グランドフィナーレ Youth

●「グランドフィナーレ Youth」
2015 イタリア・フランス・スイス・イギリス Indigo Film and more.124min.
監督・脚本:パオロ・ソレンティーノ
出演:マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、ポール・ダノ
   ジェーン・フォンダ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

この監督の作品は初めてかもしれない。非常に観念的な映画で、私の苦手とする
ジャンルである。観ながら、カンヌやベルリンで評価されそうな作品だなあ、と
思っていたら、やはりそうであった。

出ている人は円熟の役者ばかりだから玄人受けはするだろうが、日本での興業は
おぼつかなかったのではないだろうか。素直な感想を言えば、「何をいいたいのか
よく分からない」ということ。邦題もミスリードを誘う。現代の「YOUTH」(若さ)に
こそ、この映画の本質があろう。出てくる人がほとんど老人で、おそらく
過去と現在と未来に行き来する、それぞれの様々な思いが重層的に重なって表現
されているのだと思う。断片的エピソードは理解できるのだが、全体として、何を
表現したかったのか、「若さ」とは何か?ということなのか?それはちょっと違うだろう。

スイスの温泉療養施設付き豪華ホテル。セレブが集まるところだ。
コアになるエピソードをもたらすのは、クラッシック音楽の世界の巨匠ブレッド・
バリンジャー(ケイン)。彼は高名な指揮者であり作曲家。引退してここにいる。
もう一人はそろそろ映画監督業も終いにしようかと考え最後の作品を製作中に
滞在しているミック・ボイル(カイテル)の二人。二人は親友という設定。
(ブレッドの娘の旦那がミックの息子、という関係。親戚ですな)

もう人生は最終ステージ。これから新しいことはしない、と決めいているブレッドは
女王陛下が勲章を授けたいと言っている、ついてはフィリップ殿下の誕生日でもある
授賞式に、代表曲「シンプル・ソング」を指揮して欲しいと懇願してくるイギリス
政府の役人に「引退したからもうやらない」とにべもなく断る。

一方、監督のミックは、まだまだ演出に色気を出し、これまで長い間コンビを
組んできた恋人でもある大女優ブレンダ・モレル(ジェーン・フォンダ)がスイスに
到着するのを待ち、ラストシーンを仕上げようとしていた。
(ミックが今作っている映画がどう見ても傑作になるとは思えないような描かれ方)

そんな二人は温泉に入れば健康や病気の話、でも全裸で温泉に入ってくるミス・
ユニバースを見ると「神だ」とか言って、まだまだ男としての名残がある状態。

この二人の男の考え方というか、自分が理解している自分自身の立ち位置が
少しずつ変化していくところが面白い。ブレッドは、勲章を受け、BBC交響楽団を
指揮して女王夫妻の前で「シンプル・ソング」を演奏することになり、片や、ミックの
元にやっとのことでブレンダ・モレルがやってくるのだが、ブレンダは映画には出演しない、
と断言する。慌てるミックに、ブレンダは53年間の恨みつらみが爆発するのだった。

作品全体としては上記だけのことではなくもっと複雑であって、二人の老人の
家族や生い立ちが絡んでくる。そしてブレッドがなぜ指揮をしようとしたかも
ミックの存在が大きかったりするのだ。

最終局面での老人二人に起きる大変化については面白く観たが、それが「若さ」と
いうタイトルにどう結びついていくのかは、謎だった。
Life goes on.ということなのだろうかなあ。年齢に関係なく。

画がとても綺麗で、構図などに非常にコダワリが感じられる。なんでも説明してしまう
作品よりも、観ている側の想像を刺激する意味での「観念的」な描写もいいのだが、
時としてシュールに過ぎてしまうと、言いいたいことが分からりづらくなる。

そうした意味で「観念的な」本作は、見る人に人生のいろいろな側面を考えさせる
ことだろう。だめな人は途中で脱落するタイプの映画。
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<ストーリー>
アルプスの高級リゾートホテルでバカンスを送る作曲家フレッド・バリイジャー
(マイケル・ケイン)のもとに、女王陛下からの勲章の授与と出演依頼が舞い込んでくる。

フレッドの名を世界中に知らしめた不朽の名曲「シンプル・ソング」を、フィリップ殿下の
誕生日に指揮するという名誉あるオファーであったが、彼は興味すら示さない。
BBC交響楽団の演奏で偉大なソプラノ歌手スミ・ジョーが歌うと言われてもフレッドは
もう引退したからと頑なに拒むのだった……。

母国イギリスのロンドン、そしてニューヨーク、最後はヴェネチアの楽団で24年、
作曲と指揮に持てる才能の全てを注ぎ込んだフレッドは、80歳となった今ではすっかり
燃え尽きていた。ホテルの宿泊客は、今も世界中のヒーローである元サッカー選手や
かつて大ヒットしたロボット映画の役名で呼ばれることにウンザリしているハリウッド
スターのジミー・トリー(ポール・ダノ)などセレブぞろい。そんな彼らは皆世間とは
違う風変わりな事情を抱えていた。

フレッドの60年来の親友である映画監督のミック・ボイル(ハーヴェイ・カイテル)も
同じホテルに宿泊していたが、現役を続けるミックは若いスタッフたちと新作の脚本
執筆に励んでいる。そんな中、父を心配する娘のレナ(レイチェル・ワイズ)が予約した
マッサージやサウナ、健康診断を淡々とこなすフレッド。何ごとにも無気力になって
しまったフレッドの唯一の楽しみは、ミックとの昔話と悪ふざけ、そして歳を重ねたが
ために頭と体のあちこちに出て来た不具合自慢だった。

ある時、部屋へ戻ると、夫のジュリアンと旅行に出かけたはずのレナが泣きじゃくっている。
ジュリアンの父であるミックに、君の息子が私の娘を捨てたと告げるフレッド。
驚いたミックはすぐに息子を呼び出すが、彼は新しい恋人を連れて来る。フレッドは
レナを慰めようとするが、音楽が全てでママのことなど一切顧みなかったパパに夫婦の
愛情の何が分かるのかと激しく責められる。フレッドのもとに女王の特使が再び現れ、
頑として断るが必至で食い下がる特使に遂にフレッドは本当の理由を語り出す。

「シンプル・ソング」にまつわる母への想いを初めて聞いたレナは思わず涙する。
そんな折、長年タッグを組んできたブレンダ・モレル(ジェーン・フォンダ)に主演を
断られたミックの映画が製作中止に追い込まれる。ミックが選んだ結末に衝撃を受けた
フレッドは「君の音楽は驚きや新しい感動をもたらした」という友の言葉を胸に最後の
ステージに立つことを決意。だが彼はその前に会わねばならない人がいた。
そしてフレッドは10年ぶりにヴェネチアに暮らす妻を訪ねる……。(Movie Walker)

<IMDB=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer: 74%  Audience Score:68% >



by jazzyoba0083 | 2017-06-05 23:25 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)