ピュア・純潔 Till det som är vackert (pure)

●「ピュア・純潔 Till det som är vackert (Pure)」
2009 スウェーデン The Vanner Productions AB 96min
監督・脚本:リサ・ラングセット
出演:アリシア・ヴィカンダー、サムエル・フルーレル、 ジョセフィーヌ・バウワー、マルティン・ヴァルストロム他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

日本未公開の映画を放送する、WOWOWの「ジャパン・プレミア」にて鑑賞。「アリスのままで」で
オスカー助演女優賞を射止めた、現在ハリウッドでも勢いのある女優さんの一人であるヴィカンダー。
そのヴィカンダーが21歳の時に撮影された初主演作である。これがいい作品なんだな。

新人にしてこの演技!終始手持ちのカメラのなかで、揺れていく主人公カタリナの心をその豊かな表情で
描いていくのだが、その社会の底辺で育った20歳(劇中の設定)の女性の「闇」「悩み」「歓び」「希望」
「絶望」そして「愛情」「再生」という表情(特に顔)を実に上手く演技する。。もちろん顔の表情だけ
ではないが、しぐさの自然な感じとか、これがほんとに一本目か?と思うくらいの「老練」さすら感じる。

主人公カタリナは、母は薬中、高校卒業後、定職にもつかず自堕落な生活をし、売春みたいたものにすら
手を出していた。そういうスウェーデンの底辺で育ち、生きている女性だった。彼女、音楽は好きで、
ある日ネットでモーツアルトに出会う。そこでコンサートホールに出かけ、リハーサルを覗き見していると、
面接を受けに来た女性と間違えられ、嘘八百を並び立てて、(母が天才ピアニストだったけどガンで死んだとか)
インタビューを受け、仮採用として、受付業務にありつけた。

そこで出会ったのが、指揮者のアダム。アダムとの会話は、音楽や美術や詩にしても、自分の知らない知的な
世界を見せてくれてとても魅力的だった。彼の仲間のセレブたちと一緒にいる時間も、自分のステイタスにも
束の間の満足を与えていてくれたのかもしれない。アダムの奥さんがイタリアに行って留守の間だけの不倫関係となる。

故にこの一気の恋愛芝居はあっという間に終わるのだ。所詮、アダムにとってカタリナは遊び相手、妻がいない間の
性のはけ口、くらいにしか見ていなかったのだ。あっさり振られるカタリナ。しかし、カタリナの心の占める
アダムお存在は大きくなりすぎてしまっていた。知的レベルの違いすぎるボーイフレンドとは喧嘩別れし、
アダムに逢いたくてストーカーまがいのことをする。すると、アダムの圧力で、劇場の受付係を解雇されて
しまう。
やさぐれていたカタリナが、この劇場で職を得たことで、人が変わってきた、人生に目的が出来たのだ。仕事も愛も。
それはとてもカタリナの新しい希望を刺激するもであった。アダムに勧められキルケゴールを読んだりするように
もなったりしていたのだった。

カタリナにとって、アダムと劇場との出会いは、底辺の荒んだ生活からの大転換として希望に繋がっていたのに
違いない。受付業務は評判も良く、本採用も近いという噂も聞いた。そんな折の、アダムからの決別宣言だった。

再び底辺の荒んだ生活に戻るのか、と思ったらさにあらず。彼女は演奏会を終わったアダムの部屋で待ち構え、
付きまとわないから職に戻して、と哀願するが、アダムは「君の髪の毛がソファにあったといって妻と激論に
なり、遂に離婚することになったよ」と語る。そしていつものように大きな開き窓を開け、タバコを吸い始めた。
この窓はカタリナが彼のクセを知っていて開けておいたものだ。案の定、窓辺に腰掛けてタバコを吸う。
カタリナはアダムを突き落とす。

アダムが死んだかどうかは明らかにされないが、ほとぼりが冷めた頃、劇場にカタリナの仕事をしている姿があった。
しかも、受付じゃなくて、イベントディレクターのような仕事をしている。その表情は豊かで明るく自信に満ちて
いた・・・・。

ラスト、アダムの最後の捜査はカタリナにも当然向いただろう。タダの転落死とは見えないんじゃないか。とか
アダムの圧力で、受付をクビになった時、それを「上からの指示」と言っていた女マネージャー、彼はアダムの死に
カタリナが関わる可能性あるのじゃないか、と思うはずだし警察らも訊かれたろう。別れたボーイフレンドだって
カタリナが指揮者と付き合っていることは知っていた訳だから事情を訊かれている筈だ。スウェーデンの警察、詰めが
甘いんじゃないか。ラストのカタリナの独白で「アダムとの関係は誰も知らない」というには無理があるんなないかな。

斯様に、ツッコミどころもあるのだが、なにせ若いまだどこか少女を思わせるヴィカンダーの、まさに「女の魔性」
の素晴らしい顔芸七変化、とでもいうべきものの凄さに圧倒されるのだった。
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<ストーリー>
スウェーデンのヨーテボリ。20歳のカタリナは母親ブリジッタが飲んだくれであるなど家庭環境に問題が多く、
けんかっ早かったり売春をしたりと、恵まれない少女時代を過ごした。現在はマチアスという恋人がいてやや落
着いたが、モーツァルトの音楽を好きになったカタリナはコンサートホールで受付係として働きだし、人生を
再出発させようと目指す。
そこで出会った知的な指揮者アダムに魅了されたカタリナは彼と肉体関係を結ぶ。
(wowow)

<IMDB=★7.0>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:---- Audience Score:72%>

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=359210こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2017-03-09 23:15 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)