「僕の戦争」を探して Living is Easy with Eyes Closed

●「『僕の戦争』を探して Living is Easy with Eyes Closed」
2013 スペイン Fernando Trueba Producciones Cimematograficas and more.109min.
監督・脚本:ダビ・トルエバ
出演:ハビエル・カマラ、ナタリア・デ・モリーナ、フランセク・コロメール、ラモン・フォンセレ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

本作のベースになっているジョン・レノン主演で1966年に製作された「僕の戦争」は、日本では
劇場未公開で、私も未見である。
この映画、本国ではゴヤ賞6部門を獲得し、この年のアカデミー賞外国語映画賞部門のスペイン代表映画でも
あったのだ。この手の映画が放映されるからWOWOWはありがたい。

本作は、スペインに実在した、ビートルズの歌の歌詞を使って英語の授業をする教師が、ジョンが
映画の撮影のためスペインを訪れているというニュースを聞き、当時レコードに歌詞カードが付いて
いなかったため、歌詞がはっきりわからないという点を尋ねたいということも含め、敬愛するジョンに
ひと目会いたいと、出かけていく。その道中で家出した少年フアンホ、なさぬ子を身ごもり人生に行き
詰ったベレンを拾い、旅をする中でそれぞれの人生を見つめ再発見するお話だ。
 英語タイトルはビートルズファンなら一発でお分かりだと思うが、名曲「ストロベリーフィールズ
フォーエバー」の歌詞の一部で、その意味は多分に本作の内容に対し寓意的でもある。

本作はストーリーの展開が激しいものではないが、登場する人々が織りなす物語は、優しく、温かく
胸に響く。背景となっている時代、スペインはフランコ圧政下にあったのだが、その閉塞感も含め
上手いこと人間ドラマが繰り広げられている。

冒頭、教室では「Help!」の歌詞を使って英語の授業が進められている。教師アントニオは歌詞の意味を
生徒に尋ねるが、まだ幼い子供らは含蓄など分からない。そんなアントニオ、ある日ジョンが新しい
映画の撮影でスペインに来ていると聞き込む。授業に使っている歌詞は自分がラジオで聞いたものを
聞き起こしていて、中には単語がわからない所もある。この際、あこがれのジョンに会い、そこの所も
解決したいと、決心。単身(独身だが)クルマでロケ地を目指したのだ。
その後登場人物が揃うまで、弱い立場の人間がビンタを食らうシーンがいくつか出てくるのだが、
時代の雰囲気の暗喩っぽかった。
 道中、長くなった髪を切る切らないで父親と揉めて家出してきたフアンホ少年と、ガソリンスタンドで
人生に突き当たり悄然としてたベレンを拾い、道中は続いた。

やがてロケ地探しのベースとなる食堂に行き着く。そこの主人カタラン、身障者の息子ブルーノとの
物語を加え、美女ベレンとアントニオ、ベレンとフアンホの恋模様も・・・。ジョンに会う、というよりも
フアンホ少年、ベレンと、カタランらの人生の一部が描かれていく過程こそこの映画の良さがある。
もちろん、最終的にはロケ地におもむき、ジョンとの面会が叶えられ、ジョンから学校へ行くよという
約束を貰い、更には「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」が吹き込まれたテープを貰うという
100点満点の結果を得たわけだ。

しかしながら、最後にカタランの食堂でウェイターのバイトをしていたフアンホをいじめたやつの
トマト畑に行って、クルマでグジャグジャにしてしまうアントニオの姿もまた、ジョンとの出会いと
いうだけではないこの映画の趣旨を暗喩的に示している。フアンホがいじめられた後に駆けつけた
アントニオの「心以外で痛いところはあるか?」と尋ねるのだが、そのセリフに彼の優しさが現れて
いるな、と感じた。

本作が持つ温かさは、脚本によるところが大きいのは勿論だが、教師アントニオを演じたハビエル・カマラの
存在も大きい。ハゲで腹回りには贅肉ついた風采が上がらない中年の、しかも独身の教師が、対峙する
フアンホ少年、ベレン、カタランらとのかかわり合いの中で上手く彼らの人生を引き出している役を
好演していた。

ラストに字幕で、ビートルズのアルバムにはジョンがスペインに行った後は歌詞カードが付くようになった、と
説明される。なるほどねえ、と思ったのだった。これがきっかけであったかどうかは不明であるが。
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<ストーリー>
ジョン・レノンを愛する英語教師が、憧れのレノンに会うためにたどる旅を描いたハートウォーミングな
ロードムービー。本国スペインでは、第28回ゴヤ賞で作品賞や監督賞ほか主要6部門を受賞。

1966年、ジョン・レノンが映画「ジョン・レノンの僕の戦争」の撮影ためスペインを訪れてると知った
英語教師のアントニオ。普段の授業でもビートルズの歌詞を使って英語を教えるなど、ビートルズファンの
アントニオは、憧れのレノンに会おうと撮影地まで車を走らせる。
道中、何かから逃げている様子の若い女性ヘレンと家出少年のファンホと出会い、3人の不思議な旅が続く。
2014年・第11回ラテンビート映画祭で上映された(映画祭時は英題「Living Is Easy with Eyes Closed」で上映)。
(映画.com)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=354232こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2016-10-03 22:55 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)