野火 Fires on the Plain

●「野火」
2015 日本 海獣シアター 87分
監督・脚本・製作・撮影・編集・主演:塚本晋也  原作:大岡昇平
出演:塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也、森優作、中村優子他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
原作は大岡昇平の戦争文学の傑作。そして1959年には市川崑監督、和田夏十脚本で
映画化もされ、評価が定まっている作品。これをほとんどインディーズのノリで
構想20年という塚本晋也が製作した。昨年のキネ旬年間ベストの2位にランクされて
いる。

原作は未読、市川版も未見という状態で、しかも塚本晋也という人をまるで知らない
状態での鑑賞となった。故に主役が塚本本人で、リリー・フランキーがどこに出てきた
のかすら分からなかった。★が8つだが、1つは塚本氏が「今」これを製作したという
気概に進呈したい。

本作が訴えるところ、というのは映画をみれば直截的に伝わってくる。戦争という
ものはかくも人間性を崩壊させるのだ、ということ。このコメントを書くにあたり、
どういう評判が本作に対してあるのか、ちょっと見させてもらった。
その中で、印象的だったのが、大林宣彦監督と塚本晋也監督の対談で、
大林監督曰く「戦争映画を見て感動などしてほしくない。この映画を見て辛かった。
そこが良かった。カタルシスを得るような戦争映画は絶対に作って欲しくない」という
コメントだ。本作を観て、痛い、辛い、気持ち悪い、残酷だ、不条理だ、とマイナスな
感情を持てたのなら、正しい観かたとして塚本監督の言いたいところが伝わった、
また大岡原作の言わんとすることころが伝わった、ということだろう。

戦争を極限状態に置かれた一兵卒の目を通して物語り、そこで当たり前の如く
生と死を見つめつつも、戦場ならではの様々な葛藤と諦観に苛まれる様が「個」の
レベルで上手く表現出来ていたと感じた。

塚本監督は本作を作るにあたり「原作の追体験をしたかった。(主役を演じたことも)
作品を観る人にも、戦争というものはこういうふうになる、ということを追体験して
欲しいと思う」と語っている。そして、時代がきな臭くなり始めている「今」だからこそ
作りたかったし、観て欲しいとも語る。その心意気に賛同したい。

ただ、本作には原作にある聖書の世界という宗教性と、カニバリズムを拒否する
ことから、全ての草木にさえ命があると考えてしまった主人公が、何も食べられなく
なる、というところが省かれている(らしい。原作未読故未確認)それらが加えられたら
どういう感じになっていたのか、観てみたいところでもあった。

市川版の予告編を観たのだが、おそらくロケは国内だろう。塚本版はフィリピンに
ロケし、あの熱帯のジャングルと太陽、そして残酷な人間どもに対比される美しい
自然、その部分は塚本版カラー作品の方が圧倒的にモノを語っていた。

落ち込む映画であるが、そこが狙いである。「今」観て欲しい映画の一つである。
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<ストーリー>
大岡昇平の同名戦争文学を「六月の蛇」の塚本晋也が監督兼主演で映画化。
第二次世界大戦末期のフィリピンを舞台に、肺病を病んで部隊を追い出され
一人彷徨う兵士の姿を描く。
共演は「そして父になる」のリリー・フランキー、「蘇りの血」の中村達也、
オーディションで選ばれた新人・森優作、「ギリギリの女たち」の中村優子、
「童貞放浪記」の山本浩司。

第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。日本軍の敗戦が色濃くなった中、
田村一等兵(塚本晋也)は結核を患い、部隊を追い出されて野戦病院行きを
余儀なくされる。
だが負傷兵だらけで食料も困窮、少ない食料しか持ち合わせていない田村は
早々に追い出され、再び戻った部隊からも入隊を拒否される。行き場を失い、
果てしない原野を一人彷徨う田村。空腹と孤独、そして容赦なく照りつける
太陽の熱さと戦いながら彼が目撃したものは、想像を絶する地獄絵図であった……。
(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2016-08-02 22:30 | 邦画・新作 | Comments(0)