2016年 05月 23日
フレンチアルプスで起きたこと Force Majeure
2014 スウェーデン・デンマーク・フランス・ノルウェー Motlys and more.118min.
監督・脚本:リューベン・オストルンド
出演:ヨハネス・バー・クンケ、リーサ・ローヴェン・コングスリ、クリストファー・ヒヴュ、クララ・ヴィッテルグレン
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
いかにも欧州的、カンヌ的な作品。シニカル・コメディーというのか、観ている方が
身につまされる。この映画を観た人は全員、「もし自分があの立場だったら・・・」と
考えないわけにないかないだろう。
キッカケは簡単だ。仕事人間のお父さんが、フレンチアルプスにあるスキー場に
4泊?の日程で「家族サービス」ということで、一家(妻と小さいこども二人)で
スキーを楽しみに来た。 久々の家族旅行ということで皆気分は高揚していた。
ところが、ヒュッテのレストランでランチを楽しもうとした時、人工で発生させた雪崩が
なんと、レストランの方に流れ込んできた。大騒ぎになるレストラン。
そこで家族にも事件が起きた。父親トマスは、家族をほっぽり出して一目散に逃げ出して
しまったのだ。妻は子供を守ろうとその場に留まった。幸い雪崩はレストランの手前で止まり、
大したことは無かったのだが、この家族には非常にまずい状況を産んでしまったのだ。
家族を守らず逃げた父。妻や子どもたちとの間に気まずい雰囲気が流れる。妻に
「逃げたでしょ」と問われると、トマスは「逃げてないって。スキーブーツじゃ走れない
だろう」と反論。しかし妻は納得しない。ボディタッチなどで何とか状態を打開しようと
する夫だったが、妻の不信は容易に溶けない。さて、どうしたものか。
こういう事態って、雪崩という形ではないが、ありがちなことだ。映画を観ている人も、
自分だったら家族を守るだろうか、また本能的に逃げたとして、そのことを素直に詫びる
事が出来るだろうか、そう考えてしまうだろう。
誰かに話さなくては収まらない妻は友人夫婦に別の話題の腰を折って、雪崩事件の話を
し始める。何もこんなところでしなくても、と夫も観客も思うだろう。更に話掛けられた
友人もどう返事すべきか悩んでしまう。更には、この夫婦の間でも、妻が「あなたは逃げそうね」
とかいうもので、こっちにも気まずさが伝染する・・・。
次第に自己の全人格否定に陥ってしまう夫。「何でもかんでも俺が悪いんだ」と。
作戦かもしれないけど。さすがの妻も泣き出す夫に動揺を隠せない。子供らも
泣き出すパパにすがりつく。
10年近く寄り添いあってきた夫婦の、これも良くある光景だが、何となくグズグズな中に
夫婦の中は修復されていく方向に向かう。そして、最後のスキーの日、霧の中で滑走を
始めた親子だったが、母が一人ハグレてしまう。必至に探す夫。待つ子どもたち。そして
霧の中から妻を担いだ「たくましい」父の姿が現れたのだ・・・。(これは妻が夫の威厳を取り戻す
為に子供の前で仕組んだ演技だな)
些細なこと(でもないけど)夫婦がお互いに何を考えているのか分からなくなる、という心理を
巧みな会話、友人夫婦も巻き込んだ設定で、徹底的に赤裸々にえぐり出していく。
気分爽快な映画ではないけど、会話に耳を側立ててしまうような作品なのだ。
見る人には反省と共感を与えるだろう。妻役の女優さんの小憎らしいような表情、いかにも
いい人タイプの夫を演じた男優さん、結婚した夫婦といえども腹の中では何を考えているのか
判らないという夫婦を上手く演じていたと思う。
最後のバスの下車のシーンはどう解釈すればいいのだろう!? 重い余韻を引きずる映画で
ある。編集、また室内の会話のシーンにいきなりドローンが飛び込んできたりすることろなど
うまい構成で、また気まずくなってからのエピソードがいちいち「あるある」で、笑えるというか、
笑えない。
ただセリフ劇の側面が大きいので時間がもう少し短縮したほうが締まったのではないか。
<ストーリー>/b>
お披露目となった2014年のカンヌ国際映画祭で評判を呼び、その年の全米賞レースを
席巻するなど世界的に話題を集めた北欧発のシニカル・コメディ。アルプスの高級リゾートに
バカンスにやって来たスウェーデン人一家を主人公に、父親のとっさの行動が引き金と
なって家族の絆に思いがけない亀裂が生じていくさまとその顛末を、辛辣な眼差しで
赤裸々かつユーモラスに描き出す。監督はスウェーデンの俊英、リューベン・オストルンド。
フレンチアルプスの高級リゾートにスキー・バカンスにやって来たスウェーデンの一家4人。
いつも仕事で忙しい父親のトマスは、ここぞとばかりに家族サービスに精を出す。
ところが2日目、テラスレストランで昼食をとっていた一家を不測の事態が襲う。
スキー場が起こした人工雪崩が、予想を超えた規模に成長しながらテラスへ向かってきたのだ。
幸い大事には至らなかったが、その時トマスは、妻と2人の子どもを置き去りにして、
自分だけで逃げ出してしまったのだ。何事もなかったかのように、その場を取り繕う
トマスだったが、妻のエバはおろか子どもたちの目もごまかすことはできなかった。
以来、家族の中には不穏な空気が漂い、楽しいはずのバカンスが一転して息詰まる
修羅場の様相を見せ始め、次第に追い詰められていくトマスだったが…。(allcinema)
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