ギフテッド/Gifted

●「ギフテッド/Gifted」
2017 アメリカ Fox Searchlight Pictures and more. 101min.
監督:マーク・ウェブ
出演:クリス・エヴァンス、マッケナ・グレイス、リンゼイ・ダンカン、ジェニー・スレイト、
   オクタヴィア・スペンサー他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想:重要な部分が個人的忘備録のためネタバレしています>
面白かった。よく出来た物語だと思う。登場人物の意外な素性が次第に明らかになっていくところは
正体が正体だけに、あざとい感じもしないではないが、話の中心となる数学の天才、メアリーを演じた子役、
マッケナ・グレイスのナチュラルな演技に助けられ、上手くまとまった。
監督マーク・ウェブの演出が光るところだ。このところ数学の天才を描いた映画を続けて3本見る結果となった。
「ドリーム」「奇蹟がくれた数式」そして本作と。それぞれまったく異なったシチュエーションだが、本作は
7歳にして高等数学を簡単に解いていく天才が主人公。この少女の複雑な背景の中で、少女の才能と幸せを巡り
大人がもめる。ところどころに置かれる心温まるキャスティングやシークエンス。例えば隣の黒人女性
(オクタヴィア・スペンサー)の存在、メアリーの担任ボニーの存在、そしてフランクがメアリーを産院に連れて
いくところなどに、この物語の温かさを高める隠し味が忍ばされている。脚本もいいのだろう。
キャスティングはメアリーを演じた歯無しのマッケナ・グレイスを始め、全員、いい。

簡単に言ってしまえば、才能を伸ばしてあげる環境がいいのか、普通の子供達と普通の生活をしていくのが
幸せなのか、ということ。
ただでさえ母親を自殺、という過酷な状況で亡くした幼い子が、母の弟のもとで暮らしていたのだが、
少女メアリーに数学のずば抜けた才能があることが分かり、まず学校が、転校を勧める。
次に少女にとってはおばあちゃん、姉弟にとっては母イブリンが登場。メアリーの才能を埋もれたままで
置くのは社会の損失、とばかりに自分の近くに置いて育てようと、今の環境が如何に劣悪であり、メアリーの
才能を花開かせてあげることこを彼女にとっての幸せと説く。(ココらへんのおばあちゃんの供述にはムリを
感じるなあ)弟は姉の遺言として普通のこどもとして育って欲しいということを守っていたのだ。(この裏には
もうひとつの母娘の相克があるのだが)

結局、裁判所の判断は、メアリーを養子に出し伯父さんフランクとも会えるという条件でフランクはメアリーと
離れることになる。裁判長も難しい判断だっただろうと思う。もうすこしメアリーが大きければ別の道もあった
のだろうけど7歳というのが微妙だ。観ている方も、才能は伸ばしてあげたいけど、子供らしさがなくなるような
生活を強いるのは本当にメアリーのためなのか?と共に悩むことになる。

フランクおじさんと暮らしていた時、片目の猫フレッドが家族のような存在だったのだが、イブリンは猫
アレルギー。ある日メアリーの小学校の担任でありフランクの恋人になっていくボニーが、メアリーとともに
養父母のもとにいったフレッドが不要ペットとして引き取り手を募集されているところを見つけてしまった。
すぐにフランクに連絡。殺処分寸前でフレッドを救い、そのままメアリーの元へ。
するとそこには養父母になつかないメアリーがイブリンと家庭教師に囲まれて数学をやっている光景が。

メアリーは一端自分を「捨てた」フランクおじさんを許さなかったが、メアリーを抱きしめて、自分のやり方を
謝るフランクを許し、猫のフレッドと共にフランクの元へと戻った。

メアリーの動きとしてはそいういうことなのだが、実はメアリーの母は高名な数学者で、(このことは作品の
早い段階で分かる)誰も解けなかった数式を解けるのでは、という学会の見方であった。しかし、幼い頃から
母イブリンの英才教育に心を潰され、結局自ら命を絶つことなったのだ。それは母親に対する復讐でもあった。
幼いメアリーを弟に任せて自殺するとは、メアリーの母はどのくらい母を憎んでいたことか。それにまったく
気付かず、孫に同じ目に合わそうとしていた訳だ。弟フランクがメアリーを母の元に行かせたくないのが分かる
というものだ。フランクは裁判の過程で明らかにされるのだが、今はボートの修理技師をしているが実は元ボストン
大学哲学科の准教授だった。

フランクはメアリーを自分の元に戻す時、一つの論文を母に放り投げた。
それは姉があの噂の数式を証明した論文だったのだ。「姉さんは、これを死後に公表してと僕に頼んだんだ」
イブリン「自殺の後で?」 フランク「違う。自分の、じゃない」。驚愕の表情が母の顔に張り付く。
姉は、母の死後これを発表するように弟フランクに言い残して命を絶ったのだった。なんという凄まじい母子の
関係。

論文を見て驚愕したイブリンはマサチューセッツ工科大学(だっったかな)に電話する。イブリンは電話口で
名乗ったは自分が数学科の博士である、と。 最後の最後でまた考えさせられちゃうシークエンスだ。
フランクは数学の天才の母と姉の間にあって哲学という真逆の分野に進んだのだ。その彼が姉の子を巡り母と
争う。なるほど、メアリーだけの話だけではないのね、この映画。
ラスト、大学でも数学の勉強をするようになったメアリーの講義の中に、先日観た「奇蹟がくれた数式」の
主人公、インド人の天才数学者ラマヌジャンの名前が出てきたのにはびっくりするやら納得するやら。

心温まるほっこり系の映画なのだが裏には非常に凝った親子の関係がが忍ばされている。
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<ストーリー>
『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督による家族ドラマ。数学の天才である小学生の姪を“普通に育てたい”
という亡き姉の遺志に従って守ろうとする男を『キャプテン・アメリカ』のクリス・エヴァンスが好演。
数学の天才メアリーをそのファッションセンスがSNSなどで話題の子役マッケナ・グレイスがキュートに演じる。

フロリダの小さな町。独身男のフランク(クリス・エヴァンス)は、生意気ざかりの7歳の姪メアリー
(マッケナ・グレイス)、片目の猫フレッドと一緒にささやかな生活を送っていた。その小さな幸せは、
メアリーの天才的な才能が明らかになったことから揺らぎ始める。メアリーの特別扱いを頑なに拒む
フランクの前に母エブリン(リンゼイ・ダンカン)が現れ、孫のメアリーに英才教育を施すため、フランクから
引き離そうとする。
だが、フランクには亡き姉から託されたある秘密があった。メアリーの幸せは、一体どこにあるのか……?
そして、フランクとメアリーはこのまま離れ離れになってしまうのか……?(Movie Walker)

<IMDb=★7.6>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:73% Audience Score:85%>




by jazzyoba0083 | 2017-11-29 12:05 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)