血と砂

●「血と砂」
1965 日本 東宝映画 132分
監督・脚本:岡本喜八 音楽:佐藤勝
出演:三船敏郎、仲代達矢、伊藤雄之助 佐藤允、団令子、伊吹徹、名古屋章、長谷川弘ほか
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
岡本喜八の戦争映画3本目の鑑賞となる。だいたい彼の戦争映画の作風と、作品に通底する
感性みたいなものが、ほの見えてきたようか感じである。タイトルから予想も出来ない内容で、
音大生で編成された軍楽隊の戦争参加を通して、岡本一流の戦争感(虚無感、滑稽感、バカバカしさ、
非痛感など)が上手く表現することに成功している。そしてエンディングの衝撃。作劇全体が
岡本イズムに溢れている。「人間愛と戦争のバカバカしさ」である。

現実、軍楽隊が「聖者の行進」を演じながら満州を戦うなんてことは無いのだが、
登場人物のキャラクターも含め、戦争をアイロニカルに表現する岡本の独特のタッチがある。
結構長い作品だが、これも岡本の強さであるカット、編集、そして佐藤の音楽と、飽きることはない。

三船、仲代という当時の東宝を代表する男優を据え、骨格のしっかりした映画となっている。
「古参兵が二等兵の頬をスリッパで理不尽に殴り倒す」という分かりやすい表現を使わず、戦争の
理不尽さ、アホさ加減を演出させると、岡本の右に出るものはないのだと思う。

三船、仲代ともにいい。それに紅一点団令子の物語上の存在も光る。音楽隊の少年たちの悲哀が、滑稽な
だけに余計にせり上がって見えてくる。岡本演出の優れたところだろう。
クセのある映画なので、見る人を選ぶかもしれない。でも、日本映画にオリジナルの存在感を
示したエバーグリーンの戦争映画の一つであることは確かだ。WOWOWの放映に感謝したい。
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<ストーリー>
昭和二十年の北支戦線。陽家宅の独歩大隊に、小杉曹長と軍楽隊の少年十三人、それに小杉にほれている
慰安婦お春がやってきた。小杉は朔県の師団指令部で少年軍楽隊を最前線に送るのを反対して、転属を
命じられたのだ。独歩大隊には、小杉の弟小原見習士官がいたが、小杉のつく直前に銃殺されていた。

通称ヤキバ砦の守備隊を指揮していた小原は、八路軍の猛攻にあい、彼を除いた全員が戦死し、連絡に
戻った小原は、敵前逃亡の罪で銃殺されたのだ。怒った小杉は隊長を殴りとばし、根津憲兵曹長に逮捕
されてしまった。営倉には、戦うことがいやで、三年も入っているという志賀一等兵や見習士官殺しの
炊事係犬山一等兵などがいた。そのころ、少年兵たちは、楽器をとりあげられ、一般兵として毎日軍歌を
歌わせられていた。

一方お春は、小杉の身を案じて、寝物語りに隊長に泣きこんで、小杉の命乞いをしていた。そのかい
あってか、数日後小杉に出動命令が下った。少年兵を指揮してヤキバ砦を奪い返せというのだ。

それからというもの、小杉の指揮のもとに、少年兵たちは猛烈な戦闘訓練に明けくれた。そして数日後、
お春に送られて出発した小杉隊は、熾烈な戦闘の末、見事ヤキバ砦をとり返した。ところが、
それから数日後、日本軍のトラックに乗った敵のゲリラ隊のために、砦は、また多くの犠牲をだしてしまった。
小杉は、少年兵を元気づけようと、お春に少年たちの筆下しをたのんだ。これに感激した少年兵たちは
今度は、敵のゲリラ隊に勇敢に立ちむかった。
しかし敵の潮のような人海戦術にはいかんともしがたく小杉をはじめとするヤキバ砦の隊員は佐久間大尉の
指揮する援軍をまたずに、全員うち死にした。日本軍の中で倒れた敵の少年ゲリラの手には、終戦を告げる
伝単がしっかりとにぎられていた。時にして、八月十五日の朝のことであった。(Movie Walker)




by jazzyoba0083 | 2017-08-23 23:20 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)