20センチュリーウーマン 20th Century Woman

●「20センチュリーウーマン 20th Century Woman」
2016 アメリカ A24,Annapruna Pictures and more.119min.
監督・脚本:マイク・ミルズ
出演:アネット・ベニング、エル・ファニング、グレタ・カーウィグ、ルーカス・ジェイド・ズマン
   ビリー・クラダップ他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

この前に観た「グランドフィナーレ」ほどではないが、どこか観念的なニュアンスがある作品。
でも、その性質はまるで違うのだけれど。本作はマイク・ミルズが自分の母親をモデルにして
制作した、1979年を懸命に生きる女性への愛と尊敬に溢れたなかなか考えさせられる作品と
なっている。出演者が全員いいのだが、やはり大活躍のアネット・ベニングの円熟の演技が
見どころである。1979年といえば作品中にも出てくるようにジミー・カーター大統領時代で、
イラン大使館人質事件、第二次オイルショック、朴正煕暗殺、など国際的には緊張していた
一方、本作でも語られるように、セックスに対するタブーが外れ、性に関する書籍が次々と
発行され、男女の役割に対する議論も多く行なわれるようになっていた。

ただでさえ性に目覚める15歳の男の子を女手一つで育てるドロシア(ベニング)。
家をいろんな人に貸していて、奇妙な共同生活が繰り広げられている。
離婚を経験し、多感な男の子を育てているドロシア、子宮頸がんを患っている
写真家アビー、夜な夜な息子ジェイミーと一緒に寝に来る、友人以上恋人未満
(体には触らせない)幼馴染のジュリー、ドロシアに惹かれているヒッピー大工の
ウイリアムズとそれれぞれ難しい人生を生きている人たちと関わりながら、自分も
大変、周りも大変なんだけど、捨てておけないドロシアの苦悩が描かれていく。

そもそも多感期に入った息子の教育を若い同居人アビーとジュリーにお願いしたのが
問題の発端。女性二人はいい子なのだが、ドロシアが育った頃とは考え方が全然違い、
あけすけな性の世界に連れて行ってしまう。息子ジェイミーも素直で良い子なのだが
性に関してはやはり男の子で、若い女性二人に感化されていく。見ていてハラハラ
し通しのドロシアだった。

自分の老いも意識しながら、自分だって恋もしたいと思いながら、回りの事に
精一杯頑張ってしまうドロシアだった。「子どもを育てるって大変よね」とか
言われて。作中にカーター大統領のテレビ演説をみんなで見るシーンがあるのだが、
まさにカーターが指摘しているのは社会秩序の崩壊。ドロシアは共感してしまう
のだった。

彼女はタバコの吸い過ぎで、1999年に肺がんで亡くなるのだが、再婚も果たし、
それぞれ関係していた人たち(ひとつ屋根の下にいたひとたち)もそれぞれの
幸せな人生を獲得したと説明される。再婚相手がドロシアの誕生日には必ず
プレゼントしたという複葉機での遊覧飛行のシーン。BGMが「As Time Goes By」
で、眩しく美しい青空の中を満面の笑顔で飛んでいるドロシアに決定的な
カタルシスを感じたのだった。音楽といえば、基本的には1979年当時に流行っていた
ロックやパンクが使われるのだが、ドロシアが聞く時はいつもベニー・グッドマンら
の活躍していた1930~40年代のスウィング・ジャズだったりするのも、さりげない
主人公の心情を表していて素敵だった。

本作、とにかくアネット・ベニングのシワも隠さない薄いメイクとボサボサ頭で母親と
女性を演じている姿が圧倒的である。
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<ストーリー>
「サムサッカー」「人生はビギナーズ」のマイク・ミルズ監督が自身の母親をテーマに
描いた半自伝的ドラマ。多感な思春期の少年が、自由奔放なシングルマザーと2人の
個性的な女性たちに囲まれて過ごしたひと夏の成長の物語を、ユーモアを織り交ぜ
瑞々しいタッチで綴る。
主演は母親役にアネット・ベニング、その息子をルーカス・ジェイド・ズマン。
共演にグレタ・ガーウィグ、エル・ファニング、ビリー・クラダップ。

 1979年、サンタバーバラ。シングルマザーのドロシアと母ひとり子ひとりの生活を
送る15歳の少年ジェイミー。家には他に、子宮頸がんを患いニューヨークから地元に
戻ってきたパンクな写真家アビーと元ヒッピーの便利屋ウィリアムが間借りしていた。
さらにジェイミーの2つ上の幼なじみジュリーも夜な夜な彼の部屋にやってきては一緒の
ベッドで眠っていく。けれども決して体には触らせてくれない。

そんな中、反抗期を迎えた息子のことがまるで理解できず、お手上げ状態になってしまった
ドロシア。そこで彼女は、アビーとジュリーに息子の教育係になってほしいと相談する。
こうしてジェイミーは、強烈な個性を持つ3人の女性たちと15歳の特別な夏を過ごすことに
なるのだったが…。(allcinema)

<IMDb=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:89% Audience Score:74%>



by jazzyoba0083 | 2017-06-06 13:50 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)