バトル・オブ・セクシーズ Battle of the Sexes

●「バトル・オブ・セクシーズ Battle of the Sexes (原題)」
2017 アメリカ Fox Searchlight Pictures,TSG Entertainment and more. 121min.
監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス
出演:エマ・ストーン、スティーヴ・カレル、アンドレア・ライズボロー、ナタリー・モラレス、
   サラ・シルバーマン、ビル・プルマン、アラン・カミング、エリザベス・シュー他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
ホノルルからの帰国便二本目。まだ日本では公開されていない作品。個人的に大学生のころなので
時代としてはズバリ。テニスはやっていないけど、キング夫人やマーガレット・コート、クリス・エバート
などはニュースなどで見聞きしていて名前とその活躍の度合いは知っていた。が、こんな「事件」があったとは。

映画の主要なテーマは性間差別の話しであるが、スティーヴ・カレル演じるボビー・リグスのキャラクターも
あってコメディっぽい感じもあり、楽しませてもらった。アメリカやテニス界では有名な話かもしれないが、
日本ではあまり知られることのない「事件」ではなかったか。衣装やヘアスタイル、小道具、音楽を始めとし
1970年初頭の時代の雰囲気と実際をよく描いていたと思う。
作品はテンポよく飄々と描いていくが、実際にこの映画が描いた事柄は、その後のテニス界や性別間差別に
対する人々の考え方に大きな影響を与えたわけで、楽しいうちに見終わることは出来るが、その主張しようと
していることは大きい。
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キング夫人はテニスの試合での賞金が男子と比べ八分の一しかないことに抗議し、自らがWTAという女子テニス
協会とツアーを立ち上げ、金銭的にも苦労しつつも、女権拡張運動家としてもその成果をあげていくのだが、
ラリー・キングという夫を持つ身でありながら同性愛に惹かれていく心の悩みも抱えていた。
そうした折に、男子シニアツアーのボビー・リグス(彼もウィンブルドンで何度も優勝しテニスの殿堂入りを
している往年の名選手だがこちらもシニアの賞金の少なさを嘆きかつ彼自身ギャンブル依存症でもあった)から
男女間の試合をして、男女どちらが強いかやってみようではないか、と声を掛けられた。その頃、キング夫人は
すでに女子テニス界のトップにいたが、「それは試合ではなくショーよ。勝てばいいけど負けたら、やはり
女は男に勝てないと決めつけられて危険だわ」と申し出をその場で断る。

ボビーはその後、ツアーで一位になったコート夫人に話を持ちかけ、実現した試合でコート夫人はストレートで
負けてしまう。案の定、男性優位主義者や当時の全米テニス協会の男性陣を喜ばせる結果に終わってしまった。
ボビーはその場で、キング夫人を指名して、試合を要望した。
そう言われると勝ち気のキング夫人は黙っていられない。こうして1973年9月20日、テキサス州ヒューストンの
アストロドームにおいて、5セットマッチが行われたのだ。この試合はABCテレビを通じて全世界に生放送された。
55歳のボビーであったが、コート夫人に楽勝したこともあり、トレーニングもせずビタミン剤を飲むだけで
スポンサーから多額の金額を貰って試合に臨んだ。一方のキング夫人は徹底的に練習し、コートにたった。
3万人とテレビの向こうでたくさんの人々が見つめられ試合が始まったが、結果は3-0のストレートでキング夫人が
勝利した。29歳のキング夫人と55歳のボビーであったが、この結果が与えたインパクトは大きかった。
この試合に名づけられたのが「The Battle of the Sexes(性別間の戦い)」なのである。

この大一番を中心に据えて物語が構成されるのだが、キング夫人ら独立ツアーのメンバーが通っていた美容室の
美容師マリリンと仲良くなり、もともと持っていたレズビアンとしての悦びに火が付いてしまった。
優しく見つめるラリー・キングではあったが、そんな夫に対しても複雑な想いを持ちつつ、ツアーをこなして行く。
ボビーもまた妻との相克があったのだった。世紀の大一番で対決することになるキング夫人とボビーの愛情
物語を横軸にして、ラストにキング夫人の勝利とレズビアンとして生きる覚悟を決めるまでが一気に描かれる。
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とにかくエマ・ストーンとスティーヴ・カレルが本人にそっくりであることはもちろんだが、この二人が
吹き替えしで臨んだテニスの試合映像は、「役者というものはやれと言われればなんでもやるんだなあ」と
思いつつ、その仕上がりが半端ないので驚く。もちろんこの両者の演技もいい感じだ。ボビーのキャラに
引きずれられて、若干仕上がりが軽めになってしまったのは思い問題を軽いタッチでと狙ったのか、結果的に
そうなってしまったのか。
どこかにもう少し重さを感じても良いんじゃないか、と思うのは贅沢か?
またキング夫人らの独立ツアーのメンバーの衣装デザイナー、テッドを演じたアラン・カミングが、同じ
同性愛者として見せる気遣いが上手く演じられていて、いい存在感だった。
映画の上のことだけど、自分の妻がレズビアンであることに気づき、それを理解しながら大一番を応援していた
ラリー・キングはいいやつだなあ。(あとで離婚しちゃうけど、キング夫人はずっとキングという名前が
ついてまわるものね)キング夫人は現在74歳で健在である。(ボビーはだいぶ前に亡くなっているが)

日本での劇場公開、あるのだろうか?

<IMDb=★6.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:86% Audience Score:75%>


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by jazzyoba0083 | 2018-01-23 12:30 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)