2016年 06月 27日
カルバラ~イラク戦争・奇跡の四日間~ Karbala
2015 ポーランド・ブルガリア Miramar Film,Next Film.116min.
監督・脚本:クシシュトフ・ウカシェヴィッチ
出演:バルートミェイ・トパ、アントニー・クロリコフスキー、不リスト・ジョポフ、ミハウ・ジュラフスキ他
<評価:★★★★★★☆☆☆>
<感想>
イラク戦争を扱った映画は「アメリカン・スナイパー」を始めとして優れた作品も多い。
本作は、劇場未公開ながら、ポーランド製ということもあり、注目されなかったが、
なかなかいい出来だったと思う。映画の焦点が、「戦争の虚しさ」という抽象的なもので
あったため、人物描写が今ひとつ弱くなっている点が惜しいというか、見方に注意が必要か。
この話が実話をベースにしているとう点も注目しなくてはならない。描き方という側面でも。
しかし、戦闘シーンを始め、リアリティを持って迫るアフガンの日々は、よく描けている。
そして、4日間の必死の戦闘を生き抜いてきた兵士らに待っていたのは、アメリカ軍の
方針により「イラク軍の手柄にしよう。」つまり、ポーランド軍とブルガリア軍の死闘は
記録的には無かったことになったのだ。まあ、戦争の虚しさ、バカバカしさもここに
極まれり、という感じだ。
イラク戦争の多国籍軍にはオーストラリア、カナダ、韓国、デンマークなどの国々が
参加していたのは知っていたのだが、ポーランドやブルガリアという東欧の国々が
おそらくNATO軍、あるいは「集団的自衛権」により参加を余儀なくされた事実は
寡聞にして知らなかった。彼らに取っての戦闘参加は相当いい報酬にはなっていた
ようだ。それも貧乏な村から来る兵士のことを考えると、いたたまれない。
ブッシュの見当違いの戦争で、多くの命が失われ、いまだに解決していない。
本作では戦争の大義という側面で描くのではなく、そもそも大義なんてないなんだか
わからない戦闘に駆りだされ、殺さないと殺されてしまうからという、兵士レベルの
戦いとして、戦争の不条理を浮かびあげている。
冒頭に傷ついた戦友を助けろ、という命令を怖くて聞けなっかった新米衛生兵、その
舞台を率いる中尉や大尉、イラク人警官とその娘、いろいろな人物にスポットが
当てられるが、戦争は虚しい、という表現のコマとして機能していて、その人柄を
描くものではないので、素材として見ておく、というのが正解な見方なのだろう。
数あるイラク戦争のエピソードを描いた映画の中でもお勧めできる秀作といえるだろう。
<ストーリー>
米軍が主導したイラク戦争の“イラクの自由作戦”にはポーランド軍の兵士も2500人が
参戦したが、2004年、イラク中部にあるイスラム教シーア派の聖地カルバラの町では
ポーランド陸軍らの兵士たちが武装した民兵たちに完全包囲され、全滅の危機に
さらされた……。
知られざる実話をアクション満載で迫力たっぷりに再現した力作。出演は日本映画
「杉原千畝 スギハラチウネ」にも出演したM・ジュラフスキら。WOWOWの放送が
日本初公開。
2004年。ポーランド陸軍の若い衛生兵グラドは、イラクのカルバラに赴任する。
だが現地では多国籍軍を嫌うイラク人たちが武装し、一触即発の状態にあった。
カルバラ市庁舎にいたポーランド陸軍とブルガリア軍だが、イラクの民兵たちに包囲され、
たちまち激しい銃撃戦が起きてしまう。交代部隊も足止めされ、ポーランド陸軍らは
残り少ない弾薬と食料だけで孤立する事態に。グラドはあることをきっかけに隊と
はぐれてしまい……。 (WOWOW)
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