カフェ・ソサエティ Café Society

●「カフェ・ソサエティ Café Society 」
2016 アメリカ Perdido Productions,Gravier Productions,FilmNation Entertainment.96min.
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:ジーニー・バーリン、スティーヴ・カレル、ジェシー・アイゼンバーグ、ブレイク・ライブリー他

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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
ウディ・アレン大好きなので、封切の日にシネコンに。GW真っ最中というのにガラガラだったなあ。
出演者にも派手さはないし、賞がらみの話題もないから、致し方ないかもな。
でも映画としては面白かった。しかし、なんだろう、いつものコテコテのアレン節じゃないので、
「え?こんな純情な恋愛ストーリーでいいの?」と、例のシニカルな「不条理とも不合理とも
非情とも毒とも」受け取れる粘っこい調子、また時として使われるサスペンスなタッチもないし、
おバカな風情もないので、ちょっとタタラを踏んでしまった。まあ、結論的には「人生、いうほど
上手くは行かない」と見せておいて、アレン流の「時代を飲み込んで(そして捨てた)恋愛観の
素敵な提示、ということなのだと受け止めた。
恋愛観、ノスタルジー、ジャズ、ファッション、これらはいつものアレン流が貫かれているので、
作品としての上質さが欠けているということはない。そしてこれもいつも通り、女優の存在は華麗に
して大きいのだ。
ユダヤ教やユダヤ人を自虐的に揶揄するのはいつも通り。それが物語の生死感の皮肉だったりもする。

時代は1930年代。「華麗なるギャツビー」のジャズエイジ、「ロアリングトゥエンティ」が29年の
世界大恐慌とともに終焉、そこからニューディールで立ち直ろうとするもののアメリカ経済はあまり
上手く行かない。
欧州ではヒトラー、日本では軍部によるファシズムが台頭し始めていた。そんな時期、トーキー時代を
迎えたハリウッドは本作にもその名が出てくるフレッド・アステア、ジュディ・ガーランドなどが活躍を
始めたころで、活況を呈していた。映画中に全面的にフィーチャーされるジャズは、スィングジャズと
言われるボールルームでのダンスのバックで演奏されるようなものが全盛を迎え、ベニー・グッドマンや
トミー・ドーシーらが人気だった。振るわぬ経済をしり目にハリウッドは華やかであったのだ。
そんな第二次世界大戦に突入するまでの幸せな時期が舞台となっている。

アレンの映画は「夢・夢想」がキーになり、独特の幻想感を醸し出すものもあるのだが、本作は
リアリズムが基本だ。そんなアレン流リアリズムの中から逆に「夢」を紡いで見せているような感じを
受けた。繰り返すがいつものアレン風毒気がほとんど感じられないので、逆に評価が自分の中では
ちょっぴり下がってしまった。じゃあ、「ギター弾きの恋」はどうなんだ?ということなんだけれども。
こんな純情なのがアレンでいいんだっけ?と¥。蘊蓄系のセリフはいつものように多々あるが。

今回、アレンは演出に徹していて、その役をジェシー・アイゼンバーグが担っている。どこかアレンを
想起させる雰囲気がある。しゃべり方も演出だろうが、早口でアレン風。風采が上がらず、女性に
モテず、屁理屈ばかりは上手いという感じもそのままだ。

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大雑把にストーリーを言っちゃうと、以下のごとし。(ネタバレですからご注意)

NYからハリウッドに出てきて凄腕映画エージェントの叔父の元で働くことになるボビー
(アイゼンバーグ)。叔父フィルはスティーヴ・カレルが演じる。ボビーはその叔父の秘書ヴェロニカ
(クリスティン・ステュワート)の美しさにやられてしまう。高嶺の花だと思いつつ、彼は積極的に
アプローチ、やがてヴォニーの心をつかむことに成功する。しかし、ヴォニーには不倫相手がいたのだ。
それが叔父フィル!ヴォニーは、フィルがボビーの叔父とは知らず身の上話をボビーにする。

離婚を約束していたフィルだが、不調に終わり、ヴォニーとは終わることに。失恋したヴォニーは
ボビーのところに。二人はやがて結婚を意識する仲となる。そして結婚してNYへ行こう、というところ
まで来た。だがだが、この期に及び、叔父フィルは離婚を成立させ、ヴォニーに再度求愛するのだった。
もともと尊敬もし愛していたフィル。でもボビーも愛している。結局、ヴォニーが選んだのはフィルで
あり、ハリウッドに残る道であった。

失意のうちにNYに帰ってきたボビー。ギャングの長兄が経営するクラブを手伝っているうちに、この
クラブ、政治家、文化人、芸能人らもたくさんやってくる有名な店となっていく。そこに客として
やってきた女性。彼女も名前はヴェロニカ。美しい!ボビーは積極的にアプローチし、もう一人の
ヴォニーの心をつかみ、結婚、子供も生まれる。そして店はどんどん栄える。
ある日、その店に
フィルと、妻となったヴォニーが客としてやってくる。ヴォニーの美しさは相変わらずであり、かつて
ハリウッドではちゃらちゃらした映画スターをバカにしていたのが、今やそんな身になってしまって
いた。今どうして自分の前に現れたのか、戸惑うボビーであったが、自分の心の奥底にヴォニーへの
愛情がしっかりと息をしているのに気付くのだった。
NYの夜景が美しいセントラルパークでキスを交わす二人。でも、それぞれの妻、夫は確かに愛して
いるのだ。が、結ばれはしなかったが、二人の一番大切な愛は確かにここにある、それは誰に対する
裏切りでもなく(背徳ということばすら消化してしまった)、と思う瞬間だったのかもしれない。

こうやって書いてくると、はやり、時代をくみ取りつつ、時代を排した普遍性を持つアレン流の恋愛観
の提示なのだな。「夢から夢へ」「現実から夢へ」「夢から現実へ」そんな恋愛におけるフェイズが
上手く多層的に示された、やはりアレンならではの恋愛映画ではある。ラストのボビーの後ろ姿が
語ること、そんなことではなかったか。

<IMDb=★6.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer: 71% Audience Score:57%>

この映画の詳細は・・・



by jazzyoba0083 | 2017-05-05 15:40 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)