エール! La famille Bélier

●「エール! La famille Bélier 」
2014 フランス Jerco and more.105min.
監督・(共同)脚本:エリック・ラルティゴ
出演:ルアンヌ・エメラ、カリン・ヴィアール、フランソワ・ダミアン、エリック・エルモスニーノ、ロクサーヌ・デュラン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

なんの前知識なく、フランス映画とも認識がなく、WOWOWで録画されていたので観てみたら、これが
大当たり。社会的弱者や病気モノは最近富みによく製作されるが、その背景に、そういう人々と健常者が
日常どうあるべきか、を問わなければならないような社会である、ということと、その手の映画もちゃんと
観てもらえるようになったということがあるのだろう。ただし、お涙頂戴、ヒット狙いなものは当然ダメで
あるのだが。
その点、本作は、逆境を笑い飛ばすというフランス映画独特の乾燥度を持っていて、(例:「最強のふたり」
など)嫌味なく見ることが出来る。
障害者であることを変にオブラートに包むのではなく、あけすけに提示することにより、観ている方も、映画に
納得・同化しながら楽しむことが出来るのだと思う。
 とにかく登場人物がアッケラカンとしていて、めそめそしていない。ポーラに初潮が来た、といって大騒ぎ
して喜ぶ両親、また母が膣炎で婦人科にかかり、ポーラは通訳して、母に性生活を控えめにするように通訳したり
とかのシーンがあったと思えば、学園祭で歌う歌が、おいおい、こんな大人の歌を中学生に歌わせていいのかよ、
と思ってしまうような歌だったり、父親がなんと村長に立候補すると言い出したり・・。とにかくカラッとした
映画なのだ。だから最後の大団円が盛り上がるのだな。
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登場するのは四人家族。娘のポーラ以外は両親、弟3人共聾唖である。この設定が映画の全てといっても
いいくらいだ。一家は酪農を営み、回りの人達の理解もあり、不自由を感じることもなく暮らしていた。
娘は健常者であるのだが、手話を駆使し、家族と語り合う。家の手伝いを一生懸命するような、なかなか
出来た娘であるのだが、授業には疲れから居眠りをしてしまうなど、はなかなか打ち込めない。

ある日学校でコーラス・グループが結成され、ぶーたれていたポーラは先生から団に入るように指名されて
しまう。しかし、彼女の歌声を聴いた先生は、その歌声の可能性に驚き、個人レッスンを受けるようにいう。
パリの音楽学校に行け、その能力はある、というのだ。 
 一家のコミュニケートを支え、通訳代わりを勤め、酪農も手伝う生活をしているポーラ、自分が抜けたら
一家は大変なことになる、と大いに悩む。でも夢は叶えたい。自分の歌声を家族に聞いてもらうことは
出来ない、ということも彼女を悩ませる。個人レッスンを止めたり、なかば自暴自棄になったり、
ボーイフレンドと喧嘩したり・・・。両親にパリ行きを打ち明けるも、なかなか理解は得られない。

学園祭の出し物でコーラスや、ボーイフレンドとのデュエットを披露するポーラ。見に来ていた家族は当然
彼女の歌は聞こえなかったが、その美声は大評判だった。音楽の先生は、彼女は才能がある。応援してあげ
ないか、と語るが、事情をわきまえたポーラはそれを通訳しなかった。

その夜、父はポーラを庭に呼び出し、歌ってくれという。父は彼女の喉に手を当てて聞き入っている。
オーディションの日を知っていた父は、ポーラを起こし、パリへとクルマを走らせる。オーディションが
始まった。しかし、ポーラの歌う歌を伴奏者は楽譜がないという。そこに、ポーラがパリに行ったと
聞きつけた音楽の先生が登場、私が弾きます、と。そしてオーディションが始まった。
遅れて駆けつけた家族。その前で、彼女は手話も使い、まるで一家と自分の事を歌ったような歌を力一杯
歌い上げたのだった。結果は合格! ポーラのパリでの新しい人生と、ポーラ抜きの家族の新しい暮らしが
始まったのだ。
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大柄なポーラがちょっと初潮を迎える中学生にしては体格が良すぎるんじゃないか、とは思ったけど、
彼女を含め、手話を駆使し、特に両親と弟はセリフが全く無い演技だが、キャラクターを上手く出して
見ものであった。ポーラを演じたルアンヌ・エメラは実際にテレビのオーディション番組で優勝し、この
映画にキャティングされたまだ素人っけが残る女優さん。そこら辺も良い方に作用したんじゃないか。
独特の軽・重い感じがいい。自分の道を見つけていくという青春ドラマでもあり、家族ドラマでもある。
佳作。

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353061#1こちらまで。

<IMDb=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:81% Audience Score:76%>


by jazzyoba0083 | 2017-02-16 22:55 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)