プラトーン Platoon

●「プラトーン Platoon」
1986 アメリカ Hamdale,Cinema 86.Dist.Orion Pictures.120min.
監督・脚本:オリヴァー・ストーン
出演:チャーリー・シーン、トム・ベレンジャー、ウィレム・デフォー、ケヴィン・ディロン、フォレスト・ウィティカー他
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                 <1986年度アカデミー賞作品、監督、音響賞受賞作品>
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

年間200本近く映画を観るが、(殆どがWOWOWだが)ここ10年ちょっとのことだけに
クラッシックをちゃんと観ていないウラミがある。
本作などを含むオリヴァー・ストーンの諸作についてはリリースされているものは必ず観るように
しているし、「JFK」のような社会派映画は好きなので監督の名前でなくても鑑賞するのだが、
本作は抜けていた。監督は違うが同じヴェトナム戦争をテーマにした「地獄の黙示録」も、ちゃんと
観ていない。

というわけで、WOWOWが放映してくれた本作、録画して観た。ストーン監督の、まだ監督としての
キャリアが浅い時代の作品であるが、当時40歳と油が乗った時期に製作され、作品は粗っぽさを残すが
勢いと、訴えたいところの直接生が濃いことを感じた。
ストーン監督は実際にヴェトナム戦争に従軍しており、その経験に基づき映画が作られているだけに
実際戦争を経験した者でなければ描けない世界がそこにはある。その力強さは圧倒的である。

プラトゥーンとは軍隊の編成で「小隊」を表すのだそうだが、その小隊に配属された、大学を中退した
白人の青年の目を通したヴェトナム戦争を描く。
この戦争を戦っている兵隊は、お金と職業を得るために軍隊に来ている貧しい黒人やヒスパニックが
主流で、そのことに憤った白人青年が義憤から志願して戦場に来たまでは良かったが、実際の
戦争は頭で考えるよりも非人間的であり、過酷であることを体験、その中から戦争の愚かしさ、
悲惨さを訴える。人間性の崩壊が戦場では当たり前の世界であることが何より恐ろしい。これは
先の大戦で多くの国の軍隊が経験したことと同じ。戦争とは時代を超えて、残虐で愚かなものなのだ。

小隊の中の二人の軍曹、すなわちトム・ヴェレンジャー扮する人間性崩壊の戦争のプロともいうべき
鬼軍曹バーンズと、もう一人、人間性を残すウィレム・デフォー扮するエリアス軍曹。
そして小隊に配属されている様々な人種の兵隊たち、さらにそこに加わる新兵、チャーリー・シーン
扮するテイラー。新兵はチャラチャラしていてジャングルの行軍中に吐いてしまうようなお坊ちゃん。
本作は彼の目を通して戦争が語られるのだが、狂気に吐き気を覚えつつ、自らもマリワナをやり
正義のためと思い味方を殺すという行為に及んでいく。
当時まだ新人レベルである俳優たちがフィリピン・ルソン島のジャングルで、皆いい感じである。
完璧主義のストーン監督らしい、細部にも拘った作りが映画の主張をバックアップする。
監督本人も言っているように、画作りには黒澤映画の影響が見られる。

監督は3年前に広島を訪れるほど、反核反戦の人、というイメージだが、本人も言うように
ヴェトナムへ行くまでは極めて保守的な人間であったようだ。ところが本作の新兵テイラーのように
大学をやめて陸軍に入りヴェトナムへ赴き、空挺部隊という危険な部署に入り、実際の
戦争を体験すると、国のやっていることの愚かさに気づき、その後、反体制というより、国の
行う愚かなことと、真実の追求に声を上げ始める。その力がこの後「7月4日に生まれて」を製作させる。

広島に来た折にインタビューに応えた監督は「戦場に行ったこともないような奴が語る愛国主義には
吐き気がするよ」と語るように、監督のヴェトナム戦争体験は決定的だったようだ。
そしてさらに、「日本人は何故もっと反戦・反核に積極的にならないのか。声を上げる政治家も
いない」と指摘する。

「戦争は勇ましくカッコイイものではない」とする監督の主張は先日観た塚本晋也版「野火」に
対する大林宣彦監督の「戦争映画を観て感動などして欲しくない。カタルシスを得るような
戦争映画は作って欲しくない」と言っているところと通底する。

この手の映画を観るとき、いつも思うのだが、国の負の部分もえぐり出す映画を作りヒットする
国の健全性、そしてそれに賞を与えるアカデミーの凄さ。観てよかった映画である。
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この作品のストーリーなど詳しいことはhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=20373#1こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2016-08-20 22:50 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)