ハクソー・リッジ Hacksaw Ridge

●「ハクソー・リッジ Hacksaw Ridge」
2016 オーストラリア・アメリカ  Cross Creek Pictures and more.139min.
監督:メル・ギブソン
出演:アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、ヴィンス・ヴォーン
   ルーク・ブレイシー、テリーサ・パーマー他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

沖縄戦をまともに扱ったハリウッド映画は意外に少ないのではないか。
一方的な闘い過ぎて、アメリカ軍の物量に任せた攻撃が酷いと見られて
しまうからだろうか。テーマになりづらいのだろう。今でも時々再放送が
WOWOWで放映されているHBO制作テレビドラマ、スピルバーグ総指揮の
「ザ・パシフィック」が戦闘のテイストとしては本作に近いかもしれない。

というわけで大手配給会社の腰が引ける中、買い付けたKino Filmに感謝
しなくてはならない。史実であるし、映画の最後には本人だけではなく
戦闘に参加した米兵の証言も付くので、さらに日本側での検証も行われるから
デタラメも描けない。メル・ギブソンとしてはそのあたりは悩んだのではないか。

しかし、本作の主題は、沖縄戦の戦闘が残虐だったとか、そうでなかったとか
言う問題でなく、あくまでも一人の「勇気ある武器を持たない兵士」の話なのだ。
確かに私達日本人側から見れば、圧倒的不利な火力の状態の中で、サブマシンガンで
なぎ倒される突撃日本兵を見ているのは愉快ではない。が、現実はそれに近いもの
であったのだろう。ギブソンは、敵兵たる日本兵のしゃべりを入れていない。
私が聞き取れたのはひとこと「天皇陛下」という単語のみ。日の丸も出てこない。
バンザイも聞こえない。ジャップという単語は米兵の間では交わされるが、ことさら
日本軍を卑しめるようなセリフはない。戦闘はむしろ、ギリギリの人間同士の
殺し合いを描いていて、そこに理性も正義もない状況が描かれていた。それは
ギブソン監督が主題をそらさないように仕組んだことだろうし、日本軍憎し、の
映画ではないからそうすることが必要だったのだろう。

さて、前置きが長くなったが、本作、ラストシーンあたりでは、主人公のあまりの
純粋な博愛精神に涙が出てきた。ここまでする人間がいるのか、と。

ただし、よく考えてみると、アメリカという国は「良心的兵役拒否」が法的に
守られていて、「選抜徴兵制」という日本とは異なった兵役制度が敷かれ、
さらに国の基本としてキリスト教という強いバックボーンがあったことを理解
しておく必要があると思う。1945年(終戦の年)に「志願する」ということが
日本人として不思議に感じるだろう。

もし、本作の主人公のような人物が日本にいた場合、同じように立ち回れるのか
といえば、絶対にありえない。まず特高に捕まり拷問の上、投獄されるのが関の山。
たとえ軍隊に入ったとしても、「銃をもちません」なんてことを言おうものなら
「なにい!きさまあ!軍隊をなめとるのかああ!」とボコボコにされるのは必定。

衛生兵として「救うこと」が僕の戦争、という理屈が認められるのはアメリカだから。
それを割り引いても、志願入隊し、信念を曲げず、ついにはハクソーリッジの闘いで
1日に敵味方合わせて75人ものけが人を救いだす、ということを成し遂げた彼の
強さには参った。ああいう人物がいた、ということを知っただけでも観た甲斐が
あった。主人公が仲間に受け入れられていく過程は、ちょっと周りがいい人たちに
描かれ過ぎ(恋人のドロシーを含め)のウラミはあるが、当時のリアルな仲間たちも、
彼ほどの勇気は持てないと彼を受け入れたからにすぎない。主人公も「ボクは守る。
君らは殺せ」との立場で決して、仲間たちが敵兵を殺すことを邪魔しようとは思わ
ない。その立ち位置が受け入れやすかったという面もあろう。

一部では「やりすぎ」の声もある戦闘シーン。だが、目をそむけたくなるほどの
状況が戦争の本質ということを思うと、主人公のやり遂げた行動を一層際立たせる
ためにも、リアルであって良かったと思う。戦場とは、隣に「死」が常にいると
いうことをこれでもか、という具合に見せる。

主人公デズモンド・ドスを演じたアンドリュー・ガーフィールドは、「沈黙-
サイレンス-」に次ぐキリスト教的立場の役柄だったが、オスカー主演男優賞に
ノミネートされたように、主題を良く表現出来た演技であった。その他は
ことさらメジャー級の配役をせず、物語を浮き上がらせることが出来ていたので
はないか。
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<ストーリー>

衛生兵として一晩で75名の日米の負傷兵を救い、武器を持たない兵士として
アメリカ史上初の名誉勲章を受けたデズモンド・ドス。アンドリュー・
ガーフィールドがドスを演じ、メル・ギブソンがその半生を映画化した人間
ドラマ。沖縄の激戦地“ハクソー・リッジ”でドスが取った勇気ある行動が
臨場感あふれる戦闘シーンとともに描かれる。

ヴァージニア州の田舎町で育ったデズモンド・ドス(アンドリュー・
ガーフィールド)の父トム(ヒューゴ・ウィーヴィング)は第1次世界大戦
出征時に心に傷を負い、酒におぼれて母バーサ(レイチェル・グリフィス)
との喧嘩が絶えなかった。
そんな両親を見て育ち「汝、殺すことなかれ」との教えを大切にしてきた
デズモンドは、第2次大戦が激化する中、衛生兵であれば自分も国に尽くせると、
父の反対や恋人ドロシー(テリーサ・パーマー)の涙を押し切り陸軍に志願
する。

グローヴァー大尉(サム・ワーシントン)の部隊に配属され、上官のハウエル
軍曹(ヴィンス・ヴォーン)から厳しい訓練を受けるデズモンド。生涯武器には
触らないと固く心に誓っている彼は、上官や仲間の兵士たちから責められても
頑なに銃をとらなかった。
ついに命令拒否として軍法会議にかけられても貫き通した彼の主張は、思わぬ
助け舟により認められる。1945年5月、グローヴァー大尉に率いられ、
第77師団のデズモンドとスミティ(ルーク・ブレイシー)ら兵士たちは沖縄の
ハクソー・リッジに到着。そこは150mの断崖がそびえ立つ激戦地だった。
倒れていく兵士たちに応急処置を施し、肩に担いで降り注ぐ銃弾の中をひるむ
ことなく走り抜けるデズモンドの姿に、感嘆の目が向けられるように。
しかし丸腰の彼に、さらなる過酷な戦いが待ち受けていた。(Movie Walker)

<IMDB=★8.2>
<Rottten Tomatoes=Tomatometer:87% Audience Score:92% >


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by jazzyoba0083 | 2017-06-25 12:15 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)