君が生きた証 Rudderless

●「君が生きた証 Rudderless」
2014 アメリカ Unified Pictures,Tee Rob Pictures,and more.105min.
監督・(共同):ウィリアム・H・メイシー
出演:ビリー・クラダップ、アントン・イェルチン、フェリシティ・ハフマン、セレーナ・ゴメス他
e0040938_15364395.png

<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
洋画ファンならその顔を見れば、殆どの人が、知っているであろう名脇役、ウィリアム・H・
メイシー。その彼の初監督作品。あの年齢にして初なんだから、この手の映画を長年
撮りたかったのであろう。出来はなかなか良い。エンディングはほろ苦いのだが、単なる
成功譚、ハッピーエンドに終わらせない物語は、ひねりも効いていて脚本の良さも光る。
キャストも地味めではあるが、先日観たばかりの「スポットライト 世紀のスクープ」にも、
弁護士役として出ていたビリー・クラダップを始め、バンド仲間の若い俳優も個性豊かで
良かった。 
そのビリーの演じるサムの息子の死因に半ばでびっくりするわけだが、何故ジョシュという
その息子がなぜあのような行動に走ったのか、が説明不足で、びっくりさせることありき
ではないかと思ってしまった。展開のありようはいいのだが、そこが不満であり惜しい所
だった。説明には時間がかかるであろうが若干上映時間が長くなってもそこをちゃんとした
ほうがもっと良い映画になったのではないか。
e0040938_15371718.jpg

--------------------------------------
広告代理店のやり手アドマン、サム(クラダップ)。大学に通う音楽好きの男の子の父。
妻とは離婚しているものの、裕福な生活を送っていた。その息子ジョシュが大学で
起きた乱射事件で命を落とす。息子の死を受け入れられないサムの生活は荒れ、
2年後には会社も辞め、ペンキ屋の見習いをしながらヨットで寝起きをするという生活
であった。
ある日、別れた妻が2年がかりでやっと遺品の整理をした、家も売りたいから判を押してくれ
とやってきた。ヨットはスペースがないから遺品はいらないというサムだが、元妻はワゴン車
一台分の荷物を置いて行ってしまう。サムはその遺品の中にジョシュが作曲した多くの
CDを見つけ聴いてみるのだった。

街には行きつけのバーがあり、そこでは週に一回、飛び入りの素人ミュージシャンによる
演奏大会が開かれていた。サムは息子の曲を練習し、ある日そこでアコギを使って
歌ってみた。客の反応も大したこともなく、サムはしたたかに酔って家に帰ろうとした。
そこにクエンティンという若者がやってきて、「今の曲は最高だった。ボクもいろんな奴と
演奏したが、あんたの歌には鳥肌がたった」と言って付きまとってきた・・・。
彼は自分と一緒に演奏してみないか、ということだったのだ。若い彼は音楽で生きて
行こうとしていたのだが、引っ込み思案な性格が災いしてドーナツ店のバイトの身から
抜けだせないであがいていたのだ。

最初は再度人前で演奏することは考えていなかったサムだが、クエンティンの情熱に
ほだされて、再び舞台にたってみることに。そこにはクエンティンの友人のドラマーも来て
いた・・・。3人で演奏が始まった・・・。

サムの唄う歌はどれも詩がよく出来ていて、次第にファンが増えていった・・・・。
-------------------------------------
この辺りまでは、世捨て人になったサムがクエンティンという青年と出会い、その人生を
息子の作った歌を唄うことで再生し、また成功していく話か、とそれはそれでいい話だな、
と思って観ていたのだ。(以下、決定的なネタバレを書いていますのでご注意)

e0040938_15361862.jpg

ところが、ジョシュの誕生日に墓参りに行くのだが、その墓には「人殺し」とかの罵詈雑言が
落書きされていた。元妻(ジョシュの母)はここに来てはシンナーで落書きを落とすのだと
いう。サムも手伝って落書きを落とす。ここで、初めてジョシュは大学の乱射事件の被害者
ではなく、加害者だったことが分かる。ここからクエンティンらバンドのメンバーとの間が
決定的に壊れてしまうう。メンバーもジョシュが加害者と知るところとなるのだ。
自分らは殺人者の歌を唄っていたのか!との衝撃からクエンティンは音楽を辞めてしまう。
サムも、騙すつもりは無かったが、話す機会を失ううちにバンドは有名になり、引き返せ
なくなってしまった。バンドのメンバーを巻き込んでしまったのだ。クエンティンにジョシュの
正体と、サムが唄っていたのはジョシュの歌だと告げたのは、ジョシュが当時付き合っていた
ガールフレンドだった。彼女自身もジョシュが起こした事件で人生を狂わされたのだった。

深く思い悩むサム。酒に溺れ、再び自分を失いかけていた。しかし、サムは音楽の才能
豊かなクエンティンという好青年に息子ジョシュの面影を追いかけていたということに
気づき、またそれが自分の行動が他人を巻き込み不幸にしてしまったことを反省し、
クエンティンが楽器店に委託販売を依頼していたギターを買い上げて、ドーナツ店に
行き、謝罪。ギターを置いて「やめたら負けだ」と言い残して去っていった。ギターケースの
中にはクエンティンが欲しくてたまらなかったビンテージもののレスポールが入っていた。

そしてサムはアコギを持ち、例のバーに行き、「私の息子は2年前大学で乱射事件を
起こし5人を殺しました。今から唄う歌は息子が作った曲です」と言って歌い始めたのだった。
クエンティンは再びバンドを始め、サムの代わりのギターの青年も加入したのだった。

結局、サムは本人が気づいたように唄うことで息子を理解出来たという所は良かったのだが
殺人者とは言え、俺の息子だ、という言い訳に隠れてクエンティンとジョシュを混同してしまい、
彼を破滅的自分の人生に巻き込み、また人に迷惑を掛ける生活をなんとも思わない
ジコチュウ中年に成り下がっていたということだ。彼はそれに気が付き、だらしのない生活から
足を洗い、人としてきちんとした人生を送ろうと息子に誓ったに違いない。
辛い人生が待っているのだろうけど、そこから逃げていては何も生まれないと悟ったのだ。
音楽は人を素直にさせる。映画に使われている曲がどれもいい。クエンティンが作った曲も
面白くていい曲だ。監督メイシーも、バーのマスターとして登場する。なかなか非凡な才能が
遅ればせながら開花した、ということだろう。

この映画の詳細はこちらまで。
トラックバックURL : http://jazzyoba.exblog.jp/tb/24337864
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
by jazzyoba0083 | 2016-04-27 22:50 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)