あの日のように抱きしめて Phoenix

●「あの日のように抱きしめて Phoenix」
2015 ドイツ  Schramm Film Koerner & Weber 98min.
監督:クリスエィアン・ペッツオルト  原作:ユベール・モンティエ『帰らざる肉体』
出演:ニーナ・ホス、ロナルド・ツァフェルト、ニーナ・クンツェンドルフ、ミヒャエル・マールテンス他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

戦争がもたらす不幸の一形態を、サスペンスの要素を巧妙に取り入れて訴えた。個人的には
好きな作品だ。原作があるので、ストーリーの面白さは映画が本来持っていたものではないのだ
ろうが、映像化することにより、この物語が持つ重要性が一層大きく示されたといえる。
舞台は第二次世界世界大戦終結後のベルリンである。

ナチ対ユダヤというとどうしても問題が大きくなる部分に目が行きがちだが、夫婦という最小限の
他人同士のユニットの間に訪れたこの問題が、夫婦だからこその濃さと主張を持って迫る。

加えて、ジャズの名曲「スピーク・ロウ」をこの映画の重要なファクターに置いたという点も大きな
評価になる。オープニングのベースのみの旋律で始まり、ラストは主人公ユダヤ人ネリーが夫のピアノ
伴奏で歌うのだが、その歌詞の内容とリンクした夫の驚愕の表情、そして歌い終わり光の中に消えていく
ネリーの姿は彼女の未来への一筋の希望を示していて鮮やかであった。それが原題へと続くのだろう。

また、ネリーの友人にしてナチス・ドイツを憎み、パレスチナに建設されるユダヤの国に一緒に行こうと
誘う弁護士ルネ、彼女は何くれと無くネリーを助けるのだが、「死者にしか思いが向かないの」と言って、
最期は自殺してしまう。ナチスにメチャクチャにされた人生と結局シオニズムに身を投ずることもなく
死んでいくルネにも、戦争が一人の人生・精神を如何に破壊するものか、を示していて興味深いものが
あった。死んだルネはネリーの夫がネリーがナチに逮捕される前に既に離婚を申し立ていたという書類を
残していた。そして彼女が残した銃で夫を殺そうか、という思いに至る時期もあった。が、ネリーは
夫を愛していたのだ。心から。しかし、その書類を見るに及び、ルネが言っていた「あなたの夫は
あなたが死んだことで、遺産を独り占めしようとしているのよ」という言葉を信じるに至る。

本当の妻なのに、ナチスにより顔に壊滅的な怪我を負って整形をしたため、本当の妻と見抜けぬ
裏切りの夫は、それなりの小物っぷりがそれはそれで良かった。彼の人生を誰が咎められようか。あの
戦時に置いて。声や体つきで本物と分かるだろう、整形うますぎだろう、とかいうツッコミは
さておくとして、長い映画ではないが、2時間以上の映画を見たような「思い」が残った。
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<ストーリー>

1945年6月、敗戦直後のドイツ・ベルリンに元歌手のユダヤ人女性ネリーが強制収容所から
奇跡的に生還する。顔に深い傷を負った彼女は、親友の弁護士レネの助けで顔面修復手術を受ける。
傷の癒えたネリーは愛する夫ジョニーとの再会を果たすが、彼女が死んだと頑なに信じている
ジョニーは彼女を妻によく似た別人と思い込み、彼女の一族の遺産を手に入れるために妻に
なりすましてほしいと頼む。
激しいショックを受けたものの、ジョニーとの再会のみを心の支えに収容所で必死に生き抜いて
来た彼女は、ジョニーの提案を受け入れ、ジョニーと共同生活を始める。
元の顔を失い、自分自身をも失っていた彼女はジョニーの言うままに昔のネリーを演じる中で
本来の自分を取り戻せたような気持ちになっていく。

一方、ジョニーが保身のためにネリーをナチスに売り、彼女の逮捕直前に離婚までしていた
事実を知るレネは、ネリーにジョニーは裏切り者なので縁を切れと言う。ネリーも疑念を抱く
ものの、事情があったのだと思い、ジョニーの言うがままに妻を演じ続ける。
そんなある日、レネが自殺する。レネの遺書には、ジョニーが一方的にネリーと離婚していた
ことを示す書類が同封されていた。

ジョニーは昔のネリーを知る友人たちとネリーとの「再会」の場を設ける。「ネリー」として
受け入れられた彼女は、友人らの前でジョニーとの思い出の曲「スピーク・ロウ(英語版)」を
歌いたいとして、ジョニーにピアノ伴奏を頼む。動揺しながらもピアノを弾き始めたジョニーは、
ネリーの歌声と腕に刻まれた囚人番号でようやく彼女が妻本人であることに気づく。
伴奏の手を止め、呆然とするジョニーを無視してネリーは歌い続ける。そして、ジョニーを残して
その場を去っていく。(wikipedia)

<IMDb=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:98% Audience Score:78%>


この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353091こちらまで。


by jazzyoba0083 | 2017-04-10 22:50 | 洋画=あ行 | Comments(0)