レヴェナント:蘇りし者 The Revenant

●「レヴェナント:蘇りし者 The Revenant」
2015 アメリカ Regency Enterprises and more.156min.
監督・(共同)脚本:アレハンドロ・G・イリニャトゥ 音楽:坂本龍一
出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン、ウィル・ポールター他
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<2015年度アカデミー賞監督・撮影・主演男優賞受賞作品>
<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
改めてイリニャトゥの手腕に唸った2時間半だった。舞台はアメリカ北西部と思しき
雪原。持っている銃から推察するに、いわゆる西部劇の時代よりやや早い時期か。
(資料によれば1823年とある)実在したハンター、ヒュー・グラスの話をまとめた
マイケル・パンクの原作を映画化したもの。

西部開拓の一行は狩猟をしながら皮を作り、稼いでいくハンターの一団だ。ガイド役を
務めるのがグラス(ディカプリオ)と息子のホーク。グラスは狩りの腕前も一流の
凄腕のハンターであった。その彼の身に降りかかる災難をダイナミックに描く。
と書くと簡単だけど、ダイナミックなんて言葉では到底足りない。

「壮絶」という言葉が見ている間頭を巡っていた。それはグラスが一流のハンター
だからこそのシーンだといえる。やはりディカプリオの、どれだけ体を張るの、と
思わせるそれこそ体当たりの演技は、圧倒的だ。
また、シーンというか舞台が雪原しかないので、しかもほとんど色彩というものがない
世界において、2時間半の映像を、飽きさせる事無く描くイリニャトゥと撮影監督
エマニュエル・レベツキ(3年連続受賞)の作画は、逆に雪原だからこその力をもって
観る人に迫ってくる。レベツキの映像は「ゼロ・グラビティ」や「バードマン
(あるいは~)」のように長回しのケレンミ、というようなものはないが、シンプルな
構成の中に観客を引き込む魔法のような画作りは、形容のしようがないほどだ。
確かにグリズリーとグラスの戦い、また馬のはらわたを出してその中に入って夜を
過ごすなどの過酷なシーンでびっくりするところはあるのだけれど、それにしても
目線のつけ方でシーンに引き込む手腕は、なるほどなあ、と唸るしかない。

本作ではインディアン(先住民)との事にも多くの時間が割かれ、復讐は自然の手に、
という彼らの言葉はグラスの心に重く伝わる。ラスト、先住民も現れて、グラスの
復讐は完結するのだが、ラストシーン(ラストカット)で、グラスがカメラ目線に
なる(と私は感じた)のだが、息子や隊長の復讐を遂げても、息子は帰ってくるわけ
ではなく、先住民の言うように復讐は自然の手に委ねたのではあるが、それでグラスの
心は満たされたのか、映画を観ているあなたはどう考えるのだ、と問うているような
目線だった。あの厳しい自然と闘い抜いた力は、息子を愛する力、ということになる
のだけれど、その愛情の(執念ともいえる)力の凄さにも括目せざるを得ないわけだ。

またラストシークエンスは原作者やイリニャトゥの先住民に対する
敬意のようなものを感じたのだった。

まあ、またこの作品で、個人的年度ナンバーワンは決まったかなあ。

※ 2016 6月4日(土)ホノルルからセントレアに帰国の機内で、復習のため鑑賞。
   凄さを再確認した。上記に書いた初見の感想は間違っていないなと。
   2度めとなるとカメラワークやアングルなどにも注意を払うことが出来、他重層的な
   完成度の高さを誇る作品であることが分かったのだった。

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<ストーリー>
 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のアレハンドロ・G・
イニャリトゥ監督がレオナルド・ディカプリオを主演に迎え、過酷な大自然の中で
繰り広げられるひとりの男の壮絶な復讐劇を壮大なスケールで描いたサバイバル・
アクション・アドベンチャー。
共演はトム・ハーディ。第88回アカデミー賞では監督賞、撮影賞に加え、極寒の
大自然を相手に体当たりの熱演を披露したレオナルド・ディカプリオが、みごと
悲願の主演男優賞を初受賞した。
 
 1823年、アメリカ北西部。狩猟の旅を続けている一団が未開の大地を進んでいく。
ヘンリー隊長をリーダーとするその集団には、ガイド役を務めるベテラン・ハンターの
ヒュー・グラスとその息子ホーク、グラスを慕う若者ジム・ブリジャーや反対に
グラスに敵意を抱く荒くれハンターのジョン・フィッツジェラルドなどが一緒に
旅をしていた。

ある時、一行は先住民の襲撃を受け、多くの犠牲者を出す事態に。混乱の中、
グラスたち生き残った者たちは船を捨て陸路で逃走することに。そんな中、グラスが
ハイイログマに襲われ、瀕死の重傷を負ってしまう。ヘンリー隊長は旅の負担になると
グラスを諦め、ブリジャーとフィッツジェラルドに彼の最期を看取り丁重に埋葬する
よう命じるのだったが…。(allcinema)

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by jazzyoba0083 | 2016-05-05 14:10 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)