The Beatles:Eight Days a Week-The Touring Years

●「The Beatles:Eight Day a Week-The Touring Year」
2016 アメリカ Apple Corps,Imagine Entertainment and more.Disributor in Japan:Kadokawa 140min.
監督・(共同)製作:ロン・ハワード
出演:ザ・ビートルズ、ポール・マッカートニー、リンゴ・スター、ウーピー・ゴールドバーグ
   シガニー・ウィーバー、エルビス・コステロ他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
 事前にお断りするが、私はビートルズは大好きではあり、たくさんの映像やCDを持っているが、
いわゆる「ビートル熱(マニア)」ではない。
これまでにビートルズの評伝映像はいろいろあったし、節目でテレビも放映されていた。今年は
ビートルズ来日50周年ということで日本でもいろいろとイベントが多い。
 本作はアップルレコードが公認した「レット・イット・ビー」以来の映画という。監督を務めた
ロン・ハワードは私と同じ年。ビートルズが熱狂と共に誕生してきたのを支えたのはベビーブーマー
世代だから監督はやや時代が下がる。しかし彼らが大好きなのだろう。作品にビートルズに対する愛情を
感じる。
今回映画を観ていてビートルズとほぼ同じ時代を生きることが出来て本当に良かったと感じた。
前半の30分を観ていて、彼らの音楽の素晴らしさに涙が出てきてしまった!

ドキュメンタリー映画が110分、エンドロールが終わってから30分はビートルズ二度目の全米ツアー
から史上初のロックバンドによる野球場使用となったニューヨーク・シェイ(シェア)スタジアムの
ライブ映像をこの映画のために4Kデジタルリマスタリングし、音もアビーロード・スタジオでデジタル・
リマスタリングされたものが上映される。

ビートルズの誕生から、アップルスタジオでの有名な屋根上ライブまでの怒涛の数年間を時系列的に
並べ、関係者やファンである映画俳優のインタビューが挿入される。もちろんポールやリンゴの
証言も新たに取材されている。

リバプールの労働者階級の子供だった仲良し三人がバンドを組み、やがてリンゴが加わり、歴史的な
ロックンロールバンド、ザ・ビートルズが誕生した。1962年のレコードデビューから、最も忙しかった
1964~66年を厚くして、彼らの音楽や考え方の変遷を世界の情勢の変化とともに構成する。
きわめてオーソドックスで静止画の画像にたばこの煙をCGで追加するなどの演出はあるが、奇をてらわない
作りとなっている。
 彼らのライブを中心とした音がたくさん聴かれるのだが、今なお全く古さを感じさせない彼らの
音楽に改めてその凄さと偉大さを感じた。多くのバンドの常であるように、最初は田舎の屈託のない
素直な青年たちが、無邪気に自分たちのやりたい音をやりたい風に演奏し歌った。その純粋さは、他人の曲も
多く歌っているように、またレノン・マッカートニーの作風もどこか無邪気で無思想であるように、聴く方も
素直に曲と対峙することができる。プロデューサー、ジョージ・マーチンの存在も大きい。
 
 しかし、熱狂の渦の中に巻き込まれ、世の中の欲の皮の突っ張ったやつらに振り回され、またブライアン・
エプスタインという名伯楽を得て、ビートルズはショウアップされ、演出されたバンドになっていく。
レコーディング・ディレクター、フィル・スペクターの存在も、素朴な彼らの音楽を加飾した。
彼らは疲弊し、やがて当然のように、「自分らはこのままでいいのか」と感じ始めた。
もはや自分たちは自分たち、というスタンスを世の中が許さなくなっていくのである。

ターニングポイントは「ラバーソウル」にあったようだ。それと「サージャントペパーズロンリーハーツ
クラブバンド」。4人は極めて親密で、自分たちを取り囲む社会的な、あるいは家庭を持つという私的な状況の
変化に対応出来ていった。しかし、大人になるにつれ、自分のポジションが大きくなり、4人でやっている
意味を失っていく。

改めて感じる初期の無垢なロックンロールの素晴らしさ、そして自分たちを見つめはじめ変わっていく
中で作られる思索的、内省的な曲の初期を上回る上質さ!
ビートルズが変わっていったのか、世界の変遷は彼らが引っ張っていったのか。
映画は、1964年、65年、66年を重点的に描く。彼らを迎えた世界の熱狂の様子が当時のフィルムを使い
多く語られていく。ワールドツアーを続けていく中で、世界はヴェトナム戦争、ケネディ暗殺、黒人の
公民権運動、アポロの打ち上げ、とまた怒涛の様に変化していく。1966年6月には日本公演も果たす。
そして次のマニラあたりでツアーも限界に近づく。彼らは1966年8月のサンフランシスコを最後に
ライブツアーを止め、スタジオを中心に活動するバンドとなるのだった。

ツアーの時代、当時は送り返しのモニターはもちろん、PAも貧弱なもので、その中で、ビートルズの
演奏の質は極めて高く、スタジオ録音のレベルを保っている。ハモリも完璧、ジョージのソロもレコードと
同じだ。映画の中でリンゴがいう。「当時は観客の嬌声とアンプのパワー不足で演奏の音が聞こえず、
ポールやジョンの体を後ろから見てその動きで音を探していたよ」と。おそらく客も音が聞こえていなかった
人が多いのだろう。ビートルズもやがて気づくが、若い女性を中心とした客は音楽を聴きに来ているのではなく、
ビートルズを見に来ているだけだ、ということ。

割と見た覚えのある映像だったが、印象的だったのは、数千人の観客による「She Loves You」の大合唱、
現在のポールのインタビューで映画「ヘルプ!」は二度目の映画で熱意は無かった、撮影中メンバーは
みんなマリファナでラリっていた、という証言、そして、ラストのシェアスタジアムの画像も音も良い
30分間の演奏だった。
 製作者たちのビートルズに対する深い尊敬と愛情を感じる作品。ビートルズの音楽を好む人であれば、
是非ご覧いただきたい映画である。ちなみに日本公演を証言するのはオフィシャルフォトグラファーで
あった浅井慎平である。
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この映画の詳細は http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=357100 こちらまで。



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by jazzyoba0083 | 2016-09-22 12:10 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)