マン・オン・ワイヤー Man on Wire

●「マン・オン・ワイヤー Man on Wire」
2008 イギリス Discovery Films,BBC Storyville,UK Film Council.95min.
監督:ジェームズ・マーシュ
出演:フィリップ・プティ他
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         <2008年度アカデミー賞ドキュメンタリー長編賞受賞作品>
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
1974年8月7日朝、一人の男が完成間近の今は無きワールドトレードセンターの2つのビルの間に
渡したロープを渡る光景が見られた。25歳の誕生日を数日後に控えた若きフランス人、フィリップ・プティ
である。この男、45分間に渡りロープ上で踊り、ジャグリングをし、膝をつき、横たわって見せた。

本作はプティの「偉業」を捉えたドキュメンタリーである。このイベントに付いては後年、ロバート・
ゼメキスの手で3D映画化された。WOWOWでは映画化版を放映するに際して、本ドキュメンタリーも
放映しれた。こういうのがWOWOWのいいところだ。これを観ると「ザ・ウォーク」がいかに
事実に忠実に作られていたかを確認出来て、その点でも良かった。一つだけ、再現映像とドキュメント
フィルムの両方の出来が良かったので、再現ドラマなのか記録映像なのか分かり辛かった。

本作に長所は、世紀の大イベントに対し、当事者を含め「共犯者」たちの証言を加え、さらに
再現ドラマも加えるという多角さの演出にあると思う。さらに全部で10人にもなろうという仲間がいなくては
なし得なかった「狂気」の驚くべき裏側がリアルに描かれる点もあろう。
加えて、400メートル上空での命綱なしの綱渡りという、ありえない事態が映画の緊張感を加速させている
という「ゲタ」はあると感じたが。
いずれにせよ、プティという、我々が及びもつかない「特殊能力」を授かった男の、文字通り
「綱渡り」な人生を綴っていく。と言っても、24歳になるまでに彼はパリのノートルダム寺院、
シドニーのハーバーブリッジでも信じられないような綱渡りを決行しているのだった。彼はパリの歯科医の
待合室にあった新聞で、6年後に完成するWTCの存在を知り、もう渡るしかない!と確信する。そこから周到な
準備が始まったのだ。まだ十代であったことを思う時、プティの狂気のモノ凄さが分かるような気がする。
WTCの場面は写真しかないが、ノートルダムや彼の綱渡りの光景はちゃんと動画で残っていて、その
リアリティにも圧倒される。

プティの思い込んだら命がけの行動力は、常人には想像が難しい。ただただ、凄い!と言って見守るのみだ。
何かに憑かれたようにとことん取り組んでみる、そういう事が人生であっただろうか、そんなことに思いを
致してしまう。彼自身「人生は綱渡り(タイトロープ)だ。」と発言しているが、分かるように、このセリフは
ダブルミーニングになっている。

今はもうないWTCへのトラウマが軽くなる2008年頃まで、原作となる本の出版をプティは待っていたので
あろうか。そして逮捕されたプティを待っていた裁判所の粋な対応とビルの大人な対応を思う時、今はもう
コンプライアンスだのガバナンスだのと称してこういう「誰も傷つかない美しい犯罪」に対する懐の深い対応は
望むべくもないのだろうか。
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<ストーリー>
1974年8月7日、24歳のフランス人フィリップ・プティは、ワールド・トレード・センターのツインタワーの
間に張られた地上411mの綱で綱渡りを披露する。6年前、ツインタワー建設計画の雑誌記事を目にした彼は、
1971年6月、ジャン=ルイ・ブロンデューとジャン=フランソワ・ヘッケルに支えられ、パリのノートルダム
大聖堂の2つの尖塔の間の綱渡りを行う。また1973年、オーストラリアの友人マーク・ルイの助けで、シドニーの
ハーバー・ブリッジ北側の鉄塔で、2度目の違法綱渡りを敢行する。

1974年1月、ニューヨークにやってきたフィリップは、ジム・ムーアの協力を得て、何度もツインタワーを訪れる。
ジャン=ルイ、マーク、恋人アニーが彼の仲間だった。計画の日、ワールド・トレード・センターの屋上は工事中
だった。フィリップとジャン=フランソワは南タワーに、ジャン=ルイとアルバートは北タワーに、工事作業員と
ビジネスマンに変装して入る。南タワーの82階にある保険会社で働くバリー・グリーンハウスが装置の運搬を許可し、
さらに、エレベーター作業員のミスで104階まで上がることができた。
フィリップたちは道具を隠し、自分たちも身を潜めた。闇夜の中、作業が始まる。ジャン=ルイはフィリップの
合図で綱をつけた矢を放つ。しかし重い鉄のワイヤーが、固定される前に落ちてしまう。

ジャン=ルイとアルバートは素手でケーブルを引っ張るが、アルバートが途中で諦めて去る。ジャン=ルイの尽力で
何とか綱を固定することはできたが、理想的ではなかった。それでもフィリップは綱の上に足を踏み出す。
そして45分間8往復の綱渡りの後、フィリップは不法侵入と治安紊乱行為の罪で逮捕される。
しかしその後の裁判で、セントラルパークで子供たちにジャグリングを見せるという条件で容疑は撤回される。
港湾管理委員会はフィリップに、永遠に有効と記されたワールド・トレード・センター展望デッキへのVIP
許可証を贈呈する。(Movie Walker)

<IMDB=★7.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:100% Audience Score:87%>

この映画の詳細はhttp://movie.walkerplus.com/mv38139/こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2017-03-04 23:10 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)