誘拐報道

●「誘拐報道」
1982 日本 東映 134分
監督:伊藤俊也 原作:『誘拐報道』讀賣新聞大阪本社
出演:萩原健一、小柳ルミ子、岡本富士太、秋吉久美子、宅麻伸、三波伸介、藤谷美和子
   池波志乃、松尾嘉代、伊東四朗、大和田伸也、丹波哲郎、中尾彬、藤巻潤、平幹二朗他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

もう、今から35年も経つんだなあ。鬼籍に入られた俳優さんも多い。逆に宅麻伸なんか
若すぎて誰だか分からなかったし。最近の同様な映画、「64(ロクヨン)」とどうしても
比べてしまう。まだ邦画の作り方に「64(ロクヨン)」のようなシリアスなテイストが
持ち込まれる前の、どちらかというとテレビの2時間サスペンスのようなタッチの作りで
深みに欠ける恨みがあった。それは演出の、というより、誘拐に巻き込まれた加害者被害者、
警察、新聞記者と、大きく3つのジャンルのエピソードを全部ぶっこもうとしたことから
破綻が起きてしまったからというほうが正解だろう。

故にタイトルの「誘拐報道」に釣られ、ジャーナリストたちの苦悩の話か、と思うと
さにあらず、であるわけだ。主たる観点は、誘拐を企てる萩原健一と小柳ルミ子夫婦と
子供を拐われる医師岡本富士太と秋吉久美子夫婦の被害者加害者の心の苦痛でえある映画
じゃないか。原作は未読だが、新聞記者が「報道協定」というシバリの中で、何とか
真実を伝えたい、というジャーナルな映画にはなっていない。故に、警察側も新聞社側も
中途半端な描かれ方。丹波哲郎も三波伸介も平幹二朗も勿体無い。加えて加害者被害者の
描き方にも深みがないので、結局映画全体として中途半端になってしまった。

この映画のことだけいえば、主人公は萩原健一であり、自分の子供の友だち(医師の子)
を誘拐したものの、後のことをちゃんと考えていないので、どんどん破綻に追い込まれ
ていく様は、本当は心底悪いやつではないのだが、勢いで事件を起こしてしまい、
どうにもならなくなってしまった、というところだろう。(喫茶店経営に失敗し、誘拐に
使う自家用車が当時は珍しいAudi80 LEというところに彼の見栄っ張りさも見えているのに
これも勿体無いない。)
個人的に職業柄「誘拐による報道協定」の中に身を置いたものとして、身につまされる
ものはあったが、あんなに沢山の記者が出てきて右往左往するだけではストーリーには
ならない。唯一救いだったのは、萩原健一が逮捕され、パトカーに乗せられてくるところを
取材車で止めて、ガンクビ写真を撮る所かな。あと、宅麻伸が夜逃げする小柳ルミ子と
娘の写真をスクープしながら、彼らの心情を思いデスクに出さなかったところか。
上記のことから演技が良かったのは萩原健一、小柳ルミ子、そして幼い娘を心配しつくす
素人っぽい母親を熱演した秋吉久美子、といったところか。

結局、宅麻伸と藤谷美和子の恋愛も含め、あれも言いたいこれも言いたいでパンクして
しまった。だからずるずると時間だけが130分以上もかかってしまったのだ。中身の割に。
しかし、俳優もようけ出ていたなあ。今のようにスマホやカーナビ、などがあれば事件も
だいぶ変わっていように。(それを言い出すと、過去の警察小説は読めなくなっちゃうんだ
けれどね。例えば松本清張「砂の器」なんか、スマホがあれば、とは思っちゃだめですからね)
新聞の鉛活字を使った輪転機も今や珍しい。

最後になったが主題歌「風が息をしている」(作詞:谷川俊太郎 作曲:菊池俊輔)は
大変素晴らしい歌だ。
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<ストーリー:結末まで書かれています>
豊中市の私立学園一年生の三田村英之が、下校途中に誘拐された。県警本部の発表で、
犯人が英之少年の父で小児科医の三田村昇に三千万円の身代金を要求していることが
分かった。各新聞社に“報道協定”の要請があり、子供の生命がかかっているため、各社は
受けざるを得なかった。
三田村家には遠藤警部以下六名の警察官が入り込み、昇や妻の緋沙子と共に電話を待った。
武庫川の川原に緋沙子が一人で来るようにとの電話があった。川原には英之の学帽と
ランドセルが置かれてあった。

山岳地帯を貫いて、日本海側へ向かう高速自動車道。早朝の不甲峠を一台のアウディが
通過していく。数刻後、そのアウディからサングラスの男が降り、公衆電話ボックスに
向かった。ダイヤルをまわした先は三田村家。男は今日中に金をそろえるように指示して
受話器を置いた。
この知らせに大阪読売本社は色めきたった。「協定を結んだ以上、取材・報道は
自粛するが、協定解除に向けて取材の準備はおこたりなく!」檄をとばす吉本編集局長。

同じ頃、日本海を見下す断崖の上から、犯人が布団袋に入れた子供を投げすてようとするが、
密漁者たちがいるために失敗。その足で犯人=古屋数男は老母のいる実家へ寄る。
そこへ数男の妻・芳江から電話がかかってきた。芳江は喫茶店をだましとられた数男を
助けようと造花工場で働いているのだ。気が弱いくせに見栄っばりな数男は娘の香織を
私立学園に通わせていた。その香織と英之は同じクラスで仲良しだったのだ。

実家を出た数男は再び英之を殺そうとするが、袋の中から「オシッコ!」と訴える英之に
小用をさせているうちに殺意はしぼんでいった。途中で財布を落とし、持ち金も無くなった
数男は、三田村家に電話を入れ、取り引き場所として宝塚市内の喫茶店を指示。
捜査本部はあわただしく動き、記者たちも店を張り込んだ。危険を感じた数男は店に
近づかなかった。風邪気味だった英之が悪寒を訴えた。このままでは英之が死んでしまう。

焦る数男は、最後の指示を三田村家に伝えた。箕面市のレストランだ。三田村夫婦は警察に
張り込まぬように哀願し、レストランの前で待った。しかし、数男は路上に張り込んだ刑事
たちの姿を見つけた。万事休すだ。子供が死んでしまう。もう身代金は取れない……。
翌朝、路上に停車して呆然としている数男が逮捕された。トランクの中の英之は無事だった。
(Movie Walker)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=148248#1こちらまで。

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by jazzyoba0083 | 2017-04-24 23:20 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)