアヤ子も美しく育ち
すでに婚期を迎えていた。旧友たち、間官、田口、平山はアヤ子にいいお婿さんを
探そうと、ついお節介心を起した。が、アヤ子がまだ結婚する気がないというので、
話は立ち消えた。

秋子は友達の経営する服飾学院の仕事を手伝い、アヤ子は商事会社に勤めて、
親子二人郊外のアパートにつつましく暮している。たまの休みに街に出て一緒に
過すのが、何よりのたのしみだった。母も娘も、娘の結婚はまだまだ先のことのように
思えた。

或る日母の使いで間宮を会社に訪ねたアヤ子は、間宮の部下の後藤に紹介された。
後藤はアヤ子の会社に勤める杉山と同窓だった。土曜日の午後、間宮は喫茶店で、
杉山や後藤と一緒にいるアヤ子を見た。後藤とアヤ子の間に恋愛が生れたもの、
と間宮は思った。
ゴルフ場で田口や平山に話すとアヤ子は母親への思いやりで結婚出来ない、という
結論になった。秋子の再婚ということになった。候補者はやもめの平山だった。
息子まで極力賛成されてみると、平山もまんざらではない。秋子を訪ねた田口は、
亡夫への追慕の情たちがたい秋子にとっても再婚の話はもち出せない。アヤ子を
呼んで説得したところ、アヤ子は母は父の親友と再婚するものと早合点して、
母と正面衝突した。

アヤ子は親友の百合子に相談した。百合子は田口、平山、間宮を訪ねると、その
独断を責め立てたので、三人もいささか降参し、アヤ子は、一時は誤解したものの、
母の知らない話だと分ってみれば、和解も早い。これから先、長く一人で暮す母を思って、
二人は休暇をとって、思い出の旅に出た。伊香保では三輪の兄の周吉が経営する
旅館があった。周吉は秋子の再婚にも、アヤ子の結婚にも賛成だった。その旅の夜、
秋子は娘に自分がこれから先も亡き夫とともに生きることを語った。アヤ子と後藤の
結婚式は吉日を選んで挙げられた。間宮も、田口も、平山も、ほっとした。
ひとりアパートに帰った秋子は、その朝まで、そこにいたアヤ子を思うと、さすがに
さびしかった。(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2016-04-25 22:15 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)