駆込み女と駆出し男

●「駆込み女と駆出し男」
2015 日本 松竹 143分
監督・脚本:原田眞人 原作:井上ひさし『東慶寺花だより』
出演:大泉洋、戸田恵梨香、満島ひかり、内山理名、陽月華、キムラ緑子、樹木希林、堤真一、山崎努他
e0040938_15564831.jpg
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

いい映画だった。井上ひさしさんの原作とは知らず、もっとふざけたコメディっぽいものか、と
思っていたのだが、なんのなんの、井上文学をよくここまで映像化したな、と感服した。
プロデューサーに井上ひさしさんの三女麻矢さんの名がクレジットされているので、原作が持つ
ニュアンスは大切にされたと思う。それにしても15本の連作である原作をよくここまでの脚本に
仕立てあげたな、と原田眞人監督の筆力にも改めて驚いた。しかも原作が持つ味わいを失わず。
俳優陣も井上ワールドを体現するのに十分であった。大泉洋の戯作者ぶりが良かったし、戸田、
満島の二人も好演、また樹木希林、堤真一、陽月華、キムラ緑子、麿赤兒らのキャストも上手く
ハマっていた。それぞれのキャラクターが光っていたと思う。

加えて鎌倉の四季を織り込んだ映像は原田監督のコダワリが見えてカット割りからアングル、動き
まで工夫が凝らされていて美しく、様式美的な構成も綺麗である。ただ、江戸時代の言葉使いや
風俗や文学に関した単語などが物凄い勢いでセリフとなるので、理解するのが難しいという
難点がある。私は字幕付きで観た。響きとして耳に入ってくる単語も活字になるとまた細かい
ニュアンスがすっと入ってくるものだ。冒頭3分くらい観て、何言ってるんだかよく分からない、と
おもった方は迷わず字幕付きで観たほうがいい。それだけ井上ひさしさんの言葉使い、言葉遊び、に
忠実になろうとすると仕方のない事かもしれない。故に原作を読んだ見たくなる人も多かろう。
私もその一人だ。井上さんの著作は好きで結構読んではいるが、晩年の著作については縁遠くなって
しまったので、もう一度アプローチしてみたいなと思ったのだ。

さて映画だが、老中水野忠邦と、その忠実な配下であった南町奉行鳥居耀蔵による奢侈禁止を
謳った「天保の改革」の世。医師見習いにして戯作者希望の中村進次郎(大泉)の目を通して
見た、鎌倉の駆け込み寺「東慶寺」とその御用宿である「柏屋」で起きる縁切りの顛末を女性側からの
視点で綴る。主たる話の主は、練鉄(砂金を集めてフイゴで熱し鉄を作る)屋の女房、じょご(戸田)。
亭主は女遊びにうつつを抜かす。そしてじょごと一緒に東慶寺に飛び込むことになる、唐物問屋の
妾、お吟(満島)。さらに東慶寺の院代、法秀尼(陽月華)。そして進次郎。天保年間の風俗文化や
時代の雰囲気、尼寺の日常なども散りばめて背景もしっかりと描き上げて飽きることのない143分で
あった。日本アカデミー賞でもっと賞を獲っても良かった作品と思う。ただ一般受けするかというと
なかなか難しいかもしれない。一部紹介にあるが「コミカルな時代劇」というくくり方は当たらない。
井上文学の洒脱さ(「徒(あだ)」の定義や、「素敵」という言葉の使い方などが出てくるのを
初めとして)と原田監督の美学を解すべき作品である。
e0040938_15560417.jpg
<ストーリー>
井上ひさしの時代小説『東慶寺花だより』を原案に、江戸時代の縁切寺、東慶寺で繰り広げられる離婚を巡る
悲喜こもごもを描いた人情時代劇。主演は大泉洋、共演に戸田恵梨香、満島ひかり、樹木希林、堤真一、山崎努。
監督は「クライマーズ・ハイ」「わが母の記」の原田眞人。

 時は天保十二年(1841年)、質素倹約令が発令され、庶民の暮らしに暗い影が差し始めた江戸時代後期。
この時代、夫が妻と離縁することは容易だったが、妻のほうから離縁することはほぼ不可能だった。鎌倉の尼寺、
東慶寺は、そんな妻たちの離縁を可能にする幕府公認の縁切寺。寺に駆け込み、2年を過ごせば離婚が成立した。
駆け込み女たちはまず御用宿に預けられ、そこで身元の調査が行われる。戯作者に憧れる見習い医師の信次郎は、
江戸を追われ、そんな御用宿のひとつ、柏屋に居候することに。そして、叔母である柏屋の主人、三代目源兵衛の
離縁調停を手伝い始める。そんなある日、顔に火ぶくれを持つじょごと、足を怪我したお吟が、東慶寺に駆け
込んでくるが…。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=350112こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2016-09-05 23:30 | 邦画・新作 | Comments(0)