君の名は。your name.

●「君の名は。your name.」
2016 日本 東宝 「君の名は。製作委員会」(東宝、コスミック・ウェーブ・フィルム、KADOKAWA、
ジェイアール東日本企画、アミューズ、ローソンHMV)107分
監督・原案・脚本・コンテ・編集・撮影:新海誠
声の出演:神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子、成田凌他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

今年8月末に公開されるや、たちまち大ヒットとなり、現時点で日本国民の10人に1人が観た勘定、
興行収入も日本映画の歴史に残る記録となりそうな本作、いまだにその勢いは衰える様子がない。

個人的には積極的に観に行きたい、という範疇の映画ではなかったので、これまでパスして来たが、
ここまで国民的な話題となり、今年度を、いや邦画を代表する一作となることは確実なので、
映画好きとしては、劇場鑑賞はしておかなくてはなるまいと、ほとんど評論家のノリで出かけた。

日曜午後のシネコンの一番大きなスクリーン。小学校高学年から中高生、若いカップルと全体的に
これまで映画館なんかあんまりこないだろう、という人たちで埋め尽くされていた。ちょっと驚き。

この映画がここまでヒットする要因は何か?という鑑賞者としてはいささか不純な動機での鑑賞だったが
全体として、よく出来た映画、と言わざるを得ない。個人的には2つのバイアスがかかるので評価が
甘めに流れるのをお許し頂きたい。一つは、主人公のカタワレ、宮水三葉の生活するところが岐阜県の
飛騨市を模してあると思われ、私が今住んでいるエリアにごく近いこと。もう一つが、もう一方のカタワレ、
瀧くんが生活するところが、東京の四ツ谷で、私が卒業した大学があるこころで、この2つのことで
シンパシーが湧いてしまうところがあり、それは仕方のないこととしてご理解頂きたい。後述するが
見たことのある風景がバリバリ出てくるので・・・。(プロデューサーの川村元気が卒業大学の学科の
後輩であることは鑑賞後に判明)

で、ヒットの要因。ヒットが大ヒットに転換する臨界点というか爆発点というのは統計学上の理論に
なっていて、ある程度の量に達すると、一気にブームが起きる、というもの。本作の大ヒットを
見ていると、映画の出来がどうの、というより、みんなが見ているから観てみよう、という、いわば
「無党派層」を動かしている、ということが出来るだろう。「ポケモンGO」などと同じだ。

それはそれとして、映画の出来として、どの当たりに大衆のコロロを捉える力があるのか、ということを
考えながら観ていたのだが、
「アニメだから出来たこと」「アニメなのに出来ていること」が大きな括りとしてあるだろう。
今やCGで映画が出来てしまうので、精細な画像を作ろうと思えばできるのだが、新海監督は従来の
アニメタッチを崩さず、かと言って、PIXAR系のカリカチュアライズもせず、日本のアニメらしい仕立てと
したことによる安心感がまず来た。

監督自身が云うように本作は究極の「ボーイ・ミーツ・ガール」である。これに「パラレルワールド・
タイムパラドックス」、「純愛・謎解き、サスペンス」という映画のヒット法則を加え、さらにその太いラインに
「若い人たちには恋愛・友情に見られる同世代のシンパシーを、年配層にはかつての夢を重ねられる」のであり、
「都会と田舎(郷愁)」、「スマホやSNSという同世代に共振するガジェット」を配合した、いわば
ヒットすべくしてヒットした、とも見方が出来るのである。嫌な言い方をすればマーケティングの勝利、というか。

そして本作の最大の見どころであり、二度三度と鑑賞するコアファンを獲得しているのが、作画の
「リアリティ」であり、「再現性の高さ」であろう。
「神は細部に宿る」という言葉があるが、まさにこの言葉が鑑賞中に脳裏を横切った。これにより
「聖地巡礼」をするファンを獲得し、これがまたブームアップに寄与しているのである。
おそらく小学生とか中学生らの鑑賞法とはズレるとは思うが、在京者、あるいは東京に一度は生活した
ことがある人に取って、本作に出てくるリアルな光景は、メインストーリーを強力に補完する力と
なり得ているのである。また三葉らが暮らす町で喋る言葉は中京圏の人なら一発で愛着を覚えるで
あろう。

