ニュースの真相

●「ニュースの真相 Truth」
2015 オーストラリア・アメリカ Sony Pictures Classic,RatPac Entertainment,and more.125min.
監督・脚本・(共同)製作:ジェームズ・ヴァンダービルト
出演:ケイト・ブランシェット、ロバート・レッドフォード、トファー・グレイス、エリザベス・モス、
ブルース・グリーンウッド、デニス・クエイド他
ニュースの真相_e0040938_12053693.jpg
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
主人公らと同じ環境に身を置いたものとして、少しバイアスが掛かっているかもしれないが、面白くそして
重く観た。快いエンディングではない。観るものに重いものを投げかけて終わる。アメリカでは有名なマス
メディアスキャンダルであったし、日本でも相当騒がれたので、事件そのものをご存知の方も多かろう。

確かに、主人公メアリー・メイプスやダン・ラザーその他、CBSテレビ「60ミニッツ」のスタッフの詰めの
甘さは指摘されても致し方ないことだろうが、なぜ「ニセの文書」が出てきたのか、ラスト近くの第三者委員会で
メアリーがいみじくも指摘している通り、ブッシュの身辺や軍制に十分詳しい人間でなければ書けない
「ニセ文書」が何故、出てきたのか、という本筋が置いて行かれ、結局ブッシュは二期目をやることになり、
あの3.11が起きるわけだ。
個人的にはリベラルなCBSを嫌うニクソン~ブッシュの共和党勢力の陰謀のような気がするのだが。

本作に描かれているメディアが持つ、あるいはメディアを囲む脅威は、アメリカだけではなく、我が国でも
また全世界に存在する。本事件が起きた時よりも更に劣化するマスメディア、そしてメディアがコングロマリットの
傘下に入ることにより、親会社が株主の顔色を伺い、また現場がその上司を忖度する、という本来、独立して
いなくてはならない報道の主体が脅かされているという現状を、本作は叩きつけている。
アメリカには現在CBS,NBC,ABC,FOXという大きなネットワークがあるが、そのどれもが何がしかの企業グループの
傘下に入っていて、報道現場は常にこの映画のような脅威に晒されていると容易に想像出来る。
この映画のTVスポットCMをCBSが断ったそうだが、内容を見れば、CBSの上層部が親会社(当時はVIACOM)、
政権、スポンサー、ネットの声などに屈して問題の本来の姿を隠してしまった、との指摘なわけで、これでは
CBS側は納得しないだろう。

登場人物が多く、相関関係がややこしいのでその辺りに多少手こずるだろうが、セリフが多く、シーンが
ダイナミックに転換出来ないこの手を映画を、元来脚本家であったヴァンダービルトは、サスペンスの
フレイバーも投入し、手堅くまとめて見せた。時制を時間を追って設定したのも良かった。

一方、演技陣だが、特ダネを掴んだと思ったのも束の間、仕込まれた?偽文書に罠に嵌っていき、結局CBSを
解雇されるメアリー・メイプスを演じたケイト・ブランシェット、そして著名なアンカーマン、ダン・ラザーを
演じたロバート・レッドフォードを始め、CBSの同僚や上層部、特ダネの周辺にいる人物など渋いが落ち着きを
持ったキャストを配し、物語が上手く浮き上がるようになっていたと感じた。

メアリー・メイプスについては、視聴者を欺いた、という点で今でも毀誉褒貶はある人物で、本作公開に当たっても、
新聞を始めとするメディアの批評は必ずしも甘くはない。それは本作がメアリーを責めるようには出来てないからだ。
特に保守層、共和党支持層からは辛い評価となるだろうことは想像に難くない。
だが、全体に問題の存在を提示し、この天下の大誤報事件を単なるメディアスキャンダルではない、とのニュアンスで
まとめ上げたのは評価すべきではないか。見終わった人は、メアリーのやったことは彼女が受けた罰に相応だが、
事件の本質がすり替えられた、という点に問題がある、と理解出来るはずである。
ちなみに、アメリカの映画批評サイト、IMDbは6.8,RottentomatoのTomatometerは6.2である。
ニュースの真相_e0040938_12100506.jpg
<ストーリー>
米大統領への再選を目指すジョージ・W・ブッシュが父親の力を使って兵役を怠ったという一大スクープを
報じるも、偽造と疑われ、“21世紀最大のメディア不祥事”と言われた実在の事件の裏側を描くドラマ。
ケイト・ブランシェット、ロバート・レッドフォードら実力派が多数共演し、真実を追うジャーナリストたちの
姿を映し出す。

ジョージ・W・ブッシュ米大統領が再選を目指していた2004年。アメリカ最大のネットワークを誇る
放送局CBSのベテランプロデューサー、メアリー・メイプス(ケイト・ブランシェット)は、伝説的ジャーナリストの
ダン・ラザー(ロバート・レッドフォード)がアンカーマンを務めるニュース番組でブッシュの軍歴詐称疑惑を
裏付けるスクープを報道、アメリカ中にセンセーションを巻き起こす。
しかし、新証拠を保守派のブロガーが偽造と断じたことからCBSは激しく糾弾される。同業他社の批判報道も
とどまるところを知らず、ついにCBS上層部は事態の収束を図り、内部調査委員会の設置を決定。
だがそのメンバーにはブッシュに近い有力者も含まれていた。やがて、肝心の軍歴問題は取材打ち切りとなり、
もはや疑惑は存在しないも同然となってしまう。圧力に屈することなく、真実を伝えることを使命とする
ジャーナリストとしての矜持と信念を示すため、メアリーは委員会との闘いに臨むのだが……。
(Movie Walker)
ニュースの真相_e0040938_12103234.jpg
               (ダン・ラザー本人(左)とメアリー・メイプスから話を聞く主役陣)
この映画の詳細はこちらまで。

by jazzyoba0083 | 2016-08-10 11:30 | 洋画=な行 | Trackback | Comments(0)