2017年 03月 24日
ボーダーライン Sicario
2015 アメリカ Black Label Media,Lionsgate,Thunder Road Pictures.121min.
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:エミリー・ブラント、ベネチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、ヴィクター・ガーバー、ジョン・バーンサル他
<感想>
トランプによるメキシコ国境の壁建設が話題になっている時期だけに、観る方も前のめりになる。
(映画が作られたのは大統領選挙より前の事だが)そして、監督の作劇は勿論だけど、それのベースに
なっている脚本が上手い。物語の多重構造が、それと意識させることなく、終わってみると、そういう
ことだったんだな、というある種のカタルシスとなっている。
一応主役はエミリー・ブラントということになっているが、もう「ザ・ベネチオ・デル・トロ ショー」。
彼の持つ独特の闇、言葉の少ない怖さ、容赦の無さが、100%出ている作品であるといえる。
FBIの誘拐即応対応チームのリーダーにして、国防総省グループのメキシコ麻薬ルート壊滅チームに
リクルートされた、ケイト・メイサー捜査官(エミリー)は、正義を振りかざすものの、終始利用される
立場である。その立ち位置と言うものも、本作では大切になるわけだから、配役の意味を踏まえての
確かな演技をしていたことは良かった。
とにかく冒頭から2時間、緊張の糸が切れない。これでもかという銃撃シーンと先が読めないストーリーを
堪能させてもらった。これを盛り上げるのはオスカーのミニーとなった撮影、作曲、音響の各部門だ。
荒々しい映像と色調(メキシコを意識した)、緊張を煽る通奏低音のようなモノトラスな音、そうして
観ると映画というのはやはり総合芸術だな、と得心が行くのだ。
先に上手い多層構造といったが、利用されるFBI捜査官ケイトのシークエンス、妻と娘を惨殺され、復讐の
鬼と化しているメキシコの元検事アレハンドロのシークエンス、そしてそれら全部をひっくるめて利用しようと
するアメリカ国家(国防総省やCIA)のシークエンスと、時間を追うごとに層が重なっていくのだが
それが話を複雑化していないのがこの脚本の上手いところだろう。
さて、本作にはメキシコで麻薬の運搬を手伝う警官シルヴィオとその一家が何気なく挿入されているのだが、
彼は最後にはアレハンドロに利用され、無残にも(殺さなくてもいいじゃんかねえ)射殺されるのだが、この
3箇所ほどしか挿入されないメキシコ人一家が、ガチガチのハードボイルドの本作に「もののあはれ」を
感じされる、これまたいい挿話となっているのだ。
しかし、これをメキシコ政府やメキシコ人はどう観るのだろうか。上空からメキシコ国境が写されるのだが、
そこには既にフェンスや金網が設置されている。麻薬の持ち込みは、取り締まらなくてはならないが、なぜ
メキシコから麻薬が持ち込まれるのか、というアメリカ側とメキシコ側双方の原因を解決しないことには
始まらない。だが、本作でも描かれるように、アメリカという国家は悪を悪として利用しようとするから
質が悪いわけだ・・・。とにかく、ベネチオ、最高、な一作。
ヴィルヌーブ監督、「メッセージ」「ブレードランナー2049」とたて続けに期待作が公開される。楽しみだ。
麻薬カルテル壊滅のため、アメリカとメキシコ国境の町に送り込まれた女性エージェントが、常軌を逸した
現場に直面し変わっていく姿を描くサスペンスアクション。ヒロインをエミリー・ブラントが演じ、
ベニチオ・デル・トロやジョシュ・ブローリンといった実力派が脇を固める。
監督は『複製された男』のドゥニ・ヴィルヌーヴ。
アメリカ国防総省特別部隊に選抜される。特別捜査官(ジョシュ・ブローリン)に召集された彼女は、
アメリカとメキシコの国境付近を拠点とする麻薬組織ソノラカルテル撲滅のための極秘任務に、あるコロンビア人
(ベニチオ・デル・トロ)と共にあたることに。
しかしその任務は、仲間の動きさえも掴めない通常では考えられないような任務であった。人の命が簡単に
奪われるような状況下に置かれ、麻薬カルテル撲滅という大義のもとどこまで踏み込んでいいのか、法が機能しない
ような世界で合法的な手段だけで悪を制せるのかと、善悪の境が揺さぶられるケイト。そして巨悪を追えば追うほど
その闇は深まっていく……。(Movie Walker)
<IMDb=★7.6>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:94% Audience Score:84%>
この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=354473こちらまで。