2016年 11月 05日
サムライ Le Samourai
1967 フランス・イタリア CICC and more.101min.
監督・脚本:ジャン=ピエール・メルヴィル
出演:アラン・ドロン、ナタリー・ドロン、フランソワ・ペリエ、カティ・ロジェ他
<感想>
フィルム・ノワールの傑作といわれるので、WOWOWで初放送になった今回、録画して鑑賞。
様々な映画に影響を与えたといわれる演出、今ではこういうストレートな演出は無くなったのじゃ
ないかな。硬質、クール、と表現され、ほとんどセリフも演技もないアラン・ドロンは、佇まいも
美しいが、監督の趣旨を理解し、終始ポーカーフェイスである。モノトーンにも近い感じのブルー・グレーの
色彩も、作品の主張を文字通り彩る。監督は後に「仁義」という同じくアラン・ドロンを起用したフィルム・
ノワールの名作をモノしている。
この時代のこの手の映画には欠かせないJAZZの雰囲気も良い。またシトロエンDSを始めとするフランス車や
日常品のデザインなど、フランスのエッセンスの香りも出ている。
難を言えば、ナタリー・ドロンの存在が今ひとつ中途半端な感じ。当時の警察の令状なしの捜索や、
「面通し」など、今やったら人権問題になりそうな捜査や、先の戦争の事がセリフに登場するなど、年代を
感じさせる部分もある。
長身の色男がバリっとしたトレンチコートとハット姿では逆に目立つだろう、と思うのだけれど。
地下鉄での警察との追跡シーンは見ごたえがある。その後の「フレンチ・コネクション」などに影響を与えて
いるのではないだろうか。
さて、本作のタイトルは日本のサムライの精神構造をフランスの殺し屋に置き換えたものであるので、
ストイックでクール、弾の入っていない拳銃を持ってのラストシーンはまさに武士の切腹。また白い手袋を
して最期に臨むところはまさに白装束を汲んだものであろう。武士の美学をフレンチに換骨奪胎した監督の
力量とドロンの存在感は、流石に名作の評判どおりである。
ソフト帽にトレンチ・コートのいでたちでジェフ(A・ドロン)は、仕事に出かけた。駐車してある一台の
シトロエンにのりこみ、合鍵でスタートさせ、郊外のガレージに乗り込んだ。ガレージの親爺は、車の
ナンバー・プレートを取りかえ、拳銃を、大金とひきかえにジェフに渡した。
その後、コールガールをしている恋人ジャーヌ(N・ドロン)を訪ね、アリバイを頼むと、仕事場のクラブへ
向った。ジェフの仕事は、クラブの経営者を殺すことだった。仕事は、いつものように、寸分の狂いもなく
完了した。だが、廊下へ出た時、黒人歌手のバレリーにはっきりと顔をみられてしまった。警察は動き出し、
クラブの客や目撃者の証言で、ジェフも署に連行され、面通しが行なわれた。
目撃者の大半は、ジェフが犯人だと断定したが、バレリーだけはなぜかそれを否定し、それに、ジェフの
アリバイは完全だった。だが、主任警部(F・ペリエ)は、依然ジェフが、怪しいとにらんで、尾行をつけた。
そのことを知ったジェフは巧みに尾行をまくと、仕事の残金を受けとるために、殺しの依頼を取りついだ
金髪の男と会ったが、男はいきなり巻銃を抜いて、ジェフは左手を傷つけられた。
残金をもらえぬどころか殺されそうにさえなったジェフは、殺しの依頼主をつきとめるべく、偽証をして
彼をかばってくれたバレリーを訪れた。だがバレリーの口は堅く、「二時間後に電話を」とだけ言った。
約束どおりジェフは電話したが、誰も出てこなかった。やむなく帰ったジェフの部屋に、金髪の男がいた。
男はうって変った態度で、殺しの残金を渡すと、さらに新しい仕事を依頼した。ジェフは、男のスキをみると、
いきなりとびかかり、巻銃をつきつけて、依頼主の名を聞き出した。
大がかりな尾行網をぬけジェフは、男から聞き出したオリエビなる依頼主を訪ね、有無をいわさず射殺した。
オリビエの部屋はバレリーのすぐ隣であり、オリビエはバレリーを通じて自分の正体がばれるのをおそれて
新しい仕事として、バレリー殺しをジェフに依頼したのだった。クラブでピアノを弾くバレリーの前にジェフが
あらわれた。ジェフが拳銃を握った瞬間、張り込んでいた刑事たちの銃声がひびいた。主任警部が調べた、
死んだジェフの拳銃には、一発も弾が入ってなかった。(Movie Walker)
この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=9079#1こちらまで。