ヴェルサイユの宮廷庭師 A Little Chaos

●「ヴェルサイユの宮廷庭師 A Little Chaos」
2014 イギリス BBC Films,Lionsgate and more.114min.
監督・(共同)脚本:アラン・リックマン
出演:ケイト・ウィンスレット、マティアス・スーナールツ、アラン・リックマン、スタンリートゥッチ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

今年(2016年)1月、他界したアラン・リックマンが生涯に監督した2作品のうちの最新作にして監督遺作。
彼はもともと舞台の人で、後、映画に出始めた。一作目「ダイハード」(1988)で、ラスト近くに目を
剥いてビルから落下するテロリストの役が印象深い。私は観ないのだが、「ハリーポッター」シリーズでの
スネイプ先生が記憶に残る人も多かろう。

そのリックマンが監督し、共同台本を手がけ、ヴェルサイユ宮殿を作らせた太陽王ルイ14世も演じている。
出来の良し悪しよりも、フランスを舞台にした映画が全編英語で作られている時点で、個人的にはもうダメ。
名優ケイト・ウィンスレットの演技をもってしても補えない根本的な問題である。
私は、例えばヒトラーや第二次世界大戦の欧州戦線を描くものでは、フランス人はフランス語、ドイツ人は
ドイツ語、イタリア人はイタリア語を喋って欲しいし、太平洋戦争を描いたら日本軍は英語ではいけないと
思っている。

そんな不自然な感覚に苛まれつつ、鑑賞した本作、広大な土地に建てられた豪奢な作りと広大な庭園を持つ
ヴェルサイユ宮殿。ルイ14世から信頼も厚い実在の造園家ル・ノートルと、彼が実際に作り上げた
「ロカイユの木立」という、ヴェルサイユの中でも異質な空間である舞踏場の建設に絡み、女流造園家と
いうフィクションを挟んで作り上げたオリジナルストーリーであり、その物語自体の出来は良い。
ただ、「ロカイユの木立」を作り上げるという工程と、ル・ノートル(スーナールツ)と平民の未亡人
造園家マダム・ド・バラ(ウィンスレット)の恋愛模様が、どっち付かずになってしまい、いきなり舞踏場が
完成してしまう時間の飛ばし方に違和感を覚えた。

アラン・リックマン演じるルイ14世、わがままで高慢ちきな嫌な王様という印象を勝手に持っていたが、
実に人間らしく描かれていて、また、当時の宮廷の退廃的な雰囲気もそこそこいい感じだった。
中世ヨーロッパの映画って、衣装とか建物とか馬車とかお金がかかるだろうに、リックマンはこの物語が
気に入ったのだろう。ケイト・ウィンスレットはどこかイギリスの匂いがしてしまう。いい演技だけど。
当時、平民の女性が宮廷の仕事をいわばオーディションで募るというようなことがあったのだろうか?

ヴェルサイユ宮殿の中でも、いわば前衛的な、当時重んじられた調和や秩序というものに逆らった
ような「ロカイユの木立」。これが出来たのは一人の女性庭師の存在と、天才造園家ル・ノートルとの
出会いがあり、その間に恋愛模様があったら更に面白いという着想は良いと思うので、言語の問題が
ほんとにもったいない。
映画の中で完成する「ロカイユの木立」は、本物とそっくりでよく出来ている。当時の男性貴族たちが
濃い色(黒とかこげ茶)のパーマを当てたようなロングヘヤーのカツラを付け、化粧をしている姿を
改めて見ると、変な時代だったんだなあ、と感じる。まあチョンマゲ結っている日本も外国人が見れば
とんでもない姿だったんだろうけど。フランスには数度行っているが、ヴェルサイユは未踏なので、
次回訪れる機会があれば、是非「ロカイユの木立」を訪れたいものだ。
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<ストーリー>
英国の名優アラン・リックマンが97年の「ウィンター・ゲスト」に続いて2度目の監督を務めた歴史
ロマンス。世界でもっとも有名な庭園の誕生に秘められた名もなき女庭師の愛と勇気の物語を描く。
主演はケイト・ウィンスレット、共演にマティアス・スーナールツ、アラン・リックマン、スタンリー・
トゥッチ。

 1682年、フランスの田園地方。一人で生きる女性サビーヌ・ド・バラは、造園家という職業に誇りを
持ち、日々庭造りに精を出していた。そんな彼女のもとに一通の書状が届く。それは、ヴェルサイユに
王宮を移す時の国王ルイ14世が、最高の庭園を造るべく、民間の造園家にも広く参加を募るという
知らせだった。

さっそく、庭園建設の責任者ル・ノートルの面接へと向かうサビーヌ。女性であることで同業者からは
蔑まれ、肝心の面接でもル・ノートルと意見が対立してしまう。落選を覚悟したサビーヌだったが、
調和の中にわずかな無秩序を取り込む彼女のユニークな感性がル・ノートルの興味を惹き、晴れて
“舞踏の間”の建設を任されることに。やがて限られた時間と予算の中で、いくつもの困難に直面する
サビーヌとル・ノートルだったが…。(allcinema)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353306こちらまで。








by jazzyoba0083 | 2016-10-24 10:25 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)