ロック・ザ・カスバ Rock the Kasbah

●「ロック・ザ・カスバ Rock the Kasbah」
2015 アメリカ Covert Media,Dune Films,QED International.106min.
監督:バリー・レビンソン
出演:ビル・マーレイ、ケイト・ハドソン、ゾーイ・デシャネル、ブルース・ウィリス、リーム・リューバー他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

冒頭中東っぽい女性が洞窟でカラーテレビの画面を見つめている。テレビではアラビア語で歌番組が
放送されている。娘の目つきは憧れで一杯・・・。一方、カリフォルニアのどこか。モーテル?の
小さな部屋でデブッチョの女性の上手くない歌を聴いているビル・マーレイ。どう見たって聴いたって、
ダメでしょ、というこの女性を褒めちぎってマネジメントを契約し、1000ドルほどを預かる、という
尾羽打ち枯らしたマネージャーが詐欺をやらかすという所。セリフもどことなくロックぽく、オフビート感
漂う雰囲気。

「レインマン」でオスカー監督賞を獲得したレビンソン監督がビル・マーレイ他のビッグネームを演出する、と
いうので観てみたが、なんとも勿体無いなあと感じた。どなたもお感じになると思うのだけれど、
発想はいい。(宗教的な部分でデリケートかつ難しい処理を要求されるところもあろうが)。だが、
女性を独特の宗教観でしか観られないイスラム原理主義者との対峙の中で、エンディングに向けての
物語の展開が、「あれ?こういう風に終わっちゃうわけ」、「もっと深い映画になるか、と思ったのに」
という風になっちゃう。ま、事実をベースにしているのだそうだが、そこは脚色はあっても良かったの
ではないか。(前述のように宗教に横たわる微妙な事柄が影響しているのか)
シュールなブラックユーモアも笑うに笑えない感じだ。ブルース・ウィリスのポジションも中途半端で
勿体無い。

所属する最後の歌手ロニー(デシャネル)を連れてアフガニスタンの米軍慰問に来たリッチー(マーレイ)。
ドサ回りの多いリッチーが娘に今度はカスバ、とか言うが、幼い娘に「カスバは北アフリカ」とかダメ
出しされている・・・。
異文化の地の不穏な雰囲気の中に登場する案内役のバーンズ二等兵もどこかピントがずれている。
慰問のショー直前に、ロニーに逃げられ、リッチーはパスポートも現金も持ち逃げされる。この解決に
現地で知り合った悪党2人に誘われて、パシュトゥーン族にニセの弾薬を届ける役を引き受ける。
道中、車列が地雷を踏んでクルマが吹っ飛んだり、しかし族長に歓迎され、夕食には現地の楽器を使って
「Smoke on the water」なんか歌っちゃったり。(これがなかなか渋い)
で、宴も終わって外に出るとどこからともなく歌声が。探して歩くと洞窟で若い娘が歌っていた。
娘はリッチーに見つかると逃げていくが、後にはカブールで人気のオーディション番組「アフガン・スター」の
雑誌が。リッチーは、彼女をテレビに出して優勝させることが自分の天命と悟り、彼女と契約し、
テレビに出そうとするが、イスラム教では女性が歌うこと踊ることなど論外。この番組でも女性が出たことは
なかったのだ。娘を口説き、テレビの司会者やスタッフを口説いて、なんとかテレビ出演にこぎつけたが、
案の定、世間は「恥知らずな娘だ」と非難轟々。視聴者からの電話で決勝進出者を決定する方式では
難しそうな雰囲気。歌は素晴らしかったけど。しかしリッチーは、大衆は支持しているはずと、宣伝カーを
走らす、空からビラを撒くなどして、PRにこれ努めた結果、娘は決勝に進出、バックコーラスもつけたりと
リッチーのプロデュースでキャット・スティーヴンスの「Peace Train」を熱唱したのだった。
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すごく端折ってストーリーをご紹介したが、この本筋に、カブールの娼婦ケイト・ハドソンとの、傭兵なのか
用心棒なのか、のブルース・ウィリスとの、戒律を破ろうとする娘と父親との、通訳を務めることになる
タクシー運転手との(個人的にはこの運転手、結構大事な役どころで気に入った)カラミで映画に厚みが
つく体裁となっている。

ビル・マーレイはさすがに監督が気に入っての出演だけあり、お見事。ロックな感じは出ていた。
特に、ラスト近くで麻薬を売りさばいてカネにしようという現地の一味に肩を撃たれるのだが、倒れた際に
見せる笑顔が多くを物語っていて良かった。
ケイト・ハドソンも、マーレイと交わす会話がなかなか含蓄深く面白かった。(脚本がいいのだろう)
一方、深みに欠けてしまったのは、一方の主役であるパシュトゥーン族の娘が、戒律を破って英語の歌を
テレビで歌う、という事態をどう理解し、自分で結論付けたのだろう、とその辺りの描写が不足だった点。
それとブルース・ウィリスの役どころも大事なところだと思うのだけれど、中途半端だった。あと15分でも
長くしても、それらにエピソードを加えてもらえればすごくいい映画になったのじゃないかなあ。
作品全体で見ても、セリフの中に結構気の利いたもの、含蓄深いものなどあって面白いのに。
娘が決勝で歌うキャット・スティーヴンスは、事実に即したんであろうか。選曲について聞いてみたかった。

タイトルのRock the Kasbah(Casbah)はイギリスのバンドThe Clashの1982年の歌がそもそもだけど、
時代が下ってホメイニ時代の窮屈なイランの自由を求める人々の背景にあったとも言われている。
最初に書いたように、カスバが本作に出てくるわけではなく、象徴的なタイトルとなっていると思われ。
私の時代のカスバといえば「ここは地の果てアルジェリア・・・」(カスバの女)だけど(爆)。
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<ストーリー>
かつては栄光を手にしながら、今ではすっかり落ちぶれてしまった音楽芸能マネージャーのリッチー
(ビル・マーレイ)。未だ一攫千金を夢見る彼は、嫌がる所属歌手のロニー(ゾーイ・デシャネル)を
無理やり引き連れてアメリカ軍の慰問コンサートに参加することに。辿り着いたのは、アフガニスタンの
首都カブール。未だ紛争の絶えない危険地帯にも関わらず、高額のギャラに釣られてリッチーのテンションは
上がりっぱなし。しかしふと目を離した隙にロニーが彼の荷物を持って行方をくらましてしまう。

コンサー トはキャンセル、金もパスポートもなく途方に暮れるリッチーは、仕方なく現地で知り合った
胡散臭い武器商人の仕事を手伝うハメに。幾多の死線をくぐり抜けてきた最強の用心棒ボンベイ(ブルース・
ウィリス)とともに、危険な砂漠の真ん中にある集落に武器を届けることになったリッチーは、そこで美しい
歌声をもつ少女に出会う。歌手を夢見る彼女に類まれな才能を感じたリッチーは、少女を現地で話題の
オーディション番組「アフガ ン・スター」に出演させることを思いつく。
しかし厳格なイスラム教の戒律を重んじる人々からすれば、女が人前で歌をうたうなど万死にも値する行為。
リッチーは自らの栄光 のため、そして少女の夢のため、命の危険を感じながらも彼女のデビューに向けて
奔走し始めるのだが…。(Filmark)

<IMDb=★5.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:9% Audience Score:28%>

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=356870こちらまで。

by jazzyoba0083 | 2017-03-06 22:50 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)