観た方にはくどくなるが、リアルな背景として挙げられるのが、東京・四ツ谷、信濃町、代々木、青山一丁目、
などの景色、またそこに含まれる交通標識などの再現性(リアリティ)、一方、岐阜県は飛騨の古川駅、
図書館などもファンの間では有名になっている。また、教室での板書のチョークの質感とそれを持った指の
動き、サントリーの自販機、雨の道路の質感、岐阜に向かう瀧くんら三人の乗る新幹線車内と車窓の景色、岐阜で
旅館に泊まった時の奥平先輩のネマキから少し見える下着、走る三葉のスカートの中の白いパンツまで、
このアングルからは見えるだろうと思うものが再現性高く、きちんと見えているのだ。普通のアニメなら
いい加減にしてしまう、ノートの中身、書籍やパンフレット、ポスターのデザイン、交通標識の細部に至るまで、
線の精密さというより、再現性の高さ、こだわりに唸るのである。「創りもの」と「現実」の間にある遊び、
というものも見えてきたのだった。
また、三葉の家の、JRの電車や新幹線の、ドアをアップかつローアングルでシーンの転換を図る点、
俯瞰や意識的なローアングルの設定など、画作りの工夫も上手いと思った。
全編を通して光のトーンの再現性が極めて高い作画でもある。

個人的なことだが、通った大学があるJR四ツ谷駅、東京メトロ四ツ谷駅の光景では、背後にイグナチオ教会や
大学校舎の一部が、また新宿方向のビル街には「綿半野原」の文字がキッチリ描かれていて感激してしまった。
タイアップスポンサーは実名で、そうでないものは少し変えて表記されている。

映画は後半に向かって、ストーリーが怒涛のように展開していくが、ラストシーンを含め時空の整合性の
付け方が小さい子たちにはちょっと頭をつかう必要があるものの、安堵するハッピーエンディングがタイトルの
意味と、さらにいえば読点の意味さえも理解できる仕立てとなっているのだ。

おじさんは涙は出なかったが、色んな意味で「唸る」映画ではあった。昨年観た「風立ちぬ」より、インパクトの
強いアニメ映画であった。三葉の実家が神社の宮司ということもあり、純和風な光景、また先進的な東京の光景、
若者の間で決定的なガジェットとなるスマホなどの現代風俗も描かれていることから、作画の美しさも含め
海外の賞を獲ることも多くなるのではないか。
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<ストーリー>
 「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」の新海誠監督が、夢の中で入れ替わる少年と少女を主人公に贈る
青春SFファンタジー・アニメーション。入れ替わりが巻き起こす思春期ならではのコミカルで甘酸っぱい
青春模様と、2人を待ち受ける思いも寄らぬ運命の顛末を美しい映像とともに綴る。
声の出演は神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子。

 千年ぶりとなる彗星の接近を1ヵ月後に控えた日本。山深い田舎町で鬱屈した毎日を過ごし、都会の生活に
憧れを抱く女子高生の三葉。ある日、夢の中で自分が東京の男子高校生になっていることに気づき、念願の
都会生活を満喫する。一方、東京の男子高校生・瀧は、山奥の田舎町で女子高生になっている夢を見る。
そんな奇妙な夢を繰り返し見るようになった2人は、やがて自分たちが入れ替わっていることに気がつく。

戸惑いつつも、メモを残してやりとりしながら、少しずつ事実を受け止めていく瀧と三葉。ところが、
互いに打ち解けてきた矢先、2人の入れ替わりは突然起こらなくなってしまう。そこで瀧は、夢の記憶を
頼りに三葉に会いに行こうと決心するのだったが…。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=355058こちらまで。

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by jazzyoba0083 | 2016-10-16 16:40 | 邦画・新作 | Trackback | Comments(0)